聖女への供物

たなまき

文字の大きさ
4 / 7

4

しおりを挟む
「初めまして。ローズマリー・マーカムと申します。聖女に選ばれましたこと、とても光栄に存じます。これからよろしくお願いいたします」

 そう言ってローズマリーはカーテシーをする。パトリシアに劣らない優雅な姿だった。輝くような金髪にエメラルドの瞳の美しい娘だ。

「教会へようこそ。新たな聖女様を歓迎しますぞ。私は聖女付きの司教ドミニクです。これから四年間、聖女様にお仕えします」

「司教様、どうぞよろしくお願いいたします」

 ローズマリーが微笑むと優し気な雰囲気が漂う。

 ――これはかな?

 私はすこしほっとして微笑んで言った。

「聖女様はマーカム伯爵家のご出身なのですな。伯爵領は肥沃な土地が広がっていると聞きます」

「ええ。父は王都の食糧庫を自負しておりますわ」

 マーカム伯爵領は王国の最南端に位置する、小麦の国内最大の生産地である。北部に位置する王都からずいぶん遠いその辺境の地でローズマリーは生まれ育ったと聞いた。先ほどのカーテシーやふるまいを見ると、高度な教育を受けたように見受けられる。優秀な家庭教師を雇ったのだろうか。

「聖女様、こちらはアンナ殿。これから一番近くで聖女様にお仕えします」

 私はそばで控えていたアンナを聖女様に紹介する。アンナはその場で礼をしてローズマリーにあいさつした。

「アンナと申します。聖女様にお仕えできること、身に余る光栄でございます」

「よろしくね、アンナ」

「アンナ殿は代々の聖女様にお仕えしてきた侍女ですから、なんでも知っています。聖女様も頼りになさるといいですぞ」

「そういたしますわ」


 こうして聖女ローズマリーとの初顔合わせはつつがなく終わった。ずっと私の背後に控えていた助手に尋ねる。

「アラン、新しい聖女に会った感想は?」

「すごく優しそうできれいな方ですね! 自分ファンになってしまいそうです」

 ひそかに興奮していたらしいアランは勢いよく言った。瞳を輝かせるアランに少々あきれてしまう。

「お前はパトリシア様のファンだったんじゃないのか?」

「もちろんです! でも憧れの人は何人いてもいいですからね」

 現金なやつだなと思い、苦笑して言った。

「これから四年間、ずっと憧れの存在でいてくれるのを願おう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

使い捨て聖女の反乱

あんど もあ
ファンタジー
聖女のアネットは、王子の婚約者となり、瘴気の浄化に忙しい日々だ。 やっと浄化を終えると、案の定アネットは聖女の地位をはく奪されて王都から出ていくよう命じられるが…。 ※タイトルが大げさですがコメディです。

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井ゆの花
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...