聖女への供物

たなまき

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 聖女の仕事はまだ終わりではない。聖騎士に囲まれながらローズマリーとともに、施設の外へ出ると、鼓膜が震えるほどの大歓声があがった。

「聖女ローズマリー様だ!」

「聖女様が出てきたぞ!」

「ほんものだ! こんなに近くで見られるなんて今日はついてる」

「あんなに綺麗な人、はじめて見た」

 新しい聖女をひと目見ようと駆けつけた人々がうれしそうに声をあげている。すでに教会の者たちによって規制線が張られているので、私たちは人々に揉まれることなく、優雅に歩むことができた。ローズマリーは民衆にむかって手を振る。これぞ聖女の微笑み、と言えるあたたかで神々しい笑みだった。

 ――すでに聖女としてのふるまいが板についているな。

 関心してローズマリーの様子を観察しながら歩いていると、今日のために設置された演台に到着した。私がローズマリーに拡声器を手渡すと、聖騎士にエスコートされ、彼女は台に登った。まわりには規制線が張られ、演台を聖騎士が囲む。

 ローズマリーが話しはじめた。凛とした表情で訴えかけるような眼差しをしている。

「皆様、本日はお集りいただき、ありがとうございます。わたくしは今しがた、家を失い行き場のない人々にお会いしました。彼らは困り果て、この施設にたどり着きました。誰もが豊かに平穏に暮らしていけるように恵をもたらすのが聖女の役目です。ですが、わたくしひとりでできることは限られております。
どうか皆様のお力を貸していただけないでしょうか。ともにこの王国をより豊かにしていきましょう」

 拍手と歓声があがると、ローズマリーはカーテシーでこたえた。熱狂的な空気のなか、大人数の教会の者たちが寄付を募る籠を持ってまわる。皆こころよく籠のなかに金を投じていく。やはり聖女が変わると、民衆も新鮮な気持ちになって財布の紐がゆるむようだ。

 ――今回の訪問も大成功だな。寄付金の集計結果が楽しみだ。

 馬車で教会へ戻り、聖女の塔にローズマリーを送りがてら話しかけた。

「聖女様、もうすっかり慣れたようですな。本日のふるまいもお見事でした」

「ありがとうございます。司祭様のご指導のおかげですわ」

 謙虚な返答にも好感がもてる。

「パトリシア様の次の聖女ですからな。周囲の目も自然と厳しくなりがちでしょうから心配だったのですが、取り越し苦労というやつでしたな。はっはっはっ」

「ふふっ、ご心配無用ですわ。でも、お心遣いありがとうございます」

 何とも頼もしい気持ちになる。ローズマリーを部屋へ送り届けアンナに引き継ぐと、自室へ戻った。
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