聖女への供物

たなまき

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 聖女の仕事は親善活動が主である。基本的には教会が定めたスケジュールに従って、福祉施設や孤児院、病院等を訪問する。聖女の訪問先には、本物の聖女を一目見たいと望む民衆が詰めかける。なかには聖女の行き先には必ず駆けつけるような熱狂的なファンもいる。もちろん教会側で厳重な警備をおこなうので、場が混乱することはまれだ。

 聖女が訪れたことで訪問先には注目が集まるし、聖女みずから困っている人々への献身と寄付の呼びかけをおこなう。聖女の美しさと優しさに心打たれた民衆の協力により、訪問先は困窮をまぬがれるのだった。このように、聖女は王国の福祉システムに欠かせない存在となっている。

 先代聖女パトリシアは、公爵令嬢という生まれによるものか、立場によって果たすべき責任と義務に深く自覚的だった。自費で国内すべての新聞を取り寄せ、毎日熟読していた。彼女は教会が設定した訪問先の他にも、みずから調べて訪問が必要だと考えた地域や施設を教会側に提示した。教会側を説得して、どんな僻地でも長旅を苦にすることなく出かけていった。聖女に助けを求めてやってくる人々がいると、対面して話を聞いた。護衛がいるとはいえ危険な行為であるが、彼女はおそれなかった。パトリシアは十五歳で聖女となったが、最初の一年目から当たり前のようにこれらの行動を取っていた。

 ――今後パトリシア様を超える聖女はもう出ないだろう。規格外の聖女だった。ローズマリー様をパトリシア様と比較して見ないようにしないとな。

 聖女になって何度目かの親善訪問中のローズマリーを見る。美しい笑顔を浮かべて、家がなく教会が運営する施設で寝泊まりしている人々と握手している。その際に一言言葉をかけるのも忘れていない。何も問題はない。聖女になってから講義した内容を過不足なくこなしている。

 ひと通り聖女との交流が終わると、私は拡声器で施設内の人々にむかって告げた。

「聖女様よりあなた方に食料と衣服のお恵みがある。後ほど支給されるだろう。楽しみに待たれよ」

 施設の広間に歓声があがった。皆、ローズマリーを見て、ある者は手を組んで祈り、またある者は涙をこぼしながら感謝している。ローズマリーはその光景を見て、完璧な笑顔を浮かべていた。
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