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12. 倍にして返す
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逮捕状を突きつけられ、叔父夫婦は愕然と膝をついた。
三年前の事ならば、まだ追跡の余地があった。
あの頃の自分の家の使用人たちならアウロアも覚えている。
また、叔父夫婦が連れていた使用人たちも記憶していたので、捜査は進み、真相に至った。
フォンはその執念に頬を引き攣らせていたが、危険分子に目を光らせるのは当然だとアウロアは切って捨てた。
叔父夫婦は馬車に細工し、両親とアウロアを亡き者にするつもりだった。
本来ならば、往路で馬車は壊れる予定だったのだとか。
ただ、杜撰な計画というか、素人仕事だったというべきか、馬車は復路で壊れてしまった。
理由は爵位継承の阻止。
アウロアが娘と婚姻しないのなら、死んで貰い、自分たちがそこに居座る必要があった。
何故か
父が見限ったからだ。
城の金に手を出し、仕事を罷免となった。
家名を汚し、泥を塗った。
本来ならアウロアに告げるべきだったが、幸せそうな息子につい絆され、婚姻後に話そうと隙を作った為、殺された。
アウロアは唇を噛み締めた。
注意していれば気づけた事だった。
そんな事情があるなら、無理に叔父夫婦を結婚式に呼ぶ必要など無かったのだ。
それなのに最後の父の温情を彼らは裏切りで応えた。
ならばアウロアも容赦などしない。
証拠を徹底的に探し出し、証人たちを問いただし、宰相の前に並べて訴えた。
自分の両親は叔父に殺されたのだと。
人死となれば、軍の正式な取り調べが入る。
宰相は慎重に証拠を検分し、軍に捜査を命じた。
叔父は登城禁止の命を受けていた。
働き口が無かったから、娘を伯爵家に嫁がせて、そこにぶら下がろうとしていたのだ。
軍に引っ立てられていく両親を見て、ファビーラは遠慮なく軍人に噛み付いた。
けれどそれを見た叔父夫婦は目の色を変え、娘を叱り飛ばした。
「この……馬鹿娘! 元はと言えばお前が離縁などされるから! お前たちが散財して、家のお金じゃ足りなくなったから……! お前たちのせいだ! 全てお前たちの!!」
軍人に捕らえられていたファビーラは、その言葉を聞いて目を丸くしていた。
「お、お父様?」
「何がお父様だ! お前は私を父親なんかじゃなく、自分に都合の良い金蔓程度にしか考えてなかっただろう! お前は、お前たちは褒めそやさなければ、もっといい物をと強請り、いくらでも果てもなく……わ、私は、兄まで手に掛けて……」
項垂れる叔父にアウロアは冷たい目を向けた。
「何故被害者ぶってるのか知りませんが、両親の殺害は紛れもなくあなた方の犯行です。金を使い込んだのも、両親を殺す為動いたのも、あなたの意思無くしては全う出来なかった」
「し、仕方が無かったんだ! 家族に頼られ……私には他に道は……」
「その事こそ父に相談すべきでしたね、ファビーラとの縁談では無く。これは間違いなくあなたが選びとってきた結果ですよ」
ばっさりと切り捨てるアウロアに叔父は奥歯を噛み締めて呻いた。
「殺して……おけば……やはり殺しておくべきだった! そうすれば私が伯爵家の当主になれたのに!」
その言葉にアウロアは目を眇めた。
「お、お父様……?」
「お前が、お前たちがアウロア、アウロアと言うから生かしておいたばっかりに! お前たちのせいだ! 全部お前たちの!」
「もういいでしょう、今ので自供も取れましたから。さようなら叔父上叔母上、もう会う事は無いでしょう」
「な、なんで私まで!」
軍人に取り押さえられ、叔母は悲鳴を上げた。
「言い出したのがお前だからだ! お前たちが言わなければ私は兄を殺そうなんて思わなかった!」
「なっ! 私のせいだってさっきから! あなたがずっと自分の方が優秀なのにと言って、お義兄様を疎んでいて……なのにいざ領地経営をやらせてみれば、さっぱり上手く行かなくて、借金ばかり抱えて!」
「借金をしたのはお前たちの放蕩のせいだ!」
「仕方が無いでしょう! 貴族なんですから! 流行遅れのものなんて身につけられないし、お金を使うのだって義務なんですよ!」
ぎゃんぎゃん喚く二人に、流石に軍人もいい加減にしろと叱りつけていた。
引き摺られる二人を見送り、アウロアはそういえば彼らは、アウロアが調査をしている間、何故逃げようとしなかったんだろうと不思議に思った。
アウロアは子どもの頃からイリーシアを手に入れる為に、あの曲者の義父とやりあってきた。
その為叔父からは、子どもらしく無く可愛げがないと嫌味を言われて来たのだが……
きっとその頃から嫌われていたのだ。
恐らく、アウロアが伯爵家嫡男で、次期当主だから。
自分が手に入れられなかった爵位を手に入れるアウロアに嫉妬して。そして蔑む事で自分を慰めていたのだろうか。
だから逃げなかった……侮っていたから。
たとえ逃げたとて捕まえてみせるが。
どう転んでも親の仇。到底許せる相手では無い。
三年前の事ならば、まだ追跡の余地があった。
あの頃の自分の家の使用人たちならアウロアも覚えている。
また、叔父夫婦が連れていた使用人たちも記憶していたので、捜査は進み、真相に至った。
フォンはその執念に頬を引き攣らせていたが、危険分子に目を光らせるのは当然だとアウロアは切って捨てた。
叔父夫婦は馬車に細工し、両親とアウロアを亡き者にするつもりだった。
本来ならば、往路で馬車は壊れる予定だったのだとか。
ただ、杜撰な計画というか、素人仕事だったというべきか、馬車は復路で壊れてしまった。
理由は爵位継承の阻止。
アウロアが娘と婚姻しないのなら、死んで貰い、自分たちがそこに居座る必要があった。
何故か
父が見限ったからだ。
城の金に手を出し、仕事を罷免となった。
家名を汚し、泥を塗った。
本来ならアウロアに告げるべきだったが、幸せそうな息子につい絆され、婚姻後に話そうと隙を作った為、殺された。
アウロアは唇を噛み締めた。
注意していれば気づけた事だった。
そんな事情があるなら、無理に叔父夫婦を結婚式に呼ぶ必要など無かったのだ。
それなのに最後の父の温情を彼らは裏切りで応えた。
ならばアウロアも容赦などしない。
証拠を徹底的に探し出し、証人たちを問いただし、宰相の前に並べて訴えた。
自分の両親は叔父に殺されたのだと。
人死となれば、軍の正式な取り調べが入る。
宰相は慎重に証拠を検分し、軍に捜査を命じた。
叔父は登城禁止の命を受けていた。
働き口が無かったから、娘を伯爵家に嫁がせて、そこにぶら下がろうとしていたのだ。
軍に引っ立てられていく両親を見て、ファビーラは遠慮なく軍人に噛み付いた。
けれどそれを見た叔父夫婦は目の色を変え、娘を叱り飛ばした。
「この……馬鹿娘! 元はと言えばお前が離縁などされるから! お前たちが散財して、家のお金じゃ足りなくなったから……! お前たちのせいだ! 全てお前たちの!!」
軍人に捕らえられていたファビーラは、その言葉を聞いて目を丸くしていた。
「お、お父様?」
「何がお父様だ! お前は私を父親なんかじゃなく、自分に都合の良い金蔓程度にしか考えてなかっただろう! お前は、お前たちは褒めそやさなければ、もっといい物をと強請り、いくらでも果てもなく……わ、私は、兄まで手に掛けて……」
項垂れる叔父にアウロアは冷たい目を向けた。
「何故被害者ぶってるのか知りませんが、両親の殺害は紛れもなくあなた方の犯行です。金を使い込んだのも、両親を殺す為動いたのも、あなたの意思無くしては全う出来なかった」
「し、仕方が無かったんだ! 家族に頼られ……私には他に道は……」
「その事こそ父に相談すべきでしたね、ファビーラとの縁談では無く。これは間違いなくあなたが選びとってきた結果ですよ」
ばっさりと切り捨てるアウロアに叔父は奥歯を噛み締めて呻いた。
「殺して……おけば……やはり殺しておくべきだった! そうすれば私が伯爵家の当主になれたのに!」
その言葉にアウロアは目を眇めた。
「お、お父様……?」
「お前が、お前たちがアウロア、アウロアと言うから生かしておいたばっかりに! お前たちのせいだ! 全部お前たちの!」
「もういいでしょう、今ので自供も取れましたから。さようなら叔父上叔母上、もう会う事は無いでしょう」
「な、なんで私まで!」
軍人に取り押さえられ、叔母は悲鳴を上げた。
「言い出したのがお前だからだ! お前たちが言わなければ私は兄を殺そうなんて思わなかった!」
「なっ! 私のせいだってさっきから! あなたがずっと自分の方が優秀なのにと言って、お義兄様を疎んでいて……なのにいざ領地経営をやらせてみれば、さっぱり上手く行かなくて、借金ばかり抱えて!」
「借金をしたのはお前たちの放蕩のせいだ!」
「仕方が無いでしょう! 貴族なんですから! 流行遅れのものなんて身につけられないし、お金を使うのだって義務なんですよ!」
ぎゃんぎゃん喚く二人に、流石に軍人もいい加減にしろと叱りつけていた。
引き摺られる二人を見送り、アウロアはそういえば彼らは、アウロアが調査をしている間、何故逃げようとしなかったんだろうと不思議に思った。
アウロアは子どもの頃からイリーシアを手に入れる為に、あの曲者の義父とやりあってきた。
その為叔父からは、子どもらしく無く可愛げがないと嫌味を言われて来たのだが……
きっとその頃から嫌われていたのだ。
恐らく、アウロアが伯爵家嫡男で、次期当主だから。
自分が手に入れられなかった爵位を手に入れるアウロアに嫉妬して。そして蔑む事で自分を慰めていたのだろうか。
だから逃げなかった……侮っていたから。
たとえ逃げたとて捕まえてみせるが。
どう転んでも親の仇。到底許せる相手では無い。
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