【完結】目覚めればあなたは結婚していた

藍生蕗

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13. 見るのは未来のみ

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「ア、アウロア……」

 震える声に振り返れば、青褪め、寒さに凍えるように身も震わせるファビーラが目に入った。

「君にも逮捕状が出ている」

 その言葉にファビーラは目を丸くした。

「は、はあ?! 何言ってるのよ! 私は何もしてないわ! 何も知らない! 何の罪に問われるというのよ!」

 彼らは本当に愛し合っていた家族なのだろうか。
 庇い合う体を見せながら、火の粉が降り掛かれば容赦なく手を振り払い、自衛に走る。
 アウロアは内心、本気で首を捻った。

「一つは窃盗」

 その言葉にファビーラは息を飲んだ。

「もう一つは違法薬物の所持と、使用だ」

 ファビーラの身体がぐらりと傾いだ。

「な……な、知らないわ! 違法だなんて知らなかったのよ!」

「君の元婚家から持ち出したあれは、所持に許可がいるものだ。それを勝手に持ち出し、挙句店で買えないと知り、その理由を考えもせず、裏取引に応じた」

 アウロアは奥歯を噛み締めた。
 自分をずっと捉えていた闇はその薬によるものだった。
 それを用いて自分を好きにしようとした、従姉の安易な思考にも腹が立つが、それ以上に違法と知り、その使用法も確認せずに捌いていた売人は、アウロア自ら捕らえ牢に入れた。

「君の罪は無知だ」

「どうして! 知らない事を責められるのはおかしいわ! お父様たちの罪だって私には関係が無いし、私は悪くない! 悪いのは、私を見ずにあんな女にうつつを抜かしたあなたと、身の程も弁えずあなたを誘惑したあの女よ!」

「犯罪に手を染めた罰はきちんと受けて貰う。私からは情状酌量の余地無しと書き添えておこう。……どうなるかは知らないが、達者で」

 そう言って踵を返すアウロアにファビーラはまだ何かを叫んでいたが、アウロアにはもう未来を向く目しか持っていなかった。
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