フラワーバスケット

kamatoshi

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杉咲龍之介

タイムカプセル

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楓さんが中学校を卒業する前に僕と桜を誘ってタイムカプセルを埋めようと提案してきた。
高校に上がってしまうと母校の小学校に立ち寄る機会もなくなるし、雰囲気的に立ち寄りづらくなってしまうからだそうだ。
当時僕らは小学校5年生。担任の新藤先生に事情を説明し、僕らも一緒に10年後の自分に向けて手紙を書くことにした。
桜と一緒に手紙を書こうとしたが何故か恥ずかしいからと一緒に書いてはくれなかった。
21歳になった自分に向けて何を書こうか。と色々と考えて頭を悩ませたが、何も思いつかなかった。
何を書こうかと鉛筆を持つがその筆はなかなか進まなかった。

書こうと思ったことがあったが、その事を見られたら恥ずかしい人が近くにいるためどうしようかとても悩んだ。
でも何も書かない訳にはいかず、見られたらそれはそれだと腹を括って書くことにした。
どうせ見られたとしてもそれは10年後だ。

相場はこういうのは10年後の自分が何をしているのかということを書くのが相場だ。4年生の時、2分の1成人式で将来の夢をみんなと語り、地域の人も呼んでの学習発表会でみんなの前で発表した。
正直将来の夢なんてなかった。僕の父は普通のサラリーマンで、憧れていないわけではないが言葉にするととても物足りなかった。他のクラスメイトはスポーツ選手や、学校の先生、アイドルという人もいた。桜はその時にも花屋さんになると全校生徒の前で宣言していた。

今の僕の夢は
恥ずかしさを押し殺して今の思いを短く綴った。

『ずっと桜と一緒にいること』

楓さんと桜と3人で小学校の大きな桜の木の下にそのタイムカプセルを埋めることにした。桜のたっての願いだった。
丈夫なお菓子のカンカンに思い出の物を手紙と一緒に入れた。僕は特に一緒に入れるものがなかったので手紙だけを入れた。

「龍くん、これ」
桜が僕に何かを手渡した。それは半強制的に無理矢理に。手に何かを握らせられた。
手の中にあるのは小さなラミネートされた長方形な薄い板のようなものだった。
「これ、って栞?え、これ押し花?」
「そう、タイムカプセル用に押し花の栞を作ったの。で、その時についでにもう1枚桜の押し花の栞も作ったから、龍くんにあげる。タイムカプセルに一緒に入れてもいいし、そのまま持っててもいいし。龍くん本読むの好きでしょ?」
押し花をさらにラミネートして長方形に切り取り上の部分にパンチで穴を開けて桃色のリボンが結ばれている。押し花は綺麗な桃色の小さい桜の花びらは春の綺麗な姿のまま時間ごと切り抜いたかのようにそこに存在していた。

タイムカプセルに一緒に入れるものなかったし、桜も手紙と一緒に同じような物を入れたって言っていたし。

でも、そこで何か嫌な予感がした。そして

「いや、このまま貰うよ。ありがとう。大切に使うよ」

気づいたらそう言っていた。その言葉で桜は「良かった」満面の笑みになる。急に恥ずかしくなって栞をポケットに突っ込む。楓さんが僕たちを見て微笑む。
「さぁ、早く埋めちゃうよ。2人とも後悔はないか?掘り起こすのは開けるのは10年後だよ」
楓さんのその声で僕ら2人は一緒に頷く。
僕がスコップで桜の木の麓に穴を掘る。カンカンの大きさの2倍くらいのサイズの穴を掘り、そこにカンカンを入れて上から土をかける。最後にスコップの背で重ねた土を上からパンと叩く。まるでそういう儀式のようだった。

楓さんの思いつきだったが、僕らにとってもとても楽しみな思い出になった。10年後また3人でここに集まることができることで必ずまた会う口実になる。僕にとってそれが何よりも嬉しかった。

楓さんには感謝している。

それは今でも同じだ。

この後あんなことがあったとしても桜がいた痕跡がここにはあった。
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