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第8話 あまりの残虐さに【以下省略】させて頂きます
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女神によって映し出された幻影はあまりにも残酷で救いがなくて、目を逸らしたくなった。だけど瞬きすら許されなくて、自分でもどうすればいいのか分からなくなっていた。
「ダァーメ、ちゃんと見てあげて? 愛しのマーニーちゃんが命を賭けて貴方を奈落に落としてあげてるんだから。ねぇ、瞼を開けて、よーく見届けてあげてね……♡」
救いがない、救われない……。
逸らせない、助け出せない。
僕達は結局、何のために死に物狂いに逃げたのだろう?
何故、幽閉された塔の地下から逃げ出したのだろう?
磔られた彼女に、投げつけられた沢山の石。
吐かれた暴言に思わず耳を疑った。
『この人喰い鬼! 悪魔、悪魔め! 子供を返せェ‼︎』
——子供?
マーニーは食欲に負けて、子供を喰ったのか?
いや、そんなことないはずだ。僕に黙って約束を破るはずがない!
でももう、何が本当で何が嘘か分からない……。だって、もしも本当に食べたとしたら——……。
「わぁー、見て見てアデルくん。綺麗な火だねー……あの火がマーニーちゃんを焼くんだよ」
「や……く? 待て、マーニーはまだ生きているのに」
「だって人を喰べるような悪魔は、ちゃーんと聖なる火で焼き払わなきゃ! そして二度と復活できないようにコアを破壊してあげないとね……♡」
嫌だ、嫌だ……嫌だァ!
全力で抗ない拒んだが、止めることも逸らすことも出来なかった。
マーニーの下に置かれた大量の薪や藁に油が撒かれ、そのまま火が点火された。あっという間に燃え盛った業火の中で、妹は潰れた喉で必死に命乞いを叫んでいた。
悲痛な声が鼓膜に張り付く。
助けて、助けて助けてお兄様って——……。
「やめろォォ! 頼むからマーニーを、マーニーを助けてくれ!」
「ダメだよ、今更……。これはアデルとマーニーが犯した罪への罰。さぁ、恨め恨め。人間を恨め♡ 愛しのマーニーを苦しめた挙句に処刑した人間を恨め!」
結局、彼女が真っ黒に変わり果てるまで、僕は見せつけられた。すっかり変わり果てた姿にも関わらず、断裂魔を叫ぶ表情だけは残されていて。
もう、僕の精神は崩壊寸前だった。
短く息をするので、精一杯だった。
救われない。こんなの絶対に救われない……!
「クソォぉぉーッ! 殺す、殺してやる! あの場にいたもの全員、八つ裂きにして腑を剥き出してやる! テメェもだ、女神! テメェが人間をそそのかしたんだろう! ふざけんじゃねェ! テメェの都合を俺達にぶつけんじゃねぇぞ‼︎」
全魔力を解放して魔族の姿を晒したが、それでも拘束は外せなかった。肌に食い込んで血が滲む。腕が千切れそうな悲鳴をあげていたが、そんなことすらどうでもいい。
「可哀想なアデルくん。マーニーちゃんが死んだ現実を受け止められなくて暴走気味なんだね。ねぇ、もし……愛しのマーニーちゃんを蘇らせてあげるって言ったら……アデルくんはどうする?」
蘇らせる……?
マーニーを——?
僕は叫ぶことをやめて、女神の話に耳を傾けた。できるのか、本当に……。
もう一度彼女に会えるなら、悪魔に魂だって差し出してやる。
「あー……でも、マーニーちゃんを復活させるには、少し時間が必要かも? 百年……いや、三百年かな? その間、アデルくんがしっかりと魔王を務めてくれたら特別に蘇らせてあげよう!」
吸血鬼の僕にとって百年なんてあっという間だ。だがそれは、あくまで通常時の話だ。
マーニーがそばにいない今、一分一秒ですら生きるのが苦しい。
彼女が死んだら、僕も後を追って死ぬ。
そう思っていたはずなのに……気付けば女神の提案に頷いていた。
もう一度マーニーに会えるなら、僕は……!
「——契約成立ね。これで貴方は私の許可なく死ぬことができなくなった。少なくても三百年は魔王として君臨してもらうわよ」
こうして僕は女神と契約を交わし、魔王となった。
シナリオはこうだ。
三百年後に誕生する勇者に殺されるまで、絶滅しない程度に人間を追い詰める。そして僕は復活したマーニーと再会を果たすのだ。
「絶対に……ユルサナイ」
さぁ、人間供に復讐しよう。
始まりの合図は、今鳴らされた——……。
「ダァーメ、ちゃんと見てあげて? 愛しのマーニーちゃんが命を賭けて貴方を奈落に落としてあげてるんだから。ねぇ、瞼を開けて、よーく見届けてあげてね……♡」
救いがない、救われない……。
逸らせない、助け出せない。
僕達は結局、何のために死に物狂いに逃げたのだろう?
何故、幽閉された塔の地下から逃げ出したのだろう?
磔られた彼女に、投げつけられた沢山の石。
吐かれた暴言に思わず耳を疑った。
『この人喰い鬼! 悪魔、悪魔め! 子供を返せェ‼︎』
——子供?
マーニーは食欲に負けて、子供を喰ったのか?
いや、そんなことないはずだ。僕に黙って約束を破るはずがない!
でももう、何が本当で何が嘘か分からない……。だって、もしも本当に食べたとしたら——……。
「わぁー、見て見てアデルくん。綺麗な火だねー……あの火がマーニーちゃんを焼くんだよ」
「や……く? 待て、マーニーはまだ生きているのに」
「だって人を喰べるような悪魔は、ちゃーんと聖なる火で焼き払わなきゃ! そして二度と復活できないようにコアを破壊してあげないとね……♡」
嫌だ、嫌だ……嫌だァ!
全力で抗ない拒んだが、止めることも逸らすことも出来なかった。
マーニーの下に置かれた大量の薪や藁に油が撒かれ、そのまま火が点火された。あっという間に燃え盛った業火の中で、妹は潰れた喉で必死に命乞いを叫んでいた。
悲痛な声が鼓膜に張り付く。
助けて、助けて助けてお兄様って——……。
「やめろォォ! 頼むからマーニーを、マーニーを助けてくれ!」
「ダメだよ、今更……。これはアデルとマーニーが犯した罪への罰。さぁ、恨め恨め。人間を恨め♡ 愛しのマーニーを苦しめた挙句に処刑した人間を恨め!」
結局、彼女が真っ黒に変わり果てるまで、僕は見せつけられた。すっかり変わり果てた姿にも関わらず、断裂魔を叫ぶ表情だけは残されていて。
もう、僕の精神は崩壊寸前だった。
短く息をするので、精一杯だった。
救われない。こんなの絶対に救われない……!
「クソォぉぉーッ! 殺す、殺してやる! あの場にいたもの全員、八つ裂きにして腑を剥き出してやる! テメェもだ、女神! テメェが人間をそそのかしたんだろう! ふざけんじゃねェ! テメェの都合を俺達にぶつけんじゃねぇぞ‼︎」
全魔力を解放して魔族の姿を晒したが、それでも拘束は外せなかった。肌に食い込んで血が滲む。腕が千切れそうな悲鳴をあげていたが、そんなことすらどうでもいい。
「可哀想なアデルくん。マーニーちゃんが死んだ現実を受け止められなくて暴走気味なんだね。ねぇ、もし……愛しのマーニーちゃんを蘇らせてあげるって言ったら……アデルくんはどうする?」
蘇らせる……?
マーニーを——?
僕は叫ぶことをやめて、女神の話に耳を傾けた。できるのか、本当に……。
もう一度彼女に会えるなら、悪魔に魂だって差し出してやる。
「あー……でも、マーニーちゃんを復活させるには、少し時間が必要かも? 百年……いや、三百年かな? その間、アデルくんがしっかりと魔王を務めてくれたら特別に蘇らせてあげよう!」
吸血鬼の僕にとって百年なんてあっという間だ。だがそれは、あくまで通常時の話だ。
マーニーがそばにいない今、一分一秒ですら生きるのが苦しい。
彼女が死んだら、僕も後を追って死ぬ。
そう思っていたはずなのに……気付けば女神の提案に頷いていた。
もう一度マーニーに会えるなら、僕は……!
「——契約成立ね。これで貴方は私の許可なく死ぬことができなくなった。少なくても三百年は魔王として君臨してもらうわよ」
こうして僕は女神と契約を交わし、魔王となった。
シナリオはこうだ。
三百年後に誕生する勇者に殺されるまで、絶滅しない程度に人間を追い詰める。そして僕は復活したマーニーと再会を果たすのだ。
「絶対に……ユルサナイ」
さぁ、人間供に復讐しよう。
始まりの合図は、今鳴らされた——……。
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容姿で目だっていても素朴な人の中ではただそれだけなのに。
あー、惹区からタグからタイトルから、うわああああ。おかあさーん、絶望が来るよぉ~(涙)
そうそう、タイトルでショーケンが浮かんだら、昭和っ子です(笑)
まさかまさか、この作品も読んでくださるとは(๑>◡<๑)
いつもありがとうございます✨
拝啓〜……ハマショーだったんですね!
聞き覚えのあるフレーズだとは思っていたんですが、こんな感じだなと思ってつけてしまいました^^;
私も色んな曲を聴いてみよう✨