前世は猫、今世は(文字通り)魔王の箱入り娘です!

雪野ゆきの

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家族から見たミィ

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 小さい丘の上で寝るミィ達に忍び寄る影が四つあった。
 四つの影は同時に一つの箱を覗き込む。

「―――か、かんわいい~!!」
 三男リーフェが両手を口に当てて悶える。
「おいリーフェもうちょっと声を抑えろ。かわいいかわいいミィが起きて泣いちゃったらどうする」
「オルフェ兄上はちょとミィに夢見すぎだよ。ミィはちょっと図太いところもあるから、ふぇぇってグズるくらいじゃない?」
『ミィがふぇぇって言ってるの聞いたことないけどな。てかお前ら念話で話せ』
『『あ、そっか』』
 次男イルフェの発言で二人は念話に切り替える。

 長男と三男の二人に比べてイルフェは一見冷静に見えるが、モフ丸と一緒に眠る可愛い妹の姿を目に焼き付けようと、瞬き一つせず目をかっぴらいている。横で記録魔石に映像を撮らせているにも関わらず、だ。

『父上……って父上?』
 魔王は娘の姿を見つめて静かに涙を流していた。
『父上、どうしました?』
『娘がこんなに大きくなったのかと思うと……尊い……』

 オルフェは父の姿を見て少し冷静になった。
『父上、勘違いです。これは大きい毛玉が入ってるから段ボールのサイズアップしてるだけです。ミィの大きさはここ数年変わってないですよ。そろそろ箱でミィの大きさ計るの止めましょうよ。尊いのは同意ですが』
『そうですよ父上~。泣き止んでください』
 そう言ってリーフェが魔王にハンカチを差し出した。溺愛とまではいかないが、ミィ以外の家族も普通に仲はいい。

『それにしても……』
『ああ』

『『『ミィと動物のコラボがこんなにかわいいとは……!』』』

 家族全員の声がそろった。
『無垢×無垢はもう最強だろう!』
『狐よりも小さいミィかわいい。ギュウウウって抱き締めたい……!』
『分かる』 
 だが今抱きしめてしまうとミィが起きてしまうため、彼らは必死に衝動を抑える。

 ミィの寝息がモフ丸の毛をくすぐるだけで親バカ、シスコンガチ勢の彼らは悶えた。
 そんな家族達の気配を感じたのか、モフ丸がパチッと目を覚ました。そして段ボールを取り囲む兄達をジトリと見回す。
 イルフェがモフ丸の頭をよしよしと撫でた。
『よ~しよ~し、いい子だな。ミィが起きるまではそのままでいてくれ』
「……」
 モフ丸はジッとイルフェを見つめた後に頭を元の位置に戻して目を瞑った。
 そして兄達は仕事に戻っていく。




 夕食時、今日の担当はイルフェだ。
「ミィ、今日は俺の膝だぞ」
「はいです」
 イルフェがミィにそう言うとミィは、んっと両手を前に突き出した。
(あ゛~何度見てもかわいい)
 イルフェは内心悶えつつ、ミィを抱き上げて自分の膝の上にのせた。
 ミィももう慣れたもので、イルフェの膝の上でマイペースに食事をする。

 ミィはその小さい体躯に反して結構ガツガツと食事をとる方だ。今日も小さい口にステーキを頬張ってあぐあぐと一生懸命咀嚼している。

 ミィの家族達は末っ子を眺めつつ、自分達も食事を味わう。

(はぁ、ミィ、お腹が空いた猫みたいでかわいい)
 そう独自の感性でため息を吐くのはリーフェだ。

(ミィの後頭部は小さくてかわいいな)
 後頭部にかわいさを見出すイルフェ。

(ああ、一気にあんな量のごはんを口にしてミィは喉を詰まらせないだろうか……)
 見当違いな心配をするオルフェ。

(ごはんがおいしいな……。娘もかわいい)
 じっくりと夕食を味わう魔王。


 この数十年、彼らの思考は大体変わっていない。






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