前世は猫、今世は(文字通り)魔王の箱入り娘です!

雪野ゆきの

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ミィ、畑を作る

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 朝食の時間、わたしは家族に宣言した。

「ミィは畑を作るのです!!」
「……急にどうしたんだい?」
「モフ丸のエサを作るのです」
 わたしはお肉をもぐもぐしているモフ丸の尻尾を抱えました。ふさふさなのです。

「ミィ、まだ食事中なのだから父様の所に戻っておいで」
「は~い」
 わたしは父さまのお膝に戻った。モフ丸を触っちゃったので手に軽く浄化魔法をかけられる。
「それで、どうして畑なのだ?」
「飼い主としての愛情をモフ丸に示すのです」
 そう言うと、父さまは目頭を押さえた。
「ミィ、そんなことを考えられるくらい成長したのだな……父は感激だ。場所を用意しよう」
「父さまありがとうなのです」
 わたしは父さまのほっぺに感謝のちゅーをしました。




***




「よしモフ丸、始めるのですよ」
 父さまはわたしにお庭の一角をくれました。今からそこを耕して畑にする予定です。
 モフ丸もやる気らしい。さっきからその場で足踏みをしている。
 クワは危ないからとスコップを持たされた。ちょっと重いのです。
「モフ丸、ミィがおいしいお野菜を食べさせてあげますからね」
「キュ!」
「でもお肉は料理長に頼んでくださいなのです」
「キュ……」
 なんですかその目は。


「よいしょ」
 スコップで土を掘り起こす。イルフェ兄さまの指令で魔法で土を耕すのは禁止されているので地道に手作業だ。
 モフ丸もせっせと土を掘り起こしてくれてる。ここ掘れわんわん。モフ丸は狐だけど。
 今日はわたしの親友、箱はお部屋でお留守番だ。代わりに麦わら帽子を頭に被っている。



 しばらくスコップを動かし続けた後、わたしは呟いた。
「……あきちゃった」
「キュ!?」
 足を土で汚したモフ丸が寄って来る。わたしはかがんでモフ丸の顔を両手で挟みました。
「モフ丸ぅ、ミィ疲れちゃったのです。畑つくるのは明日にしないです?」
「キュ~」
 もうぜって~やらねぇだろって顔してます。このままだと多分その通りになっちゃいますね。


「ミィ」
「オルフェ兄さま」
 いつの間にか来ていたオルフェ兄さまに抱っこされた。
「もう疲れたのか? モフ丸に愛情のこもったおいしい野菜を食べさせるのだろう?」
「……です」
 わたしはコクリと頷いた。飼い主の愛情がペットに伝わるということは前世飼い猫のわたしはよく知ってる。飼い主の愛情がどれほど嬉しいのかも。
「……もうちょっとがんばります」
「ああ、休憩の間だけになるが兄さまも手伝ってやろう」


 兄さまの手伝いもあり、土壌の準備が完了した。
 土に肥料を撒くと兄さまはお仕事に戻るというのでお礼にちゅっちゅしておいた。家族に感謝を伝える時は頬や額にちゅーするのが魔王家流だ。

「さあモフ丸、種をまきますよ」
「キュィ!!」
 モフ丸は畑づくりが随分楽しいみたい。ゴロゴロと土の上で転がって全身を泥だらけにしている。後で一緒にお風呂だね。浄化魔法でもきれいにできるけど、ペットとお風呂は夢だから楽しみなのです。

 指で土に穴を開けて、そこに種を入れ土を被せる。その作業をひたすら続けた。これはモフ丸にはできないのでモフ丸は見学です。
 ……モフ丸寝てない? ミィもお昼寝したいんですけど。
 ちょっとモフ丸に腹を立てつつも、わたしは種植えを完了しました。

 フカフカになった土に手をついてわたしは念じた。モフ丸もわたしの横でマネっ子してる。かわいいのです。
「はやくそだて~。はやくそだて~」
「キュ~。キュ~」
「そだて~」
 ニョキッ。
「そ~だ~て~」
 ニョキキッ。
「キュィ!! キュオ!!!」
「んん?」
 モフ丸が急に激しく鳴き出したのでわたしは顔を上げた。

「にゃんだと!!?」

 すると、そこには野菜が青々と茂った立派な畑ができていた。
「これは、ミィの畑ですよねモフ丸……」
「キュイ!!」
「なんかわかんないけどやったのです!!」
 こんなすぐに育つなんてお得な気分。
 後ろ足だけで立ったモフ丸と手を取り合って喜ぶ。

 さっそく、ツヤツヤと輝いているトマトを収穫してモフ丸と食べてみた。
「ん~っ!!」
「キュア!!」
 甘くて瑞々しくておいしい!
 モフ丸も尻尾をブンブン振ってるからお口に合ったみたいだ。

 わたしは夕食で家族に振舞おうと何種類かの野菜を収穫した。あとは料理長に渡すだけ!
「モフ丸帰ろ」
「キュ!」

 籠に入った野菜を持ってお城に帰ると、玄関でリーフェ兄さまが出迎えてくれた。

「え? もう育ったの!?」
「それはもうニョキニョキと」
「はぁ~、ミィの癒しの手の効果なのか、それともミィには他に特別な力があるのかな?」
 リーフェ兄さまが首を傾げてわたしを見てくるのでわたしもマネっ子して首を傾げる。ミィに聞かれてもわかんないのです。
「っ! かわいい!!」
 リーフェ兄さまが胸を押さえてうずくまった。

「兄さま、お野菜を収穫してきたので夕食で食べてください」
「もちろん! ミィが頑張って作った野菜だもん、味わいつくして食べつくすよ!!」
「食べつくしちゃだめです」
 父さまや上二人の兄さま達の分もあるのです。


「まあ、ごはんの前に二人はお風呂だね」
 そう言ってリーフェ兄さまがわたしの顔についていた土を拭ってくれた。
 長時間畑を作っていたわたしとモフ丸は泥だらけだ。


 さあ、次は楽しい楽しいお風呂です!



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