前世は猫、今世は(文字通り)魔王の箱入り娘です!

雪野ゆきの

文字の大きさ
8 / 49

モフ丸とお風呂!

しおりを挟む
 収穫してきた野菜を料理長に預けてわたし達はお風呂にやってきた。料理長はガタイのいいおじいちゃんで、野菜を持ってきたわたしの頭を撫でて褒めてくれた。
「おいしくお料理してください」
「姫様が育ててくれた野菜ですからね。腕を振るいますよ」
「えへへ」
「姫様は本当にお可愛らしい。さあ、ジィに構ってないでお風呂に行ってきてください」
「は~い。モフ丸、行きますよ」
「キュ!」

 テトテトと、廊下の床を汚さないようにお風呂に向かう。お掃除する人が大変だからね。

 王族専用の大浴場に着くと、わたしはすぽぽんっと土で汚れた洋服を脱ぎモフ丸とお風呂場に入った。すでに湯船にはお湯が張られていて、真っ白い湯気がもわっとわたし達を包む。

「おいでモフ丸」
 シャワーの前にモフ丸を呼びつけた。モフ丸は素直にテトテトと歩いてきてわたしの前に座る。かわかわなのです。
 わたしはモフ丸のフサフサの尻尾を触る。
 さらばモフモフ、暫しの別れです……。
 わたしはモフ丸のモフ毛にお湯をかけていった。最初は毛がお湯を弾いちゃったけど次第にモフモフがぺっちょりしていく。


「お~、モフ丸あわあわ」
 毛の多いモフ丸はとても泡立ちがよかった。でもやっぱり普段のモフ丸の方が触り心地はいいですね。
 ちゃんと毛の隙間までかき分けて砂粒を落としていく。そしてついでにちゃちゃっと自分も洗う。
 ジャバババンとあわあわを流し、いよいよ湯船に入る。モフ丸は大きい湯船には入れちゃダメって言われたから犬用の大きい桶みたいなのを持ってきてもらった。そこにお湯をためてあげる。

 ちゃぽんとお湯につかったモフ丸の頭に長方形に折ったタオルをのせてあげる。
 うむ、これこそ様式美です。
 わたしも頭にタオルをのせて湯船に浸かる。
「ふぃぃぃぃ」
 あたたかしなのです。
「キュィ~」
 モフ丸も大分リラックスしてるみたい。大分しんなりしたモフ丸は桶のふちにちょこんと前足をのせているかわわわわ。
 前世のわたし(猫)も相当可愛かったけど、モフ丸は多分その次くらいにかわいい。つまり世界で二番目にかわいい。ちなみに前世のわたしが世界一だと思う根拠は前世のご主人様が散々そう言ってたからだよ。


 存分にお風呂を堪能して温まったので、そろそろ上がろう。
「モフ丸、出ますよ~」
「キュイ!」
 モフ丸は一鳴きして桶から出てくる。前々から思ってたけどモフ丸はわたし達の言葉を理解してると思う。だってちゃんと反応するし、本人……本狐も隠す気なさそうだから大したことじゃないのかな。モフ丸も呑気に体ブルブルして水気取ってるし。かわわわわ。

「モフ丸、ちょっと待っててね」
 モフ丸をバスタオルの上に置いて先に自分の体を拭いちゃう。角の隙間まで丁寧に拭っていく。髪の毛は後で兄さまか父さまに乾かしてもらおっと。
 次にわたしはバスタオルでモフ丸の体をざっと拭う。
「モフ丸も後で乾かしてもらいましょうね」
「キュ!」
 モフ丸はぺちゃんとした尻尾をユラユラと揺らす。……やっぱりちょっと物足りないモフ。


 肩にタオルをかけて廊下に出ると父さまに遭遇した。
「あ、父さま。髪の毛乾かしてください!」
 父さまに抱き着く。
「風呂に入っていたのか」
「はい、畑を作って汚れちゃったので」
「よい畑はできたか?」
「はい、野菜も収穫できたので夕食で食べてくださいね」
「?」
 今の会話の間に父さまはわたしとモフ丸の毛を乾かしてくれた。
「なんか気付いたらニョキニョキ育って野菜ができてました」
「……我の子は天才だな」
 父さまによしよしと頭を撫でられる。
 そして、そのまま父さまに抱き上げられて食堂に向かうことになった。もう夜ごはんの時間なのか。
 父さまのわたしを抱いてない方の腕、つまりわたしの向かい側にはモフ丸が抱っこされている。ちゃんと抱っこされるのが新鮮なのか心なしモフ丸が嬉しそうだ。

 食堂に着くと、お風呂上りのわたしに料理長が真っ先にお水をくれた。それもお腹を冷やさないようにキンキンに冷えた水じゃなくて程よく冷えたお水だ。さすが料理長。

 わたしの作ったお野菜は家族に大好評だった。
 曰く、元気がでる、癒される、回復する、とのことだ。わたしにあまあまな家族なのでちょっと大げさに言ってるんだろう。兄さまや父さま、そしてモフ丸もガツガツ食べていたのでおいしかったのは本当なんだと思う。料理長の腕がよかっただけかもしれないけどね。

 でもみんながおいしそうに食べてくれたからミィは大満足なのです!






しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...