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落とし物を拾ったのです
しおりを挟むそれは、父さまの指をガブガブしていたある日のことです。
「……ミィ、父は仕事中なのだが……」
「ひゃいでしゅ」
「……父の手をガブガブするのは止めないか?」
「ん~……」
父さまの手をかみかみしながら父さまの手を放すかどうかを考えます。父さまの手をがぶちょしてるのは、なんとなく口寂しいからなのです。
でも、ミィが捕獲してるのは右手だけなので父さまは左手でお仕事をすればいいのです。ミィは引き続き父さまの膝の上で父さまの右手と戯れることにするのです。
「……かわいい……」
「父上、さっきから一文字も進んでませんよ」
オルフェ兄さまが父さまに注意する。
「……ミィがかわいすぎるのが悪いのだ」
「ミィかわいいのです!」
にゅふにゅふと笑う。
「む!」
「どうしたミィ?」
「ん~、気分としては、ここ掘れわんわんな気分なのです」
「へ?」
ミィは父さまの膝からぴょんと下りました。ちょっと着地に失敗してよろけたのは秘密なのです。
「ミィ、どこに行くんだ?」
「モフ丸をお散歩に連れていくのです!」
父さまとオルフェ兄さまに手を振ってミィはお部屋を出ました。
「……父は少し寂しいぞ……」
ミィがいなくなった部屋で父さまはそう呟いたそうです。
「モフ丸~」
モフ丸を呼びながら廊下を歩いていると、どこからかモフ丸がやってきました。
「なんだミィ」
「お散歩にいきますよ~」
「……ミィ、我は犬ではないから別に散歩には連れて行ってもらわなくてもいいのだぞ」
「じゃあモフ丸がミィを散歩に連れていくのです」
「……よかろう」
モフ丸が納得してくれたようです。今日はなにかがある気がするのです!
***
ポカポカ日差しの中モフ丸とお散歩をします。ついお昼寝をしたくなっちゃいますね。
「ミィ、どこへ向かっておるのだ?」
「どこかへです! 今日はきっと何かがある予感なのです!」
「そうなのか?」
「そうなのです!」
モフ丸を引き連れて広すぎる庭を散策していると、地面に落ちている白いなにかを見つけた。とりあえず拾ってみる。
「これは……お財布です?」
「そのようだな。かなり質がよさそうだが……」
モフ丸の言う通り、すごく触り心地のいい財布です。お財布自体が高そうですね。
とりあえずお財布を開けてみる。……わ、中身ぎっしりです。
「モフ丸、お金がいっぱい入ってるのです!」
「いっぱい入っているからと言って盗むでないぞミィ」
「ミィは人のお金を盗むほど困ってないのです! あ、しかもこれ天界のお金ですよ!」
前に母さまが見せてくれたから知ってるのです。
「こんな大金落としちゃったらきっと困ってるのです……。持ち主を探してあげましょう!」
「ミィはいい子だのう」
あったりまえなのです。
「じゃあ一回お城に戻りましょうか。お財布を探してる人が届け出てるかもしれないのです」
「そうだのう」
一旦お城に戻ろうと踵を返そうとした時、ガッと脇に手を差し込まれて持ち上げられました。
「!?」
「その心意気やよし!」
「……誰です?」
てっきり兄さま達の誰かかと思ったら、全然知らない男の人なのです。ただ、どこかで見たことのある顔のような……。
ミィのその疑問にはすぐに答えが返ってきました。
「我の名はレクス。天界の王にしてコウの父親だ! そして、そなたが持っているその財布の持ち主でもある」
「なんと!」
ミィ五歳、今日の拾い物は天王様のお財布でした。
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