その無防備が誘ってるみたいで。でも僕らはギリギリでまだ友達。

zanka

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【友達とはキスできない】

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 海翔はもともともめ事が苦手だった。
 そもそも人と争うような機会もなかった。
 自分はいつも好き勝手にしていて、周りはそれを黙認してくれて、何となくふわふわした人間関係が多かった気がする。
 思えば一人の人とこんなに深く付き合ったことがない。
 実は、薄々気がついてはいたけど。

 しばらくベッドの上で居たが、着替えを済ませるとリビングに向かう。
 ワイドショーをつけたテレビの前で、拓真は携帯を弄っていた。
 横顔の表情が固い。
「拓真」
 呼びかけられて、振り向いた拓真は気まずそうだった。
 海翔はソファの横に立った。笑顔を作って、
「僕、なんか空気読めなかったかも。そうだったらごめんね」
「別に、そういうのじゃないよ」
「あんまり一人の人と、長い時間過ごしたことがないんだ。そう言えば」
「・・・いつも自由そうだもんな」
 海翔は大きな目でまっすぐ拓真を見つめて、
「ベッドは落ちるから、床に布団敷いて寝るよ。僕がソファでもいいし。だって僕の方が小さいから、ソファにぴったりだよね」
 拓真は目を逸らし、黙る。
「そもそもどうしてダブルベッドなんだろうね。空いてなかったのかなあ」
 明らかマコの悪戯だ、と拓真は思っていた。
「ね、朝ご飯。食べにいこ」
 海翔なりに気まずい空気を元に戻そうとして頑張っているのが、痛々しいほど分かった。
 大概笑っていて、人なつっこく、深刻な顔を見たことがない。
 海翔は誰とでも上手くやるが、そのくせ一線は引いているように見えた。
 プライベートも余り話さないのだ。
 学校での姿を知っているだけ。
 だから、高校三年、最後の夏休みに拓真は賭をした。
 もっと知りたい、普通の友達から変わりたい、そのきっかけが欲しかったから、ここに呼んだのだ。
「まだ、早いから、ちょっとこっち来て」
 手招きすると、一瞬の躊躇いを見せた後、海翔は近づいてきて拓真の横に少し距離を取って座った。
「こっち見て」
 拓真がそう行って、海翔の顎に手を触れてこちらに向ける。
「・・・何?」
 海翔は泣き出しそうな顔をして、それでも拓真を真っ直ぐに見た。
「まだ、一昨日此処に来たところだ」
「うん、そうだね」
「俺が怖くなった?」
 海翔は明からに動揺して視線を揺らした。それは肯定だろう、と拓真は思った。
「僕はキスはしたくないよ。だって友達じゃん…」
「そうかな? 友達だと思う?」
「そうだよ。三年になって、拓真と仲良くなれて嬉しかったのに!」
 今までのつかず離れずの友達と違い、二人で過ごす時間も長かったし、自分にしては気を許して色々なことを話した、と海翔は思う。
 なんなら今後の大学も同じになる可能性さえあるのだ。
「ていうか、彼女いるじゃん」
 ようやくその事を海翔は思い出す。
「ああ、いたね」
「なんで過去形…」
「別れたから」
「また!?」
「そうだね。何人目だろう」
 拓真はつまらなさそうにそう言って、軽くため息をついてソファにもたれかかった。
 その隙に海翔はそっと拓真から離れる。
「何それ? 離れたいわけ?」
 冷たい声で拓真が言う。
「別に…」
「いいけど。まあ、まだ3日目だし。あと11日もあるから」
 拓真は言い捨てるようにそう言う。
 彼の中で色々なことが勝手に決められているようだ、と海翔は思う。
 海翔は僅かな怒りを隠しきれない瞳で拓真を見る。
 一昨日まで友達だったのだから、ここに来ても変わらないだろう、と思う。
 ちょっとした冗談だったのに、急に不機嫌になったり、怖い顔をする。
 拓真の知らない一面が怖く、それを怖いと思う自分が嫌だった。
「二週間経っても、別に何も変わんないよ。もう、下、降りるよ、僕」
 拓真はそう言って、部屋を出て行った。
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