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片桐由美
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しおりを挟む富良野
寒い冬を乗り越え、富良野に春が来た。
—由美side
「ママーー!テラスのお花咲いてるよ!!」
まだまだ寒い富良野。
私は、朝から娘の明のお弁当を作って、
「本当~??もう雪も解けたもんねぇ・・・明~・・早く顔洗ってきな~・・・」
明はまたテラスを見て、すぐ横に座っている私の母に笑いかけ・・・。
「顔洗ってくる!」
母はそんな明を見て頷き・・・立ち上って私の方に歩いてくる。
「由美~・・・今日お散歩しながら由美の店にご飯食べに行こうかな~???」
そう言ってきた。
「雪解けしたばかりだから、ちゃんとブーツ履いて歩いてね!お母さんこの前転んだばかりなんだからー・・・」
そう言って笑うと、母も笑って
「この辺で育ってー・・高校まで生活していたのにね!」
そう言った。
今私が居るこの富良野の大きな丸太小屋は、元々は母の実家。
誰も住まなくなって、隣に暮らす母の従妹夫婦が綺麗に建て直して来客があった時だけ使っていた離れ。
リビングの前にはウッドデッキがあってそこは冬の時期でも洗濯物が干せるようサンルームになっていて、娘の明はそこで何個か鉢を置いて花の種を植えた。
家の外の森の方にはまだ雪が残っているけど・・・家の前の畑の雪はすっかり解けている。
お弁当箱のふたを閉め、明が気に入っているキティちゃんの袋にお弁当箱を入れ、
「お母さん、今夜3人で外食しない??」
私がそう言うと母は笑って・・・。
「67歳の誕生日?嬉しくないんだけど~ッ!!」
そう言った。
母はまだまだ元気な67歳。
北海道に帰ってきて、同級生とか親戚とかにまた再会したら・・・更に元気になった。
「明がお婆ちゃんにプレゼントがあるから、パーティーしたいって言ってたの!お家でしようかって聞いたら、ファームでハンバーグ食べたいって!」
私がそう言うと母はゲタゲタ笑って、
「明はあの店大好きだねーー、なーーにかあるとアソコなんだから!」
私達家族がこの北海道に戻ってきたのは・・・昨年の12月。
もの凄い寒い日で、富良野に着いたのは夕方だった。
まだ家の中には何も揃っていないから、富良野駅の近くに美味しいハンバーグの店があると聞いて3人で行った。
なんてことないハンバーグだったんだけど・・・なんか凄く美味しくて・・・。
雪が深々と降る中、私達は夢中で食べた。
それからその店は私達の中で『特別』な場所になったの。
私はいつも朝食とお弁当の準備をし、洗濯物を済ませ明が出て行った後、10時前に家を出る。
家の前に止まっているのは、中古で購入した軽自動車。
運転席に座ってアイコスを咥え車を出した。
私の職場は自宅から車で10分ほど行った場所にある。通り沿いにある定食屋さんだ。
一番近い駅は富良野駅で、車だと10分弱。
でも歩くと1時間位・・・バスは走っているけど・・・あまり使わない。
冬は本当に寒くて、慣れない雪道の運転や歩くのは本当に大変だった。
でもね、東京では見る事が出来ない綺麗なものも・・・沢山見れた。
そして、春が来た北海道。
今日は快晴・・・・。
車を走らせると、畑の脇に小さな花が咲いていたり・・・でも森の奥には雪が残っていたり。
まだまだ寒い富良野・・・。
少し走って、定食屋の少し手前に大きな牧場の看板が見えて来る。
いつもそこには、つなぎを着た真也君が首からタオルを掛けてニッコリ笑って手を振って立ってるの。
私も手を振り、そのまま車を走らせた。
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