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片桐由美
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しおりを挟むこっちでの生活の中で、女性と関わる事はなかった。
あ、松さんが一応女性か!!
OHの更生プログラムのルールで、この期間に男女としてのかかわりは一切持ってはいけないという規定があり、仕事であったり生活上で必要なコミュニケーションは認められる。
だからこっちに来て由美さんと話をすることは、俺にとっては・・・・少し特別だった。
車を降りて、暖簾をくぐり、店内を覗くと・・・由美さんがニコニコ笑ってお客さんと喋っているのが見えた。
ガラガラ・・と、扉を開け中に入ると
「あ、いらっしゃいー・・・・」
と、由美さんの明るい声が聞こえた。
俺は由美さんの顔を見て笑い、いつも座る窓際の角の席に腰かけた。
大体豚丼だけどー・・・一応メニューを見ていると、俺の前にお茶が置かれて
「あれ?今日は豚丼以外にする?」
って・・・声が聞こえた。
顔を上げると、いつも通りの綺麗な顔でニコッと笑って・・・やっぱり可愛い。
「あー・・今日もやっぱり豚丼かな!後、豚汁もー・・・」
そう言うと由美さんはまた笑って、
「大丈夫?私豚丼押し売りしてない?」
って・・・・。
少し近付いて言ってくるから、その可愛い顔を思わずジッと見てしまう俺。
「全然、ここの豚丼大好きだし!いつも通り大盛りでお願いしまーす!」
そう言うと由美さんはまた笑って、
「はーい!!」
以前はこんな風に女性とちゃんと話した事なんて・・・・なっちゃん以来か、OHの会員さんと最初にそんな会話をしたかな??って位だ。
いつも女性に変な嫌悪感を抱いて、疑いの目で見ていた俺。
いつからか・・・女性を標的にしてストレスを発散していた。
最低だった。
だから今こうやって綺麗な人と話しても、個人的に仲良く出来ない事にも納得しているんだ。
自分が・・・悪いんだ。
—由美side
真也君のオーダーをカウンターに置き、
「豚丼大盛り、豚汁に変えて下さーい」
そう言って中に入る女将さんを見ると、女将さんはニカッと笑って
「ねね、あの子―・・・・格好良いよね?松さんが言ってたけどものスッゴイ・・・真面目なんだってよぉ???イケメンだし!!」
って・・・・笑ってそう言ってくるの。
女将さんは私の母の幼馴染で、松さんというのは・・・・真也君が働いている牧場で若い子達に仕事を教えている超元気なお婆ちゃん。
多分80半ばくらいかな??
あの牧場は春になると解放され、子供たちが乗れるポニーのコーナーやモルモットやうさぎちゃんも沢山飼っていて、近所の子供達が良く遊びに行ったりお世話を手伝ったりと・・・結構色々やっている牧場。
観光シーズンは牧場で作っているチーズやアイス、ヨーグルトの販売も始まって奧の広場ではバーベキューもやる。
うちの明もあの牧場が大好きで、少し前に子牛が生まれるって教えてもらった時に夜見に行ったっけ。
「ねー・・・若くてイケメンで、富良野の牧場で働いてるなんて不思議ー・・・」
私がそう言って笑うと、近くのテーブル席に座っていた農家の人達がゲタゲタ笑って
「わっ・・失礼だなぁ~由美ちゃんはー!それって富良野にはイケメンが居ないって事ー??」
と・・・テーブル席に座る、まだ20代か30代か・・・元気な若者たちが笑った。
私は振り返って、
「あーー・・・こんな所に富良野のイケメンがいっぱいいたー!!!」
そう言って笑うの。
ここは・・・東京都は全く違って・・・人との繋がりがかなり大事で、1人では絶対生きていけない場所。
そういうのが嫌いだって言う人も多いかもしれないけど、・・・私も得意ではなかったけどね・・・でも・・・。
ここに来て、人って温かいって・・・久しぶりに思ったの。
東京でも友達も居たし、会社の人も・・・飯田社長も皆良い人だった。でも、こういう人の温もりって忙しくしていると感じにくくなってて・・・だからここに帰ってきた時に少しホッとしたの。
後は、男の人に対して。
私はもう無理に男の人と関わらない・・・そう思った。
心の奥のずーっと奧・・・。
達也君が居るんだけど、でも・・・それはそこにそっと置いておきたい。
もう触れたくないし、全てを忘れたい。
だから、真也君が来て他愛もない会話をしたり、近所の農家さんや牧場の若者が来て楽しく笑ったり・・・明の幼稚園のママ友と笑ったり・・・それだけで私は十分。
もう何も要らない。
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