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プロローグ

転生

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 私は自身の人生は終わったと思った。
 いや、今でも思っているがなぜか暗闇の中で浮いている浮遊感や意識がある。体は動かせるっぽいけどね。
 私がそう思っていたら急に辺りが明るくなり、視界には庭園のような風景が広がっている。目の前には美しいナイスバティな女性
 どういうこと?綺麗だけど。うらやましいプロポーションだけど。ミーさんに言ったら、また呆れられそうだけど。
 あ、そういえば浮遊感なくなってる。
≪ここは時空のはざま。私たちが暮らす場所です。私はアステリアといいます≫
「アステリアさん?なぜ、私はここに?」
≪それはですね、あなたに異世界転生の権利が発生しているからです≫
「い、異世界転生?!」
 なんでまた?
 いや、別に嫌ではない。
 大変そうではあるが楽しそうでもある。
 まぁ、どうなるのか予測できないのは生前と変わらないだろうが。
≪転生先は決まっていますが、ここではあなたの姿と能力を決めます≫
「人以外の存在なる可能性もあると?」
≪はい、その通りです≫
 わかった、理解した。
 私が頷くとアステリアさんは手を1つ叩いた。
 すると大きなスロットマシンみたいなのが現れた。
 違和感バリバリだよ。
≪これで種族を決めます。それにより身体を再構築します≫
 なるほど、身体を再構築ね……種族が変わる可能性があるんだから仕方ないよね。
 私がスロットマシンの近くに来ると、アステリアさんは優しく微笑んだ。
≪では、このスイッチを押してください。もう一度押したら止まって、決まります≫
 私がスイッチを押すと画面が回転を始めた。
 マジスロットだよ。
 もう一度スイッチを押したら止まった。
 なに?この半球体は?
≪……これは、スライムですね≫
「え?ええーーっ!」
 私は驚きのあまり大きな声を出してしまった。
 アステリアさんも何とも言えない顔をしていた。
≪すみません。一回だけですので、変更は効きません≫
「はい」
 私は項垂れた。
 まさか、最弱判定のスライムになるとは。
 仕方ないけどね。まぁ、運が悪かったと思ってしっかりと生きよう!
≪それでは次に能力を決めます≫
「それはどうやって決めるの?」
≪これがスライムでの習得可能スキルになります。ですが、必ず習得できるわけではありません≫
「可能なだけなのね」
≪はい≫
「分かったわ。とりあえず、見せてもらうわね」
≪はい。質問があればどうぞ≫
「ええ」
 これが習得可能スキルなのね。
 ただ見るだけではよく分からないものもあるわね。
 やっぱり痛いのは嫌だね、痛覚がないと困ることも多いけど、痛いのは普通に嫌。
「痛みが少ない方がいいなぁ~。できれば、無しの方がもっと良いけど」
≪それでしたら物理攻撃無効ですね。確認……習得出来ました。併用して痛覚無効も習得出来ました≫
「あ、はい」
 痛覚なくなったよ。まぁ、痛いの嫌いだしいいけど。
 あとは暑いのや寒いのって辛いよね。
 気温変動に耐える感じ?
「暑いのや寒いのに耐えられる方がいいなぁ」
≪でしたら、熱耐性と寒耐性ですね。両方とも確認……習得しました。あ、熱耐性・寒耐性を習得したことにより熱変動耐性に進化しましたね≫
「熱変動耐性?」
≪はい。寒暖だけでなく、攻撃も対応しますね≫
「それはすごい!そういえば、スライムって擬態とかできるの?」
≪出来ますよ。固有スキルで自己再生・擬態・吸収・分解・分離があります。擬態時は無性ですね≫
「む、無性?!」
 そ、そんな!それは嫌!
 誰かを好きになっても私がそれを気にしそうで嫌だ。
 まぁ、誰かを好きになるかはわからないけどね。
 私も女なんだから誰かと恋愛したいよ、いくら年彼氏いない歴=年齢の腐女子でもね。
「じゃ、じゃあ、上書きは出来る?性別とか。無性は嫌だよ~」
≪性別変換ですか?あ、ありますね。確認……習得しました。擬態時望みの性別に変更できます、望みがない際は無性となります≫
「よ、よかった~」
 無性生物にならなくて良かった、本当に良かった。
 いや、私にも人並みに結婚願望も子育て願望もあったから普通に恋愛をしたい。
「いろいろ知識がほしいなぁ。私の生きていた世界と違うんだろうから」
≪そうですね。思考加速とか、演算加速などのことですね≫
「はい。できれば、鑑定みたいな能力も欲しい」
≪それでしたら上位スキル『知識者』に該当しますね。確認……習得しました。あ、固有スキルにある擬態は性能上昇するので『知識者』に移行されました≫
「おお!」
 名前がすごいな『知識者』って。擬態の性能も上がったのか、どんな感じになったのだろう、何だか楽しみだ。
「ねぇ、魔法って使えるの?使えるんなら使ってみたい」
≪はい、次の世界には魔法もありますよ≫
「そうなんだ。使ってみたいなぁ。火と水が使えたら生活にも困らなそうだし」
 魔法は良いなぁ~。憧れだよね~。
 あ、そうだ、状態異常にも強くないと!
 危ない、危ない。
「ああ、そうだ。毒や麻痺にも強くできない?麻痺で身体が動かないのも、毒でじわじわ蝕まれるのもゴメンだよ」
≪分かりました。魔法は元素魔法(火・水)に該当しますし、攻撃スキルの火炎弾・水砲をも習得可能ですね。確認……習得しました。これにより炎化及び炎熱操作及び水操作も習得しないといけませんね。確認……習得しました。続いて毒耐性・麻痺耐性ともに確認……習得しました≫
「うう~んと、元素魔法って何?それに攻撃スキルと魔法って違うの?一緒のような気がするんだけど?」
≪攻撃スキルは水や剣など現存するものを使用して攻撃する、もしくはその力を上昇させるスキルですよ。魔法は魔素・魔力を使用するスキルですね。元素魔法とは自然界に存在する四大元素(火・水・風・土)を使用する魔法です。また使用し続けることにより魔法スキルは使用技が増え、性能が上がります。攻撃スキルは性能のみが上がります≫
「なるほど物理的攻撃と元素的攻撃ということ?」
≪はい、大まかにはそのような認識で大丈夫です≫
 このやり取りもこれで終わりかな?
 後はどうにかなりなりそうだし。
「これくらい?」
≪そうですね、これで終了です。これより転生を開始します≫
「うん、ありがとう」
 このまま人生終わりだと思っていたから正直、嬉しいよね。
 頑張って第二の人生を楽しんでいこう。
 私はアステリアさんにお礼を言いながら沈んでいった。そう沈んでいったのだ。というより急降下……落下しているのだ。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!落下は、絶叫系は苦手なのよーーーーーー!!飛行楽しみだけどこれは怖いよーーー!」
≪仕方ありませんね。急降下・急上昇恐怖耐性を確認……習得しました。これで自力での飛行時の恐怖を軽減しますよ……まったく世話が焼けますね≫
 恐怖を軽減してくれてありがとう!
 でも、呆れないでよ!
 怖いものは怖いんだから!
 そして、私は転生場所に送られた。その際に新しく体が構築されるようだ。
 これが私の第二の人生の始まりだった……スライムとしての。

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