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第一章

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アイリスが本日の勉強を終えて、温室でゆっくりしているとカイルがやって来た。

「カイル様」
「アイリス、今日の勉強は終わったのかい?」
「はい、今日は作法やマナーを習いました」
「そうかい。それは大事なことだから頑張らないとね」
「はい」

カイルはアイリスの額にキスをして、いつものように抱き抱えるように座った。
カイルはどこか機嫌良くアイリスに抱きついている。
尻尾も嬉しそうに振られている。
アイリスは不思議そうに尋ねた。

「カイル様、ご機嫌ですか?」
「ああ、まぁね。アイリス」
「はい?」
「明日は勉強はお休みだろ?」
「はい。お休みです」
「ピクニックに行かないかい?泉のある広場があってね、この時期は色んな花が咲いているんだ」
「まぁ!それはいいですね!」
「みんなで行かないかい?」
「行きたいです」

アイリスは満面の笑みだった。
アイリスは以前読んだ絵本の中に色んな花が咲き誇る泉の挿し絵を思い出した。
それはアイリスのお気に入りの絵本の1つだった。
それが現実に見れるなんて嬉しいと思ったのだ。

「よし。それじゃあ、明日はピクニックだね」
「はい」

こうして、急遽ではあったがヴァルファス公爵家はピクニックに行くことになった。

カイルはその場にいた侍女の1人に厨房や使用人たちに言うように伝えた。

「そういうことだから、シェフたちには明日の昼はピクニック用のお弁当を用意するように伝えてくれ」
「はい」
「それから何人かは同行するように編成してくれ」
「わかりました」
「頼んだ。では、アイリス」
「はい?」
「父上や母上に話に行こう。二人とも喜ぶだろう」
「はい!」

カイルはアイリスをエスコートしながら、両親が居るであろう図書室に向かった。
伝令に向かった侍女以外は一緒に着いてきていた。

カイルの予想通り、ルドルフとリリーシア夫人は仲良く図書室にいた。
二人に気付いたルドルフとリリーシア夫人は微笑んで迎えてくれた。

「あらあら、カイルにアイリスちゃん」
「どうしたんだ?温室の方にいたのでは?」
「リリーシアお義母様、ルドルフお義父様!」

アイリスは小走りになりながらリリーシアのもとに向かい、抱きついた。
リリーシア夫人もそれを嬉しそうに抱き止めている。

カイルとルドルフはそんな二人に苦笑した。
義理の母娘おやこの仲は良好のようだ。

「いえ、実は提案がありまして」
「「提案?」」
「はい」
「ピクニックに行きませんか?」

カイルが言葉にする前に待ちきれないと言う風にアイリスが瞳をキラキラさせながら尋ねた。
それを微笑ましく思いながらもカイルは苦笑していた。

突然ピクニックを提案されたルドルフとリリーシア夫人は首を傾げた。

「ピクニックかい?」
「はい。昔よく行ったあの泉の辺りです。この時期は色んな花が咲き誇るので」
「それはいい提案だわ!」
「なるほど、確かにそんな時期だったな」
「休憩がてらどうですか?」
「リリーシアお義母様、ルドルフお義父様、行きませんか?」

リリーシア夫人とルドルフは少し考えて頷いた。
アイリスが来て、ナーシェル子爵家と縁切りをし、裁判を経て、現在は落ち着いているとはいえ、全員が仕事や勉強等でなかなかゆっくりと出来なかった。

それがやっと落ち着いてきたのだ。
そして、ちょうど頃合いよく花が咲き誇る泉がある。
家族の仲を深める良い機会だ。

「では、明日はピクニックだね」
「はい!」
「そうですわね!」
「決まりだね」

こうして、ヴァルファス公爵家は急遽ではあったがピクニックに行くことになった。


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R3/3/16

誤字訂正しました



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