冷遇されている姉は夢を見る

１

アルティドール公爵家には双子の令嬢がいる。

妹のマリアンナは蝶よ、花よと大事に育てられた。
彼女の望むものは大概の物が手に入った。

しかし、姉であるリリィシアはおおよそ令嬢とは言えない生活を強いられていた。

リリィシア自身が令嬢であると認識できないほどに、両親を親と思えないほどにリリィシアの生活は最低だった。

マリアンナが広く煌びやかな自室があるのに対して、リリィシアは地下の荷物置き場で捨てる間際の薄い毛布を巻くことしか許されていない。

マリアンナが望めばいくらでもドレスを仕立てられるのに対して、リリィシアは使用人たちが使い古した服を与えられるだけだ。

マリアンナは専任侍女がおり、彼女たちに支度をしてもらい、ある程度の学とマナーを学び、それ以外は自由に我が儘も許されている。

それに対してリリィシアは学もマナーを学ぶことも許されず、朝誰よりも早く起きて水を汲み、食事の下準備をし、屋敷中の掃除をしなければならない。

リリィシアは使用人からも見下され、仕事を押し付けられることも多々ある。

マリアンナが望む食事も、お茶も、お菓子もすぐに出てくるのに対して、リリィシアは食事もろくに与えられておらず、髪は傷み、肌は荒れ、体は骨が見えるほど痩せており、途中で成長が止まったように背は低い。

このように二人には雲泥の差があるが、リリィシアは貴族名鑑にも載るように公爵家の正式な令嬢なのだ。

それを両親が思い出したのは王宮で行われたパーティーの席だった。