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第十二章 動き始めた……○○フラグ
犯した罪は忘れない……けど、悩んでるだけでは前に進めない
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「ごきげんよう! ソフィア様」
朝、学園に向かうため寮から出ると、にこやかに微笑んで軽くお辞儀をするクロエ様……女性の姿で立っていた。
アイリスはクロエ様の姿を見るなり、一歩下がって頭を下げた。
昨日、クロエ様が私を寮まで連れてきてくれたんだっけ。
「あ……っ」
お礼を言おうと口を開こうとしたが、クロエ様と目が合った瞬間に泣きそうになり、咄嗟に口を抑えた。
「遅刻してしまいますよ。参りましょうか」
クロエ様は何も言わない私に嫌な顔をせずにそっと私の手を握って優しく微笑んだ。
「今日はソフィア様と親睦を深めたくて女性の姿で逢いに来ました」
歩きながらもずっとクロエ様は話している。「今日のご飯はなんですか?」「好きな動物はなんですか?」とか他愛ない話をしてくる。
きっとクロエ様なりに気遣ってるのかもしれない。
女性の姿をしてるのは私が話しやすいように。昨日の話をしないのは私が辛そうにしているからだろう。
「クロエ様……、女性の姿で学園内を歩いても大丈夫なのですか?」
ようやく出た言葉が、それだった。
一番最初に言わないといけないのはそんな言葉じゃない。
それなのに、クロエ様は目を輝かして私を見た。
「問題ありません。病弱なクロエの双子の妹という設……、理由で入学手続きは済ませてありますから」
今、設定って言おうとしてたような……。
「…………今日、時間を作るか聞きたかったのですがそれどころじゃないみたいですね」
「えっと……」
オドオドしていたら、クロエ様に両手で私の頬を包まれたと思ったらコツンっと額にクロエ様の額が当たった。
「……おまじないです。また、可愛らしい笑顔を向けてくれますように」
「クロエ様」
クロエ様の優しさに泣き出しそうになったら背後から声が聞こえた。
「仲が良いね。キミ達は」
ニコッと微笑んだのはアレン王太子殿下。気のせいだろうか、笑顔なのに眉間に皺を寄せて肩が震えてる……?
冷静さを装っているけど、走ってきたように息を切らしてる?
「はい。わたしとソフィア様は友人ですから」
「…………そうか。キミは……クロエ殿の双子の妹だったよね。身体が弱くて休んでるって聞いたけど」
「はい。今日は調子が良いようなので」
「無理そうなら医務室で休むといい。倒れられたら心配する子がいるからね」
殿下は私をチラッと見て、すぐにクロエ様の方を見る。
「肝に銘じておきます」
クロエ様は軽くお辞儀をした。
「ソフィア嬢、昨日の夜にノア殿から連絡があったんだ。ソフィア嬢にも連絡しようとしたら繋がらなかったと言われたけど体調が悪かった?」
殿下は息をはいて、私を見た。急に名前を呼ぶものだから返事が裏返ってしまった。
恥ずかしさを誤魔化すために一回咳払いをして再度返事をした。
「すみません。昨日はいろいろありまして……、連絡に気付きませんでした。ノア先生からのご要件は?」
「それは後日、改めて伝えるよ。それだけ伝えたかったのと、ソフィア嬢の顔を見たくなったから探してたんだ」
「?? 顔なら共同授業の時に顔を会わせますのに。今日も何回か会うはずですよ?」
「ああ……うん、そうなんだけどね。そういうことではなくてね」
クラスは別々だけど、何回かクラスが一緒になって授業を行う。
その時に顔を会わせると思うんだけど、殿下は何を伝えたいんだろう?
殿下は息をはいて、ボソッと「……婚約者だったら、こんなまどろっこしく口説かないんだけどな」と呟いた。
私は、呟いた言葉がうまく聞き取れなくて首を傾げた。
「……俺はこれで失礼するよ」
私と目が合うと殿下は深いため息をして、その場を離れる。
殿下の姿が遠のくまで私とクロエ様は頭を下げた。
頭を上げると、クロエ様は話し出した。
「……何も殿下直々に伝えなくても」
「王太子殿下は、ソフィア様の事が余程気になるようですね」
「友人、ですからね」
「そうなんですね。では、俺とも仲良くしてくれると有難いのですが」
「え!?」
「あなたの友人にしてください」
「え、えっと……友人って頼んだからなるようなものなのですか?」
「それはその時の状況にも寄るかと」
「優しいんですね。私と友人になってくださるなんて」
「俺はソフィア様だから友人になりたいんです。優しさだからではありません」
そもそも私は……友人になっていても良いのだろうか。
友人になる資格はないというのに……殿下もクロエ様も……優しいな。
私が人を殺しているのを知っているのに。
それは同情から? それとも国のため? 私の中に爆弾(闇属性)があるから……?
どんな理由にしろ、今の私には言葉一つ一つが棘のように突き刺さりその全てが責められてるような……そんな感情になってしまうんだ。
「あの……クロエ様」
「ん?」
言いづらそうにクロエ様を見ると、クロエ様は優しく微笑んでいてくれた。
その笑顔が胸に突き刺さる。
前世では友達がいなかった。今世でも友達が出来るはずないと思っていた。
だからこそ、友達と言ってくれる人たちを大切にしたいと思う気持ちとそれは本心からなのか、分からないという疑心暗鬼の気持ちが同時に押し寄せて恐怖へと変わっていく。
ーーダメだよね、私。
私は、自分の胸に手を当てた。
「友人としてお願いがあるのです」
その声はとても震えているのが自分でもわかる。緊張しているんだ。
緊張しすぎてうまく言葉が出てこないので大きく深呼吸して、一旦落ち着かせる。
よし、言うぞ! っと、意気込んだ。
「乙女ゲームのことを語りたいのです!」
「…………は?」
言い切った!!
と、満足そうにクロエ様を見ると、ポカンと口を開けているクロエ様と目が合った。
前世と今世をいろいろと考えてて思ったの。うじうじと悩むより、一回頭をリセットしてもう一度考える。
私の犯した罪は忘れてない。けど、悩んでるだけだと前に進めない。
……一人で考えるよりも私のことを理解している(転生者だと知っている)人に相談した方が第三の答えが見つけられるかもしれない。
だって、心配させてるのがわかるもん。……申し訳ないと思うし、これ以上は心配かけたくない。
きっと殿下も私が落ち込んでるのを見て急いで声をかけたんだろうから。
優しくて涙が出そう。でも、優しくするなら好きな人だけに優しくした方が良いとは思うけどね。勘違いしちゃうじゃん。
私なんかのために自分の時間を削ってまで優しくなんてしないでほしい。
「なるほど。そう来るのか……」と、クロエ様は口に手を当てながら呟いたと思ったら私を見て、言った。
「良いですよ。他でもないあなたのお願いですからね」
良かった、断られなかった。そう思って私は安堵した。
前に決意したことを思い出した。
ーーネガティブ思考は私の悪い癖。
だから少しずつ直していこうと。再度決意した。
朝、学園に向かうため寮から出ると、にこやかに微笑んで軽くお辞儀をするクロエ様……女性の姿で立っていた。
アイリスはクロエ様の姿を見るなり、一歩下がって頭を下げた。
昨日、クロエ様が私を寮まで連れてきてくれたんだっけ。
「あ……っ」
お礼を言おうと口を開こうとしたが、クロエ様と目が合った瞬間に泣きそうになり、咄嗟に口を抑えた。
「遅刻してしまいますよ。参りましょうか」
クロエ様は何も言わない私に嫌な顔をせずにそっと私の手を握って優しく微笑んだ。
「今日はソフィア様と親睦を深めたくて女性の姿で逢いに来ました」
歩きながらもずっとクロエ様は話している。「今日のご飯はなんですか?」「好きな動物はなんですか?」とか他愛ない話をしてくる。
きっとクロエ様なりに気遣ってるのかもしれない。
女性の姿をしてるのは私が話しやすいように。昨日の話をしないのは私が辛そうにしているからだろう。
「クロエ様……、女性の姿で学園内を歩いても大丈夫なのですか?」
ようやく出た言葉が、それだった。
一番最初に言わないといけないのはそんな言葉じゃない。
それなのに、クロエ様は目を輝かして私を見た。
「問題ありません。病弱なクロエの双子の妹という設……、理由で入学手続きは済ませてありますから」
今、設定って言おうとしてたような……。
「…………今日、時間を作るか聞きたかったのですがそれどころじゃないみたいですね」
「えっと……」
オドオドしていたら、クロエ様に両手で私の頬を包まれたと思ったらコツンっと額にクロエ様の額が当たった。
「……おまじないです。また、可愛らしい笑顔を向けてくれますように」
「クロエ様」
クロエ様の優しさに泣き出しそうになったら背後から声が聞こえた。
「仲が良いね。キミ達は」
ニコッと微笑んだのはアレン王太子殿下。気のせいだろうか、笑顔なのに眉間に皺を寄せて肩が震えてる……?
冷静さを装っているけど、走ってきたように息を切らしてる?
「はい。わたしとソフィア様は友人ですから」
「…………そうか。キミは……クロエ殿の双子の妹だったよね。身体が弱くて休んでるって聞いたけど」
「はい。今日は調子が良いようなので」
「無理そうなら医務室で休むといい。倒れられたら心配する子がいるからね」
殿下は私をチラッと見て、すぐにクロエ様の方を見る。
「肝に銘じておきます」
クロエ様は軽くお辞儀をした。
「ソフィア嬢、昨日の夜にノア殿から連絡があったんだ。ソフィア嬢にも連絡しようとしたら繋がらなかったと言われたけど体調が悪かった?」
殿下は息をはいて、私を見た。急に名前を呼ぶものだから返事が裏返ってしまった。
恥ずかしさを誤魔化すために一回咳払いをして再度返事をした。
「すみません。昨日はいろいろありまして……、連絡に気付きませんでした。ノア先生からのご要件は?」
「それは後日、改めて伝えるよ。それだけ伝えたかったのと、ソフィア嬢の顔を見たくなったから探してたんだ」
「?? 顔なら共同授業の時に顔を会わせますのに。今日も何回か会うはずですよ?」
「ああ……うん、そうなんだけどね。そういうことではなくてね」
クラスは別々だけど、何回かクラスが一緒になって授業を行う。
その時に顔を会わせると思うんだけど、殿下は何を伝えたいんだろう?
殿下は息をはいて、ボソッと「……婚約者だったら、こんなまどろっこしく口説かないんだけどな」と呟いた。
私は、呟いた言葉がうまく聞き取れなくて首を傾げた。
「……俺はこれで失礼するよ」
私と目が合うと殿下は深いため息をして、その場を離れる。
殿下の姿が遠のくまで私とクロエ様は頭を下げた。
頭を上げると、クロエ様は話し出した。
「……何も殿下直々に伝えなくても」
「王太子殿下は、ソフィア様の事が余程気になるようですね」
「友人、ですからね」
「そうなんですね。では、俺とも仲良くしてくれると有難いのですが」
「え!?」
「あなたの友人にしてください」
「え、えっと……友人って頼んだからなるようなものなのですか?」
「それはその時の状況にも寄るかと」
「優しいんですね。私と友人になってくださるなんて」
「俺はソフィア様だから友人になりたいんです。優しさだからではありません」
そもそも私は……友人になっていても良いのだろうか。
友人になる資格はないというのに……殿下もクロエ様も……優しいな。
私が人を殺しているのを知っているのに。
それは同情から? それとも国のため? 私の中に爆弾(闇属性)があるから……?
どんな理由にしろ、今の私には言葉一つ一つが棘のように突き刺さりその全てが責められてるような……そんな感情になってしまうんだ。
「あの……クロエ様」
「ん?」
言いづらそうにクロエ様を見ると、クロエ様は優しく微笑んでいてくれた。
その笑顔が胸に突き刺さる。
前世では友達がいなかった。今世でも友達が出来るはずないと思っていた。
だからこそ、友達と言ってくれる人たちを大切にしたいと思う気持ちとそれは本心からなのか、分からないという疑心暗鬼の気持ちが同時に押し寄せて恐怖へと変わっていく。
ーーダメだよね、私。
私は、自分の胸に手を当てた。
「友人としてお願いがあるのです」
その声はとても震えているのが自分でもわかる。緊張しているんだ。
緊張しすぎてうまく言葉が出てこないので大きく深呼吸して、一旦落ち着かせる。
よし、言うぞ! っと、意気込んだ。
「乙女ゲームのことを語りたいのです!」
「…………は?」
言い切った!!
と、満足そうにクロエ様を見ると、ポカンと口を開けているクロエ様と目が合った。
前世と今世をいろいろと考えてて思ったの。うじうじと悩むより、一回頭をリセットしてもう一度考える。
私の犯した罪は忘れてない。けど、悩んでるだけだと前に進めない。
……一人で考えるよりも私のことを理解している(転生者だと知っている)人に相談した方が第三の答えが見つけられるかもしれない。
だって、心配させてるのがわかるもん。……申し訳ないと思うし、これ以上は心配かけたくない。
きっと殿下も私が落ち込んでるのを見て急いで声をかけたんだろうから。
優しくて涙が出そう。でも、優しくするなら好きな人だけに優しくした方が良いとは思うけどね。勘違いしちゃうじゃん。
私なんかのために自分の時間を削ってまで優しくなんてしないでほしい。
「なるほど。そう来るのか……」と、クロエ様は口に手を当てながら呟いたと思ったら私を見て、言った。
「良いですよ。他でもないあなたのお願いですからね」
良かった、断られなかった。そう思って私は安堵した。
前に決意したことを思い出した。
ーーネガティブ思考は私の悪い癖。
だから少しずつ直していこうと。再度決意した。
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