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一章 終わりから始まりへ

確かにスライムは可愛らしいです。ですが

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「何? ドワーフに会いに行きたいだと」
「はい」

 場所を移し、執務室のソファーでテーブルを挟んだ向かい合わせに座って話をしている。

 廊下でも良かったんだけど……なんだか落ち着かないんだよね。

 やっぱり見慣れないせいかも。

 今いる執務室も個性的すぎるけど、それだって一度目の人生で友人の部屋がアニメのグッズだらけなのを見ているからなのか、普通に受け入れられた。

 この執務室なんて……特注で作られたであろうスライムのぬいぐるみやカーテン、さらに彫刻の置物とかスライムだらけ。

 ここまでスライム好きなら、私の髪がスライム似だからという理由で溺愛するのも肯け……いや、おかしいよね。

 好きになる要素が一個もなかったじゃん。

 考えれば考えるほど、謎ね。

 そういうのをって言うんだろうけど。

 クリムは深く息を吐く。

「良いだろう、但しわたしも着いていくとしよう。だが……オリビアは今、死んだ人間になっている。変装が必要だろう」

「少し待っていろ」と言ってクリムは執務室を出ていく。
 なんだろう……ものすごく嫌な予感がする。

 ただ、説得に時間がかかると思ってたけどすんなりと話が進むのは、髪のおかげなのかも。

 なんて、髪の毛に感謝する日が来るとは思わなかった。

「待たせたな」

 しばらくしてから戻ってきたクリムの手を見て絶句した。

 思わず震える指でクリムの手を指さしてしまった。

「こ……これ……」
「おお!!! わかるのか、流石オリビアだ。これはだな、ドワーフ族に特別に作らせた『着ぐるみ』というやつでな」

 目をキラキラさせて説明してきた。

 こいつ、マジか。

「着た者は本人だと気付かれない優れものだ。どうだ、これを着てみないか?」

 そう、クリムの手に持っていたものとはスライムの着ぐるみだった。

「たまに私も着ているが誰にも気付かれないんだ」

 こいつ、マジか。(本日二度目)

 気付かれないんじゃなくて、んだよなぁ。

 私もクリムが着ぐるみを着ているのを見たことあるけど普通にわかったもん。

 それを本気で誰にも気付かれないと思っているのかぁ。

 ただ、断るにしても……クリムが純粋な瞳がキラキラさせているから断りにくい。

 着ていくと絶対に違う意味で目立つのは目に見えている。

「き、気持ちはありがたいのですが……私は着ぐるみよりも普通にフードを深く被ってるだけで良いですよ」
「そう言うと思って、フードバージョンも用意した!!」

 なんでだよ!!

 可愛いけどね、可愛いんだけども。

 クリムには申し訳ないけど、目立つのはどうしても避けたいのよ。

「あの、。確かにスライムは可愛らしいです。ですが、外で着てしまうと汚れたりしますでしょう? 可愛いスライムを着て外に行くのは気が引けてしまいます。なので私は普通のフードでも大丈夫ですよ。スライムのような色に近い髪はひとつに結び、フードからはみ出さないように気をつけます」

 ニコッと微笑みながら宥めると、クリムは頬を赤く染め、「うむ。ではそうしよう」と言って納得してくれた。

 上手く誤魔化せたことに私は胸を撫で下ろした。

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