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一章 終わりから始まりへ

他人の空似だ

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「全く、悪趣味なものを造る」

 クリムは動きが止まったドラゴンを見上げた。

 私もそれは同意する。

「ドワーフは何かを造り上げることが喜びであり、誇りでもあるみたいです。発想が斜め上になってますが、かなり腕は良いです」
「だから、ドワーフ村に来たのだな」
「はい」

 クリムは何かと察しが良い。きっと私が来た目的も理解したのだろう。

 私は行く理由を話していなかった。それなのに許可してくれた。

 それは信じているからなのか、それとも……何か別の理由があるかのどちらかだなと思う。

「あ……」

 私は口を開こうとしたが、拍手が室内にやけに響く。

 拍手がした方へクリムと私は視線を向ける。

「すっごいねー。結構自信作だったのに」

 ハイトーンボイスのような高めな声。薄暗い廊下から姿を現したのは、ドワーフ族の長だった。

 外見に似合わない幼い声とのギャップで笑いそうになってしまう。が、怒られるだろうからグッと我慢する。

 クリムも私と同じことを思ったのか、口元に手を当てて肩を小刻みに震えている。

 そのことに気付いた長が怪訝そうな顔になった。

 だが、クリムが何者なのか気付いたのか顔を青ざめて膝をついた。

 いや、土下座のようになっている。

 地面に額を擦り着けそうな勢いだ。

「こ、これは魔王様ではありませんか!!! こんな辺境の地に足を踏み入れてくださるとは、感激でございます!!」

 フードを被せるタイミングを逃してしまった私は、額に手を当てた。

 こうなるからフードを取らないように念押ししたのになぁ。

「…………いや、わたしは魔王ではない」

 笑いを堪えながらも否定するクリム。

 何を言い出すのかと思えば、すぐに分かる嘘をつかなくても。

「知っているか? この世には同じ顔が三つ存在する。わたしはその一人ということだ。わたしが魔王というのなら存在感があるはずなのだ。お前から見て、わたしは存在感あると思うのか?」

 なんかめちゃくちゃ言い始めたんだけどぉぉぉ!!!

「存在感あると思うのですが……白髪は珍しいので」

 長、わかってるね。ご最もよ。

「他人の空似だ」

 無理があるってー! もうやめて! 恥ずかしいから!!!

「……それは確かに。では貴方様は魔王様では……無いので?」
「だからそう言っているだろう」

 信じるのか……。ドワーフ族の長はそのうち詐欺に合いそうで心配。

 それにしても、なんで急にクリムは嘘なんて。

 心配そうにクリムの顔を覗き込むと、クスッと笑って呟いた。

「……オリビアがそう望んだのであろう?」

 確かに身バレすると面倒だと言ったけども。

 惚れた弱みね。なんで好きになっちゃうのかなぁ。

 そんなこと言われたら怒れないじゃない。

 顔がニヤけちゃう。しっかりしろ、私。

 ニヤける顔を整えるように両手で頬に添え、ドワーフ族の長を見る。

 土下座をやめた長は深いため息をして、動かなくなったドラゴンの脚にそっと手を当てる。

「これ、造るのに三年以上かかったのになぁー。完全には壊されなかったけど、せめてさぁ、手加減というものを……ブツブツ」

 ボソボソっと愚痴り始めたので、これは長くなる。

 前に来た時も私がうっかり壊してしまって、造りものに対する想いを十日間も言われ続けた記憶がある。

 これを避けるために壊さないでと言っていたんだけど、やってしまったことは仕方ない。

 私は魔法で収納した荷物の中にあるアイテムを取り出した。

 もしもの場合に備えて、



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