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一章 終わりから始まりへ
私は悪くない【かすみ(偽聖女)視点】
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私、丸山 かすみは中学二年生の冬に突然光に包まれて気が付くと異世界のような場所に居た。
突然すぎて、何が起こったのか理解するまで数分はかかった。
だって、気に入らない女をこの手で刺した瞬間に別の場所にいたのよ。動揺しない訳がないじゃない。
混乱している私の脳内に直接誰かが語りかけてきたのよね。
私は迷わずその声の言う通りにしたわ。
言葉一つ一つが魅力的だったんだもの。
なんて言うのだろう。私の中にスっと入ってきて、心地が良い。とても気分を良くしてくれた。
死んでいるであろう気に入らない女を見下ろす。そして、誰にも気付かれないように不敵に笑う。
異世界に召喚される前、私には都合のいい女がいた。
宿題をかわりにやってくれてたり、テストはカンニングペーパーを作成してもらっていた。万引き犯として捕まりそうになったら罪をかわりに被ってくれてたり。
私の嫌いなものを食べてもくれたりしたし、私がお金無いって泣きついたらパパ活もしてくれたっけ。
本当によく出来た妹……なんて、思うわけが無い。
困ってたら助けるのは当たり前だし、ましてや妹よ。姉の言う事は聞くべきよ。
まぁ、そのおかげで私は両親に信頼されている。
そのかわりに妹は出来の悪い厄介者と悪評がついちゃったけど、私のせいじゃ無いわよ。
勉強とかを疎かにするあの子が悪いのよ。私は何も悪くない。
だって、私はちゃんとあの子に謝ったもの。「ごめんなさいね。私の代わりになってくれて」って、それで許せなかったら、頭おかしいし、性格が悪いのよ。
異世界に召喚される数分前もそうだったのだから。
「もう、こんなの嫌だ。両親から蔑ろにされて、友達も放れていって……お姉ちゃんの評価だけ上がって……、その評価だって私が影で色々してたから得られた信頼じゃない!!」
「あら、それがどうしたの?」
自宅の私の部屋に涙を大量に流しながら怒っている妹に興味無さそうに私は椅子に座ってネイルをしていた。
嫌だって、笑えるじゃない。それを選んだのはあの子なのに。
「どうしたのって……、もうやめたいの」
「やめる……? なに言ってるの? 貴女の味方は私だけよ。友達なんてのは貴女の妄想よ。そんなものはいないの。可哀想な美琴。私が正しいの。だから、私だけに従っていればいいのよ」
間違っていないわ。これも美琴を想ってのこと。だって可哀想じゃない。
友達との交流が上手くいってるという妄想をしてて。美琴には私が必要なの。
私は、優しくて妹思いのお姉さんだから。
「それは違う。妄想じゃなかった! 私の友達関係も何も知らないのにどうして否定するの!? お姉ちゃんはいつもそうだよ。私の考えを否定して、自分の考えを押し付けてる。ちゃんと聞いてよ! 耳を傾けてよ」
妹の美琴は、涙を流して必死に訴えてる。
私はお腹を抱えて笑う。だって、可笑しいんだもの。
「はははっ! 何? まるで私が悪者みたいじゃない。私は貴女の為を思って言ってたのよ。姉の言うことを聞くのは当たり前じゃない。頭大丈夫? おかしいんじゃないの。美琴には両親の信頼もないの。私が両親を説得してあげたじゃない。その恩を仇で返すなんてね」
ネイルを中断して椅子から立ち上がり、妹の肩に手を置き、耳元で囁く。
妹は少し強ばった表情になる。それが可笑しくて鼻で笑う。
「ごめんなさいねぇ。でも、仕方ないわよねぇ。信頼が落ちてしまったのも悪評がついちゃって友達とも距離を置かれちゃうのも全て……貴女が招いた事よ」
「それは、お姉ちゃんのフォローしてたから」
「人のせいにしないでくれない。美琴がやりたいって言うから、やらせてあげただけよ」
何様よ。悲劇のヒロインのつもりかしら。
「私は……そんなこと言ってない。お姉ちゃんが『助けて』って言うから……放っておけなくて、助けてあげたくて……私がやったって主張したの」
ホント、カマトトぶっててムカつくのよ。自分は良い子ちゃんだとでも思ってるの?
妹のくせに勉強も運動も私よりも得意で、友人関係も良好だなんて私は信じない。そんなのは嘘よ。
それなのにどうして、両親からは良く妹と比べられていた。それがどんなに屈辱的だったか。
だから壊してやったの。
わざと万引きして、同情を誘って妹に擦り付けたり。パパ活だって、同情を誘ったわ。勿論、カンニングペーパーの作成もね。美琴はお人好しだから、困ってる人を見放せない性格してるのよね。
美琴から「私がやる」と、言わせ、行動してもらった。
私からは頼んでない。そうなると、私が悪いみたいになるじゃない。
自分の意思で行動したのだから、あの子の自業自得なのよ。
私は悪くないもの。でも、滑稽だったわ。美琴の絶望した顔。
気に入らない相手を陥れるのがこんなにも楽しいと思わなかった。
「お姉ちゃんは、人を追い詰めてそんなに楽しいの? 頭おかしいよ。私には理解出来ない」
「ふふっ。どうかしら……? そうそう、美琴が陰でなんて言われてるのか教えてあげましょうか」
私はわざとらしく囁く。もっと傷つく顔が見たくなったから、敢えて傷つくだろう言葉を選ぶ。
「我儘な性格ブス。ブタゴリラとかも言われていたわね」
「~~っ」
滑稽だわ。悔しそうに唇を噛んで、必死に泣きそうなのを我慢してる。
でも、嘘じゃないわよ。本当に言われていたもの。
「……もういい」
泣きそうな声で言う美琴は私の机にあったペン立てに入っているハサミを取り出して、自身の首元に向ける。
自殺しようとしていた。冗談じゃないわよ。それだと私が犯人になっちゃうわ。死ぬなら私に迷惑かからないように死ねよ。
「待ちなさい!」
咄嗟に私はハサミを奪い取ろうとしたら突然、床が光出した。
私と美琴は動揺した。突然の大きな地震。家具は大きく揺れ、棚に置かれた本は乱雑に倒れ、飾ってある写真も床に勢いよく倒れだした。
突然の出来事が続き、困惑しているとグサッという音が近くから聞こえた。
見ると、私の手にはしっかりとハサミが握られてあり、美琴の心臓に突き刺さっていた。真っ赤に染まる美琴の服と唇から流れ出している血。
地震が止み、光も段々と落ち着いてきた時には、私は異世界にいた。
異世界では、テンプレのような展開が待っていたわ。聖女を召喚し、魔王を討伐。
正直、ウザイ話だけど、聖女だと思われなくては命が無さそうだったのよね。だから仕方なく聖女になる事を決めた。
でもね、それが間違いだったみたいね。私の教育係にもなったオリビアという女は妹に似ている性格をしていた。
幸い、王宮で働くメイドもお貴族様も私の言う事を疑わずに信じてくれる馬鹿で助かったわ。
すんなりと虐められたもの。
この快楽がまた楽しめるなんて至福な時だった。それなのに、誰かが王様に毒を盛ったらしくオリビアが疑われたのよね。毒殺未遂だけど。
その疑いは晴れることなく処刑された。私は陥れてない。だったら無駄な正義感を持った誰かの仕業なのかもしれない。
だってオリビアは、誰からも嫌われてる存在なのだから。そう仕向けたのは私なんだけどね。
いい気味ね。けど、もう快感を味わえないのが名残惜しいのよね。
ああ……そういえば、虐めの提案してくれた人がいたのよね。誰だっけ。
思い出せないのだから、きっと対した人じゃないのかも。
以前に脳内に聞いた声と同じだった気もするようで、しないような……?
私は王宮の客間のソファーに座る。客間を寝室に使わせて貰っている。
思ってたよりも良い暮らしさせて貰ってるのよね。高級なドレスにアクセ、更には豪華な料理。本当にお姫様になったようで気分がいい。
これが魔王討伐さえなかったら良かったのにと何回も思ったけど。
コンコンっとノック音が聞こえ、入って来たのは地味めで印象に残らなさそうな子。
その子の提案があまりにも興味が湧いてしまい、勇者と一緒に魔王討伐に向かうことを決めた。
突然すぎて、何が起こったのか理解するまで数分はかかった。
だって、気に入らない女をこの手で刺した瞬間に別の場所にいたのよ。動揺しない訳がないじゃない。
混乱している私の脳内に直接誰かが語りかけてきたのよね。
私は迷わずその声の言う通りにしたわ。
言葉一つ一つが魅力的だったんだもの。
なんて言うのだろう。私の中にスっと入ってきて、心地が良い。とても気分を良くしてくれた。
死んでいるであろう気に入らない女を見下ろす。そして、誰にも気付かれないように不敵に笑う。
異世界に召喚される前、私には都合のいい女がいた。
宿題をかわりにやってくれてたり、テストはカンニングペーパーを作成してもらっていた。万引き犯として捕まりそうになったら罪をかわりに被ってくれてたり。
私の嫌いなものを食べてもくれたりしたし、私がお金無いって泣きついたらパパ活もしてくれたっけ。
本当によく出来た妹……なんて、思うわけが無い。
困ってたら助けるのは当たり前だし、ましてや妹よ。姉の言う事は聞くべきよ。
まぁ、そのおかげで私は両親に信頼されている。
そのかわりに妹は出来の悪い厄介者と悪評がついちゃったけど、私のせいじゃ無いわよ。
勉強とかを疎かにするあの子が悪いのよ。私は何も悪くない。
だって、私はちゃんとあの子に謝ったもの。「ごめんなさいね。私の代わりになってくれて」って、それで許せなかったら、頭おかしいし、性格が悪いのよ。
異世界に召喚される数分前もそうだったのだから。
「もう、こんなの嫌だ。両親から蔑ろにされて、友達も放れていって……お姉ちゃんの評価だけ上がって……、その評価だって私が影で色々してたから得られた信頼じゃない!!」
「あら、それがどうしたの?」
自宅の私の部屋に涙を大量に流しながら怒っている妹に興味無さそうに私は椅子に座ってネイルをしていた。
嫌だって、笑えるじゃない。それを選んだのはあの子なのに。
「どうしたのって……、もうやめたいの」
「やめる……? なに言ってるの? 貴女の味方は私だけよ。友達なんてのは貴女の妄想よ。そんなものはいないの。可哀想な美琴。私が正しいの。だから、私だけに従っていればいいのよ」
間違っていないわ。これも美琴を想ってのこと。だって可哀想じゃない。
友達との交流が上手くいってるという妄想をしてて。美琴には私が必要なの。
私は、優しくて妹思いのお姉さんだから。
「それは違う。妄想じゃなかった! 私の友達関係も何も知らないのにどうして否定するの!? お姉ちゃんはいつもそうだよ。私の考えを否定して、自分の考えを押し付けてる。ちゃんと聞いてよ! 耳を傾けてよ」
妹の美琴は、涙を流して必死に訴えてる。
私はお腹を抱えて笑う。だって、可笑しいんだもの。
「はははっ! 何? まるで私が悪者みたいじゃない。私は貴女の為を思って言ってたのよ。姉の言うことを聞くのは当たり前じゃない。頭大丈夫? おかしいんじゃないの。美琴には両親の信頼もないの。私が両親を説得してあげたじゃない。その恩を仇で返すなんてね」
ネイルを中断して椅子から立ち上がり、妹の肩に手を置き、耳元で囁く。
妹は少し強ばった表情になる。それが可笑しくて鼻で笑う。
「ごめんなさいねぇ。でも、仕方ないわよねぇ。信頼が落ちてしまったのも悪評がついちゃって友達とも距離を置かれちゃうのも全て……貴女が招いた事よ」
「それは、お姉ちゃんのフォローしてたから」
「人のせいにしないでくれない。美琴がやりたいって言うから、やらせてあげただけよ」
何様よ。悲劇のヒロインのつもりかしら。
「私は……そんなこと言ってない。お姉ちゃんが『助けて』って言うから……放っておけなくて、助けてあげたくて……私がやったって主張したの」
ホント、カマトトぶっててムカつくのよ。自分は良い子ちゃんだとでも思ってるの?
妹のくせに勉強も運動も私よりも得意で、友人関係も良好だなんて私は信じない。そんなのは嘘よ。
それなのにどうして、両親からは良く妹と比べられていた。それがどんなに屈辱的だったか。
だから壊してやったの。
わざと万引きして、同情を誘って妹に擦り付けたり。パパ活だって、同情を誘ったわ。勿論、カンニングペーパーの作成もね。美琴はお人好しだから、困ってる人を見放せない性格してるのよね。
美琴から「私がやる」と、言わせ、行動してもらった。
私からは頼んでない。そうなると、私が悪いみたいになるじゃない。
自分の意思で行動したのだから、あの子の自業自得なのよ。
私は悪くないもの。でも、滑稽だったわ。美琴の絶望した顔。
気に入らない相手を陥れるのがこんなにも楽しいと思わなかった。
「お姉ちゃんは、人を追い詰めてそんなに楽しいの? 頭おかしいよ。私には理解出来ない」
「ふふっ。どうかしら……? そうそう、美琴が陰でなんて言われてるのか教えてあげましょうか」
私はわざとらしく囁く。もっと傷つく顔が見たくなったから、敢えて傷つくだろう言葉を選ぶ。
「我儘な性格ブス。ブタゴリラとかも言われていたわね」
「~~っ」
滑稽だわ。悔しそうに唇を噛んで、必死に泣きそうなのを我慢してる。
でも、嘘じゃないわよ。本当に言われていたもの。
「……もういい」
泣きそうな声で言う美琴は私の机にあったペン立てに入っているハサミを取り出して、自身の首元に向ける。
自殺しようとしていた。冗談じゃないわよ。それだと私が犯人になっちゃうわ。死ぬなら私に迷惑かからないように死ねよ。
「待ちなさい!」
咄嗟に私はハサミを奪い取ろうとしたら突然、床が光出した。
私と美琴は動揺した。突然の大きな地震。家具は大きく揺れ、棚に置かれた本は乱雑に倒れ、飾ってある写真も床に勢いよく倒れだした。
突然の出来事が続き、困惑しているとグサッという音が近くから聞こえた。
見ると、私の手にはしっかりとハサミが握られてあり、美琴の心臓に突き刺さっていた。真っ赤に染まる美琴の服と唇から流れ出している血。
地震が止み、光も段々と落ち着いてきた時には、私は異世界にいた。
異世界では、テンプレのような展開が待っていたわ。聖女を召喚し、魔王を討伐。
正直、ウザイ話だけど、聖女だと思われなくては命が無さそうだったのよね。だから仕方なく聖女になる事を決めた。
でもね、それが間違いだったみたいね。私の教育係にもなったオリビアという女は妹に似ている性格をしていた。
幸い、王宮で働くメイドもお貴族様も私の言う事を疑わずに信じてくれる馬鹿で助かったわ。
すんなりと虐められたもの。
この快楽がまた楽しめるなんて至福な時だった。それなのに、誰かが王様に毒を盛ったらしくオリビアが疑われたのよね。毒殺未遂だけど。
その疑いは晴れることなく処刑された。私は陥れてない。だったら無駄な正義感を持った誰かの仕業なのかもしれない。
だってオリビアは、誰からも嫌われてる存在なのだから。そう仕向けたのは私なんだけどね。
いい気味ね。けど、もう快感を味わえないのが名残惜しいのよね。
ああ……そういえば、虐めの提案してくれた人がいたのよね。誰だっけ。
思い出せないのだから、きっと対した人じゃないのかも。
以前に脳内に聞いた声と同じだった気もするようで、しないような……?
私は王宮の客間のソファーに座る。客間を寝室に使わせて貰っている。
思ってたよりも良い暮らしさせて貰ってるのよね。高級なドレスにアクセ、更には豪華な料理。本当にお姫様になったようで気分がいい。
これが魔王討伐さえなかったら良かったのにと何回も思ったけど。
コンコンっとノック音が聞こえ、入って来たのは地味めで印象に残らなさそうな子。
その子の提案があまりにも興味が湧いてしまい、勇者と一緒に魔王討伐に向かうことを決めた。
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