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第13話

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 次に、関口さんに連絡してみる。
 結婚報告の葉書には、携帯の番号が書いてある。全く連絡取ってないのでかなりドキドキするけど、繋がれー!と思いながら番号を押す。
 
「もしもし。」
 ⁉︎
 電話に出たのは男の人だ。多分森丘くんだと思った。

「すみません私、横川千夏の旧姓と言いますが、森丘さんの携帯でよろしいでしょうか?」

「はい、森丘ですけど…」

「突然のお電話ですみません。私、24年くらい前に、東京の“マパドレ”でアルバイトしてた横川ですが、覚えていらっしゃいますか?」

「えー…あ、ああ、横川さん⁉︎はい、覚えていますが、どうしたんですか?何で、この番号?」

 驚くだろうなとは思ったけど、結構な反応だ。でも、覚えていてくれて良かったと思った。

「本当、すみません、驚きますよね。
 ちょっと関口さんに連絡取りたくて…。ご結婚されたと伺ったもので。
 た、大したことでは無いんですけど…。
いろいろありまして、元オーナーさんの所に行って結婚報告の葉書を見せていただいて、書いてあった番号にかけたんですが…。」
 かけた私もかなり緊張してるので、一生懸命説明するけど、しどろもどろで恥ずかしい。
 
「あ、そうなんですね…。あやの(関口さん)は今は仕事で一緒にはいないので、後でこの番号に掛け直すように伝えるのでもいいですか?」

 もちろん私は「はい」と伝え、電話が掛かってくるのを待つ。
 夜になって森丘くんの奥さんの関口さんから電話がかかってきた。

 私は簡単に事情を説明して、関口さんの都合のいい日に会いに行くことになった。電話でもよかったのかもしれないけど、久しぶりだし、そんな軽い話でもないので、会って話した方がいいと思ったのだ。
 森丘くんは卒業してから同じ会社に勤めていて、転勤とかもなくずっと関東圏にいるとのことで、近くはないけど電車でそう遠くない場所に住んでいる。近くて助かる。
 
 関口さんとは駅で待ち合わせて、24年ぶりの再会に歓喜した後、喫茶店に入り、事情を説明する。

「突然会いに押しかけてしまって、本当ごめんなさい。
 実は、電話でも簡単に説明したけど、大高さんの事を教えてほしくて。もし今、居場所か連絡先を知ってるなら教えて欲しいし、分からないなら知ってそうな人を紹介してほしくて…。
 私、アルバイトは一緒だったけど大学は違うじゃない?彼女が辞めた後、全然連絡取れなくて。あやのちゃん(関口さん)なら分かるかなと思って会いに来たの。」

「一応ね、千夏ちゃんから連絡あった後、分かりそうなもの探してみたよ。でもこんな20年以上経って連絡取りたいって、よっぽどの事情だよね?
 卒業する前の、たかちゃん(大高さん)の噂に関係あること?」

「うん…、多分、あやのちゃん(関口さん)が思ってることが正解。私今、山口に住んでるんだけど、そこでゲームのオフ会って言うのがあって、娘さんがそこに来てたんだと思うの。」

「そんな偶然て…⁉︎本当かなー?」

「私もまさかと思って。でも、なんか運命感じちゃって…。すっごく大高さんに会いたくなったの。
 ずっと気になってたし。」
 私は少し話をぼかして説明する。

「そっかー。そう言われると、私も会いたくなった。皆仲良かったもんね。
 バイト仲間って言っても、なんかサークルみたいでさ、楽しかったよね。
 で、連絡先なんだけど、卒業アルバムには実家の住所は書いてあるんだけど電話番号は無いのね。それと私の記憶では、確か実家には戻ってないはず…と思ったんだよね。で、葉書とか探したら一枚だけ来てたの!
 これ!」

 あやのちゃん(関口さん)はテーブルの上に、大高さんと小さい女の子2人で並んでる写真の年賀状を差し出す。小学校の入学式の写真のようだ。

「この子が…。」

「私、結婚報告の葉書を、高ちゃんには卒業アルバムの住所に送ったの。でも、何年も音沙汰無かったんだけど、この年にだけ年賀状を送ってくれたんだ。
 それからもう何年?16か17年くらい?経っているから、もうここには住んでないかもしれないけど…。」

 年賀状の住所は千葉県だ。住所だけで電話番号は書いてない。

「ありがとう!ここに行ってみるね。これ以上分かりそうな人って他にいるかな?」

「多分、私が学科もサークルもバイトも一緒で、1番近い関係だったと思うんだ。
 でもサークル引退して、バイトも急に辞めてから、ほとんど会ってなくて分からないけど…。4年生って、卒論とか就活とかであんまり皆と会わなかったからね。
 その間に仲良くしてた子がいても分からないなぁ。」

「そっか、そうだよね。」

「ねえ、一応…ちゃんと確認しといていいかな?
 高ちゃんが産んだ子の父親って、本当に千夏ちゃんの彼だったの?
 さっき“私が思ってることが正解”って言ったから…。」

「え…⁉︎
 違うの。そうじゃなくて私、“大高さんて妊娠してるんじゃない?”っていう噂のつもりで話してたの。」

「妊娠は噂じゃなくて、皆知ってたよ。だって、卒業の頃にはお腹出てきてたし。」

「やだ!じゃあ、本当に大高さんの子って、私の夫の子なの⁉︎
 誰が言ってたの?」

「えー⁉︎ご、ごめん!なんか私、余計なこと言った!
 私は直接高ちゃんからは聞いてないし、誰が言ったかは知らないけど、高ちゃんが自分で言わないとそんな噂は出ないよね?」

「でもさ、私って大学違うから、あやのちゃん(関口さん)以外は誰も、私の事も彼の事も知らないよね?」

「うん、他の皆は誰のことか知らないと思う。多分、ピンときたのは私だけ。
 噂って、ウチの大学では“大高さんの彼って、遠距離してる大高さんのために毎週末、山口から通ってきてたんだって”っていうのだったの。
 だから、てっきり千夏ちゃんの彼がいつの間にか高ちゃんと付き合うことになってたのかな?って思ってた。
 でもこの年賀状の苗字は“大高”のままだから、結局うまくいかなかったのかな?って。
 略奪なら、そういう結果でもしょうがないのかなって、勝手に想像してた。
 なんか、すっごく頭こんがらがってきたけど、千夏ちゃんてその彼と結婚したの?高ちゃんの子どもの事って、どうなってるの?認知とか…?」

「ごめん、私も全然分からなくて…。同じく頭こんがらがってる。」

 あやのちゃん(関口さん)は、頭の上にハテナがいっぱい出てるようだったけど、何か分かったらまた連絡するねと言って、バイバイした。
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