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第2話
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奈々子の母は、奈々子がスナックでバイトしていることを知らない。母は看護師をしていて、母の準夜勤の日に合わせて奈々子がバイトを入れている。
バレたら絶対怒られると思うけど、奈々子には内緒にしてでも働きたい理由があるのだ。
奈々子の母はシングルマザーだ。看護師の仕事に就いているが、金銭的に裕福な生活ではない。それに奈々子には弟もいる。
それでも大学に行きたい奈々子のために一生懸命働いて応援もしてくれている。
でも奈々子は現役の受験に失敗し、浪人生になった。
もともと私大に行くのは金銭的に無理なので、地元で家から通える国立大学のみに目標を絞っていた。
母からは何度も塾に通ってもいいよって言われていたにもかかわらず、独学で頑張った。そして失敗してしまった。
浪人生になって初めて予備校に通った。予備校に来てみて分かったが、高校の授業とは全然違う。アプローチの仕方というか、受験対策に特化した勉強というのは、高校の授業とは全く別に思えるくらいの内容だ。
奈々子はすごく後悔した。そして猛勉強した。すべて1からやり直したと思うくらい、ものすごく勉強した。
そして翌年、念願の大学に合格した。
キャンパスライフはとても楽しい。でも、浪人生だった1年間がずっと罪悪感として心に残る。
ふらっと街歩きをしていた時に、扉に貼ってあったバイト募集のチラシが目に入った。何気なく目についた張り紙だったが、どうしても気になってそこから離れられなくなった。
『バイト募集!非日常的な空間を共有しませんか?(って、フツーの店ですよ)
お話するのが好きな方、コミュニケーション能力を身に付けたい方、興味がある方
お待ちしてます!』
「こんな求人の張り紙って…。非日常的な空間て何?これで応募する人っているんだろうか?変なの。」
なんて小さな声でブツブツ言いながら、張り紙を見ていた。
割と長い時間立ち止まっていたあとに、声をかけてきたのがママだった。
「働きたいの?」
「え?いや、そういうわけじゃ…。まだ未成年でお酒飲めないから無理ですよね?」
「18歳過ぎてれば可能だけど、あなた次第だよ。お店の中見てみる?」
奈々子はママに促されてお店の中に入った。
第一印象は“狭い”だった。
「狭いでしょー。」
ママには心の声が聞こえたのかと思った。
カウンターに座るよう促され、ジュースを出してくれた。
「この店は、ほとんど常連さんしかいないの。たまに変な客もいるけど、自慢じゃないけど、いいお客さんがほとんどよ。
でも、お酒飲むところだから酔っ払いの相手をしなくちゃいけない。それからタバコも吸うよ。今時高いのにね、お酒飲む人はやめられないみたい。
あなたが嫌ならもちろんやめた方がいいけど、興味があるならやってみる?嫌だったらすぐ辞めてもいいし。
一回体験してみる?」
とても気さくで柔らかい雰囲気のママと話していると、ちょっと体験してみようっていう気持ちになった。何より時給がいいのだ。
そしてドキドキしながら来た体験日、夜の7時~12時、来店したお客さんは8時くらいから1時間に1人ずつくらいのペースで、合計5人程度だった。
タバコの煙はキツイけど、なんか大丈夫かも、って思った。
2回目、お客さんが来るまでの間、ママと結構話をした。
ママがとっても話しやすいのをいいことに、
「目標額は予備校にかかった費用です。母には内緒なので、母が家にいない日しか出勤できません。
学校が優先なので、それにより出勤できない日もあるかと思います。
先輩達の話では、学年が上がるとバイトをする時間が取れないそうなので、2年生までの間かもしくは目標額に達成するまでの間だけ働きたいです。」
なんて、かなり図々しい条件を言ったが、ママは快諾してくれた。
「目標がある人はすごくいい。ただなんとなくっていう人は続かないのが多いから。
それに逆にね、夜の商売って魅力的でね、それにハマる人も多いの。でも、ナナちゃんは流されないで頑張って!
私からの条件は、お客さんに携帯電話を教えないこと。それと一人でお客さんとの同伴出勤もアフターも禁止。
未成年だから、これは絶対守ってね。」
私にはありがたい約束だった。
夜の12時にバイトを終えて帰宅する。タバコの臭いが体に染みついているからすぐにシャワーを浴びる。
しばらくすると母も帰宅する。弟は気付いているのかいないのか、母には何も言わないでいてくれる。
そして、寝たふりをしながら布団の中で、母に懺悔する。『黙ってスナックでバイトしてごめんなさい!』
バレたら絶対怒られると思うけど、奈々子には内緒にしてでも働きたい理由があるのだ。
奈々子の母はシングルマザーだ。看護師の仕事に就いているが、金銭的に裕福な生活ではない。それに奈々子には弟もいる。
それでも大学に行きたい奈々子のために一生懸命働いて応援もしてくれている。
でも奈々子は現役の受験に失敗し、浪人生になった。
もともと私大に行くのは金銭的に無理なので、地元で家から通える国立大学のみに目標を絞っていた。
母からは何度も塾に通ってもいいよって言われていたにもかかわらず、独学で頑張った。そして失敗してしまった。
浪人生になって初めて予備校に通った。予備校に来てみて分かったが、高校の授業とは全然違う。アプローチの仕方というか、受験対策に特化した勉強というのは、高校の授業とは全く別に思えるくらいの内容だ。
奈々子はすごく後悔した。そして猛勉強した。すべて1からやり直したと思うくらい、ものすごく勉強した。
そして翌年、念願の大学に合格した。
キャンパスライフはとても楽しい。でも、浪人生だった1年間がずっと罪悪感として心に残る。
ふらっと街歩きをしていた時に、扉に貼ってあったバイト募集のチラシが目に入った。何気なく目についた張り紙だったが、どうしても気になってそこから離れられなくなった。
『バイト募集!非日常的な空間を共有しませんか?(って、フツーの店ですよ)
お話するのが好きな方、コミュニケーション能力を身に付けたい方、興味がある方
お待ちしてます!』
「こんな求人の張り紙って…。非日常的な空間て何?これで応募する人っているんだろうか?変なの。」
なんて小さな声でブツブツ言いながら、張り紙を見ていた。
割と長い時間立ち止まっていたあとに、声をかけてきたのがママだった。
「働きたいの?」
「え?いや、そういうわけじゃ…。まだ未成年でお酒飲めないから無理ですよね?」
「18歳過ぎてれば可能だけど、あなた次第だよ。お店の中見てみる?」
奈々子はママに促されてお店の中に入った。
第一印象は“狭い”だった。
「狭いでしょー。」
ママには心の声が聞こえたのかと思った。
カウンターに座るよう促され、ジュースを出してくれた。
「この店は、ほとんど常連さんしかいないの。たまに変な客もいるけど、自慢じゃないけど、いいお客さんがほとんどよ。
でも、お酒飲むところだから酔っ払いの相手をしなくちゃいけない。それからタバコも吸うよ。今時高いのにね、お酒飲む人はやめられないみたい。
あなたが嫌ならもちろんやめた方がいいけど、興味があるならやってみる?嫌だったらすぐ辞めてもいいし。
一回体験してみる?」
とても気さくで柔らかい雰囲気のママと話していると、ちょっと体験してみようっていう気持ちになった。何より時給がいいのだ。
そしてドキドキしながら来た体験日、夜の7時~12時、来店したお客さんは8時くらいから1時間に1人ずつくらいのペースで、合計5人程度だった。
タバコの煙はキツイけど、なんか大丈夫かも、って思った。
2回目、お客さんが来るまでの間、ママと結構話をした。
ママがとっても話しやすいのをいいことに、
「目標額は予備校にかかった費用です。母には内緒なので、母が家にいない日しか出勤できません。
学校が優先なので、それにより出勤できない日もあるかと思います。
先輩達の話では、学年が上がるとバイトをする時間が取れないそうなので、2年生までの間かもしくは目標額に達成するまでの間だけ働きたいです。」
なんて、かなり図々しい条件を言ったが、ママは快諾してくれた。
「目標がある人はすごくいい。ただなんとなくっていう人は続かないのが多いから。
それに逆にね、夜の商売って魅力的でね、それにハマる人も多いの。でも、ナナちゃんは流されないで頑張って!
私からの条件は、お客さんに携帯電話を教えないこと。それと一人でお客さんとの同伴出勤もアフターも禁止。
未成年だから、これは絶対守ってね。」
私にはありがたい約束だった。
夜の12時にバイトを終えて帰宅する。タバコの臭いが体に染みついているからすぐにシャワーを浴びる。
しばらくすると母も帰宅する。弟は気付いているのかいないのか、母には何も言わないでいてくれる。
そして、寝たふりをしながら布団の中で、母に懺悔する。『黙ってスナックでバイトしてごめんなさい!』
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