こんな破廉恥な悪役令嬢が出てくるゲームって何?!

高瀬ゆみ

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69.私の婚約者

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 そして、その日の夕刻――

 目を覚ました私は、見知らぬベッドで寝ていることに気付き、慌てて飛び起きた。

「どこ⁉」

 一体何が起きたのか分からず、悲鳴のような声を上げて周囲を見渡す。
 人は誰もいない。部屋の中には、今私が座っている何人も寝られるような大きなベッドと棚くらいしかない。
 それでも高い天井と上等な調度品の数々によって、一目で立派な屋敷内の一室だと分かる。
 自分の体を見下ろすと、いつもの夜着を身に纏っている。少なくとも何かの間違いがあったわけではなさそうで、ホッと胸を撫で下ろした。

「ここは一体どこなの?」

 記憶を辿ると、確かに自室のベッドで寝た覚えがある。恐らくクロードの魔法によって、強制的に眠りにつかせられたはず。
 だったらここはクロードが連れてきた場所だろうかと思っていると、扉が開く音がした。

「ああ。起きられたのですね」
「! クロード!」

 聞き慣れた声がして扉の方を向く。
 いつも通りの彼がいると思っていた私は、彼の姿を見てあんぐりと口を開いた。

「え? は?」

(…………誰?)

 扉の側に立つクロードは、白のタキシードを着ていた。
 光沢ある真っ白な生地をベースとして、肩章やベストの飾りボタンなどの装飾は金色でまとめられている。
真っ黒な執事服姿ばかり見ていたから、白い服を着ているとまるで別人のよう……って、そうではなくて!

「貴方、その格好は? 何⁉」

 貴族の夜会服というよりも、王子の式典服にしか見えない。

「ここではこれが正装なんですよ。説明の前に、まずは準備をしてください。よく眠っていたので起こさなかったのですが、そろそろ準備しないと兄との謁見に間に合いませんので」
「……兄? 貴方に兄がいたの? というか、謁見⁉」

 私の問い掛けは、クロードの指示により部屋に入ってきた大勢の侍女たちによってかき消された。
 昨日、後宮でこれでもかというほど手入れされたのと同じくらい、侍女の手によって美しく整えられ、気付いたときにはグリーンのロングドレスに着替えていた。

 ――そして今、私は隣国ルクセンドルフの大広間で、先日即位されたばかりの国王陛下から挨拶を受けている。

(……もしかして、私は狐にでも化かされたのかしら……?)

 前世でいうならドッキリだろうか。そう思った方がおかしくないほど、急な展開についていけない。
 まだ年若い国王陛下を見て、そして隣に立つクロードを見る。顔の系統は違うものの、言われてみれば確かに、どことなく似ている気がする。

「貴方は言葉で説明するよりも、実際に体験した方が理解が早いようですから」

 そう言って、説明なく大広間に連れ込んだクロードを恨めしく思う。いくら幼少期から執事兼教育係としてずっと側にいて、私のことを熟知しているからとはいえ、さすがにそれは酷いのではないだろうか。
 説明が面倒だから丸投げしたと言われた方が、まだ納得出来る。

 だって、私は隣国の王との会話で全部知ったのよ⁉


「ルクセンドルフ王国の王、アーサーだ。ようこそ我が国にお越しくださった」
 ……ここ、隣国なの?

「クランベル公爵家には、長年弟のクロードが世話になった。改めて礼を言わせてほしい」
 ……弟?

「幼少の頃から支えてくれた貴方が、クロードの婚約者になってくれたことを心から嬉しく思う」
 ……ま、待って! そんなの聞いてないッ!


 我が公爵家の執事は、いつの間に隣国の第二王子になったの⁉
 
 そして――私はいつから隣国の第二王子、クロード・フォン・ルクセンドルフの婚約者になったのかしら⁉









※次からはクロード視点での話になります。
※12時更新はなくなります。
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