イケメンも地位も望んでません!~でもお金は欲しいのでちょうどいい男を求めます~

高瀬ゆみ

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4.イケメンも地位も望んでません!

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『ルイーゼ・アクロイス』

アンソワ王太子殿下の婚約者。
殿下と同い年で公爵家の彼女は、王妃となるべく幼少期から英才教育を受けてきた才女だという。

貴族学校のカフェテリアでルイーゼの姿を見つけたエリザベスは、思わず目で追ってしまった。

腰まである艶やかで癖のない黒髪に、グリーンの瞳。
凛としたその姿は高貴なオーラを纏っている。
多くの生徒が集まるカフェテリアでも、堂々とした佇まいのルイーゼは人目を引く。
後ろに取り巻きの御令嬢方を引き連れて歩くルイーゼは、まさに上位貴族といった風格だった。


「――何を見ていらっしゃるの?」

にゅっと目の前に顔が現れて、エリザベスはもう少しで悲鳴を上げそうになった。

「リ……ッ、リリーシア様……!」

エリザベスがのけぞると、腰を浮かせてエリザベスの顔を覗き込んだリリーシアが隣の席に戻る。

「びっくりしました……!」

「だって貴方、さっきからボーッとしてるんだもの」

そう言ってリリーシアが楽しげに笑みを浮かべる。
それだけで絵になってしまうから美人は得だとエリザベスは思う。

侯爵令嬢のリリーシアとは教室の席が隣だったことがきっかけで親しくさせてもらっている。
銀髪でスラッとした体型の彼女は、見た目だけでいえば儚げな美人なのだけれど、リリーシアはだいぶクセの強い性格をしていた。

「さっき見ていたのはルイーゼ様かしら?」

おっとりと首を傾げながらリリーシアが言う。
バレてしまったのならいっそのこと……と、エリザベスはずっと気になっていたことを尋ねた。

「ルイーゼ様は王太子殿下の婚約者であらせられますよね? あまりお二人でいらっしゃる姿を見かけないものですから、気になって目で追ってしまいました」

「うーん、そうねぇ。でも婚約者なんてそんなものではなくて?」

リリーシアの言葉を聞いて、今まで黙っていたもう1人の学友、伯爵令嬢のミーシャがニヤニヤと笑いながら話に入る。

「リリーシア様と婚約者サマは、いつも一緒にいなくても心で繋がっているからいいんですよねー」

「……ミーシャ、怒るわよ?」

リリーシアの凄みにもミーシャは動じない。
二人は入学前から知り合いだったようで、エリザベスには恐れ多くて言えないことも簡単に言ってのける気安さがあった。

実は、エリザベスが属する派閥は、このリリーシアが中心になって構成されている。
リリーシアの父が現王妃の兄にあたり、アンソワ殿下のいとこでもあるリリーシアは学校内でも一目置かれる存在だった。

そして、同じ学年には王太子殿下の婚約者であるルイーゼを筆頭にした派閥も存在している。

「ルイーゼ様はもっとベタベタしたいんでしょーけど、アンソワ殿下はどうなんですかね?」

「ミーシャ、聞こえますよ」

シッ! とリリーシアが諫めると、ミーシャは肩をすくめた。
二人の話を聞きながらエリザベスはぼんやりと考える。

(婚約者かぁ……)

将来結婚することを誓った相手。
いまだ愛人キャラから抜け出せないでいるエリザベスには遠い存在だ。

高位貴族なら、すでに婚約者がいるというのは普通のことなのだという。
王太子であるアンソワであれば、婚約者のルイーゼとは幼い頃からずっと一緒にいたはずだ。
それなのに……

「……婚約者がいるのにお近付きになりたいなんて、どういう心境なんでしょうね……」

エリザベスの呟きに、二人は勢いよく顔を向けた。

「まぁまぁまぁ! 私の可愛いエルザにそんなことを言う輩がおりまして!?」

「すごいっ! リリーシア様の圧力に屈しないなんてっ! 一体どこのどいつですか!?」

二人の食いつきにエリザベスは再び体をのけぞらせることとなった。


――まさか、先ほど話題にした王太子殿下だとは言えない……


エリザベスは口元をひくつかせた。







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