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第一章 始まり
第八話 青年は決意するようです
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辺り一面が闇に覆われ静寂に包まれている中、僕の靴音だけが響き渡っていた。 手に蝋燭を携え紙に書いてある目印を頼りに歩いていく。 真夜中の帝都を歩いたことはこれまでもあったが今晩ほど周りを警戒しながら歩いたことはないだろう。
「…この場所が…?」
僕が足を止めたその場所は多くの民家が立ち並ぶ中の一つだった。 決して目立たないその家は密会を行う場所としては申し分なく、僕は扉へと近づく。
紙に書いてある通りノックをまず二回、そして間をおいて三回。 するとドアが音を立てて開いていく。
その開いたドアを僕は入っていく、中は暗闇に覆われており僕の手に持つ蝋燭の火だけがゆらゆらと動いている。 ふと僕の入ってきたドアが音を立てて閉まる音が聞こえてきた。 振り返るとそこには眼鏡をかけ、立派な髭を伸ばしている初老の男性の姿。 僕はその姿を目に映すと膝を地面につく。
「お久しぶりです、ハルトマン公爵」
ハルトマン公爵は僕の姿を蝋燭の火を頼りに見るとニコリと笑うと口を開いた。
「ナナキ君、よく来てくれたね ありがとう」
公爵はそう言うと膝をついている僕に立ってとジェスチャーをする、それを合図に僕はゆっくりと立ち上がる。
「勿体ないお言葉で御座います 公爵家の危急は聞き及んでおります」
僕がそう言うと公爵は困ったような笑みを浮かべた後、口を動かした。
「ならば説明は不要だな……アンが今窮地に立たされている。 私は立場上動くことが限られている…」
公爵はそう言うと体がかすかに震えていた、この震えは娘を助けてやれない親の気持ちを痛いほど僕に訴えてきた。
「初めに断っておくが…この話は極めて危険な話だ 成功しても失敗しても君が元の生活に戻ることは…できないだろう
だから、この話を断っても構わない」
そう言う公爵は言葉を紡いでいる中、僕は相槌も打たず静かに耳を傾けていた。 だが公爵がどんな言葉を言おうとも僕の心は既に決まっていた。 僕は公爵の言葉を聞き終えた後口を動かした。
「既に覚悟は固まっております、アンナ様をお救いする為なら…!」
その言葉を聞いた公爵は少し悲しそうな表情をした気がした。
「すまない…不甲斐ない私を許してくれ…」
そう呟くと公爵はすぐに表情を変え僕の目を見据えて言う。
「単刀直入に言おう、アンを助け出し帝都を脱出してほしい この状況でアンを救い出す方法は…これしかない」
そう言うと公爵は続けて言葉を口にする。
「アンが皇太子殿下薨御の嫌疑をかけられた以上もう嫌疑を晴らすことはできないだろう あの男のことだ、このままアンを死罪とし我がハルトマン家の責任を追及するだろう」
「あの男…?」
僕は公爵が口にした言葉に反応する、公爵はその疑問に答えた。
「そう…皇帝陛下が病の床に伏しているのを良いことに帝国の実権を握っている男…摂政ゲオルク・ギュンドアン
奴が手を引いているのは間違いないだろう」
ゲオルク•ギュンドアン……このベアトリス帝国の摂政にして、この国の事実上の最高権力者の名である。
「次期皇帝となる皇太子殿下を亡き者としたことで次に皇位継承権を持つ者が婚約者のアンだ そのアンすら手にかけることで権力を絶対的なものにしようとするつもりだろう」
そう言う公爵の言葉に僕は頷く、この公爵の言葉は決して的外れなことではないと分かっていたからだ。 早すぎるのだ、アンナ様が帝室に入られたのはつい三週間前のことだ。 そんな早い段階で皇太子殿下に手をかけるとは思えないし真っ先にまず疑われるだろう。 それに実権が欲しいのなら皇太子殿下ではなく皇帝陛下を狙うはずである。
「私も責任を取らされるだろう、ただでは済むまい
だが私はハルトマン家がなくなることよりも……アンを失うことのほうが辛いのだ」
そういう公爵は肩をふるわせていた、僕はその姿を黙ってみることしかできなかった。
「話を戻そう…アンは今、城の一室に軟禁状態にされている状態だ 恐らく近い内に地下牢へ移されるはずだ
地下牢へ移送されたら助け出すのは極めて困難となるだろう」
「今は警備も一人の時間帯がある、そこを狙う」
公爵はそう言うと僕に確認する、僕は黙って頷いた。
「娘を連れ出した後は有事の際に脱出する抜け道が城にはある、道を進んでいけば帝都から出られるはずだ」
そこまで言うと公爵は僕の目を真っ直ぐに映すと僕に向けて口を開く。
「ナナキ君、娘を…アンを助けてくれ」
「はい……この命に代えても必ず」
僕はそう、公爵に言葉を返す。 この言葉に嘘偽りはまったくない アンナ様は僕の大切な人だ、絶対に……
夜の静寂の中、決意した思い。
アンナ様……待っていて下さい…!
必ず……
.
「…この場所が…?」
僕が足を止めたその場所は多くの民家が立ち並ぶ中の一つだった。 決して目立たないその家は密会を行う場所としては申し分なく、僕は扉へと近づく。
紙に書いてある通りノックをまず二回、そして間をおいて三回。 するとドアが音を立てて開いていく。
その開いたドアを僕は入っていく、中は暗闇に覆われており僕の手に持つ蝋燭の火だけがゆらゆらと動いている。 ふと僕の入ってきたドアが音を立てて閉まる音が聞こえてきた。 振り返るとそこには眼鏡をかけ、立派な髭を伸ばしている初老の男性の姿。 僕はその姿を目に映すと膝を地面につく。
「お久しぶりです、ハルトマン公爵」
ハルトマン公爵は僕の姿を蝋燭の火を頼りに見るとニコリと笑うと口を開いた。
「ナナキ君、よく来てくれたね ありがとう」
公爵はそう言うと膝をついている僕に立ってとジェスチャーをする、それを合図に僕はゆっくりと立ち上がる。
「勿体ないお言葉で御座います 公爵家の危急は聞き及んでおります」
僕がそう言うと公爵は困ったような笑みを浮かべた後、口を動かした。
「ならば説明は不要だな……アンが今窮地に立たされている。 私は立場上動くことが限られている…」
公爵はそう言うと体がかすかに震えていた、この震えは娘を助けてやれない親の気持ちを痛いほど僕に訴えてきた。
「初めに断っておくが…この話は極めて危険な話だ 成功しても失敗しても君が元の生活に戻ることは…できないだろう
だから、この話を断っても構わない」
そう言う公爵は言葉を紡いでいる中、僕は相槌も打たず静かに耳を傾けていた。 だが公爵がどんな言葉を言おうとも僕の心は既に決まっていた。 僕は公爵の言葉を聞き終えた後口を動かした。
「既に覚悟は固まっております、アンナ様をお救いする為なら…!」
その言葉を聞いた公爵は少し悲しそうな表情をした気がした。
「すまない…不甲斐ない私を許してくれ…」
そう呟くと公爵はすぐに表情を変え僕の目を見据えて言う。
「単刀直入に言おう、アンを助け出し帝都を脱出してほしい この状況でアンを救い出す方法は…これしかない」
そう言うと公爵は続けて言葉を口にする。
「アンが皇太子殿下薨御の嫌疑をかけられた以上もう嫌疑を晴らすことはできないだろう あの男のことだ、このままアンを死罪とし我がハルトマン家の責任を追及するだろう」
「あの男…?」
僕は公爵が口にした言葉に反応する、公爵はその疑問に答えた。
「そう…皇帝陛下が病の床に伏しているのを良いことに帝国の実権を握っている男…摂政ゲオルク・ギュンドアン
奴が手を引いているのは間違いないだろう」
ゲオルク•ギュンドアン……このベアトリス帝国の摂政にして、この国の事実上の最高権力者の名である。
「次期皇帝となる皇太子殿下を亡き者としたことで次に皇位継承権を持つ者が婚約者のアンだ そのアンすら手にかけることで権力を絶対的なものにしようとするつもりだろう」
そう言う公爵の言葉に僕は頷く、この公爵の言葉は決して的外れなことではないと分かっていたからだ。 早すぎるのだ、アンナ様が帝室に入られたのはつい三週間前のことだ。 そんな早い段階で皇太子殿下に手をかけるとは思えないし真っ先にまず疑われるだろう。 それに実権が欲しいのなら皇太子殿下ではなく皇帝陛下を狙うはずである。
「私も責任を取らされるだろう、ただでは済むまい
だが私はハルトマン家がなくなることよりも……アンを失うことのほうが辛いのだ」
そういう公爵は肩をふるわせていた、僕はその姿を黙ってみることしかできなかった。
「話を戻そう…アンは今、城の一室に軟禁状態にされている状態だ 恐らく近い内に地下牢へ移されるはずだ
地下牢へ移送されたら助け出すのは極めて困難となるだろう」
「今は警備も一人の時間帯がある、そこを狙う」
公爵はそう言うと僕に確認する、僕は黙って頷いた。
「娘を連れ出した後は有事の際に脱出する抜け道が城にはある、道を進んでいけば帝都から出られるはずだ」
そこまで言うと公爵は僕の目を真っ直ぐに映すと僕に向けて口を開く。
「ナナキ君、娘を…アンを助けてくれ」
「はい……この命に代えても必ず」
僕はそう、公爵に言葉を返す。 この言葉に嘘偽りはまったくない アンナ様は僕の大切な人だ、絶対に……
夜の静寂の中、決意した思い。
アンナ様……待っていて下さい…!
必ず……
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