婚約者が同僚の女騎士に懐かれすぎて困ってます。

のんのこ

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おかえりなさい

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戦争に勝利したラミティカ軍が帰還したのは、それから二年後のことだった。


終戦の報せを受けて、今か今かと彼の帰宅を待ち続けて約十日。

ついに今日、アレスが帰ってくる。


報せを受けてからはそわそわとして落ち着かない日々が続いた。

夜だってなかなか寝付けなくて、必死に眠気を誘うハーブティーを飲んだり、軽く運動してみたりしたものだ。


アレスと会った時、前よりブサイクになったなんて思われたくなかったから。



そしてお昼を回った頃、


「お嬢様、アレス様がお見えに!」

自室で待機していた私に、侍女が嬉しそうにそんな言葉を告げた。


返事も返さずパタパタと走って玄関に向かう私を、いつもマナーにうるさい侍女長ですらこの日は文句をつけることはしなかった。


そして見える大好きな彼の姿。

___ああ、涙で視界が霞む。



「っ、あ…アレスっ」


涙声の情けない声色だった。


一目散に彼に駆け寄ると、彼は何も言わず、その温かな腕で強く強く私を包み込んだ。



「やばい…ルイーゼだ…本物の」

「っ、偽物の私なんて、いないわ」


耳元で感じる彼の声も泣いていた。


首元を彼のサラサラとした金髪が擽る。

こんな些細なことでも懐かしくて、涙が出るほど嬉しかった。


「…アレス、おかえり」

彼の胸に頭をぐりぐりと押し付けながらそう言うと、私の背に回る腕に力が籠る。

苦しいのに、今はもっといっぱい抱きしめてほしい。


「アレスの腕の中、あったかい」

「……」


「アレス?」

やけに反応のない彼を不思議に思って名前を呼ぶ。



「…ルイーゼ」

「なに?」


「なんかもう、ルイーゼが愛おしすぎて頭おかしくなりそう」


ぽぽぽっと自分の頬に熱が集まるのがわかった。

以前から甘い言葉をたくさん使う人だったけど、久しぶりすぎてダメージが大きい。


「…私も、アレスのこと大好き」

「もう可愛い、可愛すぎる。ちょっとルイーゼ俺がいなかった間悪い虫とか付いてないよね?そんなの俺死んじゃうからね?」

「そんなの、ついてません」


ずっとずっとアレスを想い続けてきたのに、そんなことを言われるのは少し悲しかった。


きゅっと彼の騎士服の裾を掴む。



「…拗ねちゃった?」

「私はアレスだけなのに」


そう小さく呟くと、彼は優しく私の肩に手を置き、唇にそっと触れるだけのキスを落とした。


「ごめん、わかってるよ。俺が勝手に不安になっただけ。俺の可愛いルイーゼに命知らずのバカが変な気起こしてないか」

もう一度私を抱きしめ直したアレスがそんなことを言う。




「戦況が悪い時なんかはたまに婚約の申し込みを受けたりしてたけどな」

「兄様は黙ってて!」



ふいに通りかかったゼノ兄様はアレスにそれだけ言うとさっさとどこかへ行ってしまう。


「…え、何それ、どういうこと?ちよっと言ってる意味がわかんないんだけど」

「しっかり断ったから!」


「や、それは当たり前だけど。ルイーゼって俺の婚約者じゃなかったっけ?」

「うん、アレスの婚約者だよ…?」


だから、少し落ち着きましょう?


「え、じゃあ、なんでルイーゼに婚約の申し込みなんて来んの…?」

「さあ?」


わなわなと震えながら考え込むアレス。

彼は頭を私の肩口に押し付けてぶつぶつと何かを呟いている。


「俺のルイーゼなのに…意味わかんない…全員見つけ次第始末しないと…」



なんだか不穏なことを考えているように思えるのは気のせいだろうか。



「あの、そろそろ離れて?」

「えぇ俺もっとルイーゼにくっついてたいんだけど」

「もう十分でしょう!?少しだけ恥ずかしいの…」

「恥ずかしがるルイーゼも可愛いっ…!」



ますます腕に力を込め始めるアレスに困ってしまう。

離してほしいと言っているのに。




結局彼は再び通りかかったゼノ兄様に呆れながら引き離されるまで、玄関先でしばらく私を抱きしめ続けるのだった。






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