3 / 26
ありがとう
しおりを挟むアレスは次の日から三日間の休暇をもらって、朝から晩まで私にくっついていた。
私の両親もアレスをいたく気に入っていたから、帰還してそうそう泊まり込むことにも快く了承してくれた。
「アレス…暑いよ」
ぎゅっと背後から私を抱きしめ、肩口に顔を乗せるアレスに苦言を呈す。
「ん~もうちょっと。相変わらずルイーゼの匂い安心する」
「…かがないで」
「なんで?」
…なんで?じゃないでしょう。
大好きな人に自分の匂いをかがれるなんてそんな恥ずかしいこと耐えれるわけない。
お腹にまわった彼の腕をひっぺがして自身の体をぐるりと体を反転させる。
「ルイーゼ?どうした?」
真正面から見つめた彼の淡い碧色の瞳が一瞬だけ不思議そうに瞬いて、緩く弧を描く。
「後ろから抱きしめられたらアレスの顔見えないじゃない…」
「なにそれ可愛い」
「わっ」
今度はガバりと正面から抱きしめられる。
「…また見えない」
「いいよ見なくて。俺今すっごいだらしない顔してるし。俺の体の熱だけ感じてて」
「…なんか、気持ち悪いよその言い方」
「ひっでぇ」
なんて言いながらも言われた通りアレスの体温に集中してみると、心地よい温かさにドキドキしてしまう。
改めて、帰ってきたんだなぁこの人。
表情が緩んでしまって、やっぱり顔なんてお互い見えなくて正解かもしれない。
「…帰ってきてくれてありがとう」
思ったままの言葉を口にすると、ぴくりと彼の体が揺らいだ。
「や、正直俺も今回は生きて帰れる自信なかったよ…もうルイーゼと会えなくなるのかなって何度も思った」
彼は震える言葉でそんなことを口にする。
抱きしめる手に力をこめると、彼は一つ小さな吐息を零した。
「でも、ちゃんと帰ってきたよ俺」
「うん」
「ご褒美ちょうだい?」
「っ、え?」
ズイっと顔を近づけてくるアレス。
驚く間もなく彼のほんのり熱い唇が重なった。
ちゅっちゅっと何度も啄むように降ってくる口付けに頭がおかしくなりそうだ。
「ちょっ、…あ、れす」
「二年間の禁欲生活だったんだよ?」
しばらくして離された唇、肩で息をする私と裏腹にアレスは少し拗ねたような顔でそんなことを言う。
「俺以外にも婚約者がいる奴らいっぱいいたけど、張幕にやってくる娼婦達にしっかり相手してもらってたからね?」
「娼婦…?」
「そ。騎士や兵士の士気を高めるために夜な夜なやってくんの」
そ、そんな裏事情があったのね。
予想もしなかった事実に衝撃を受ける。
「そこでは婚約者がいようと結婚してようと関係なく、みーんなその道のプロにやってもらってんだよ?」
「……アレスも?」
「俺の話聞いてた?」
不安になって聞いてみると、アレスは呆れ顔を浮かべる。
「本気で俺がルイーゼ以外の女抱くと思ってんの?心外なんだけど」
「思ってないけど…アレスだって、男の人だし…」
「まあ、ねぇ。男だし、遠征中はしょうがない?ルイーゼは俺が他の女に手出しても許してくれんの?」
歪な笑みを浮かべてそんなことを言うアレスは怒ってるみたいで少し怖い。
アレスが他の人に手を出す、か。
「絶対いや、許すわけない…アレスは私しか触っちゃダメだよ」
「うん、俺ルイーゼしか触らないよ」
私の返事に彼は満足そうに頷くのだった。
「はぁ、ほんと可愛いルイーゼ。なんでそんな可愛いの?今回の戦だってルイーゼ連れてったら国王即陥落されて一瞬で終戦しちゃってたんじゃねえのこれ」
「何馬鹿なこと言ってるの」
「だけどやっぱり危ないからルイーゼは連れて行けないか」
こんな調子のアレスと共に随分と甘い三日間が過ぎていくのだった。
46
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる