婚約者が同僚の女騎士に懐かれすぎて困ってます。

のんのこ

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どうしてもダメ?

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三日間の休養を終えたアレスは今朝王城へと戻って行った。

別れ際この世の終わりとでもいうような表情でなかなか玄関を出ていかないアレスには困ってしまった。

行きたくないと駄々をこねるアレスはまるで子どものよう。

少し可愛いと思ったのは内緒だ。



「お嬢様…使用人達の邪魔でございます」


アレスがいなくなって暇になった私は屋敷をうろちょろと歩き回っていた。

両親はしばらく領地に視察に出ているし、兄様は執務室で忙しくしていたから構ってくれるのはもう使用人のみんなしかいない。


忙しなく働く彼らに声をかけたりじっと見つめたりしていると、私付きの侍女メイシーから苦言を呈されてしまった。



「邪魔なんてしてないわ、メイシー」

「いいえ、しっかり邪魔をなさっています。お嬢様に話しかけられては皆手を止めてお嬢様の相手をするしかないのです」


淡々と言うメイシーにむっと唇を尖らせる。

彼女は私のこんな表情一切気にも止めないように言葉を続けた。


「途中からはそれに気づき見つめるだけにしていらっしゃったようですが、ここの使用人は一堂にお嬢様を天使や女神か何かと勘違いしている節がありますから…そんなお嬢様に見つめられるだけで、彼らは緊張してパフォーマンスが悪くなってしまうのです。全く、とんだぽんこつ連中が」

「天使に、女神…?」

なんだかそんなことを言われては悪い気はしない。


「なにニヤニヤしているんですか。お嬢様付きが長い私は勿論現実のお嬢様がそんな大それた方なんかじゃないこと、しっかりとわかっておりますからね?」


「…メイシーは私に対して辛辣だわ」

「お嬢様のためです。御理解ください」


取り付く島もないツンとした態度に自分の頬がぷっくりと膨らむのがわかる。

ハンって鼻で笑われた。



「じゃあメイシーが相手をしてくれるの?」

「お嬢様付きの侍女として、 話し相手になるくらいの時間は正直ございますが…なんというか、あまり気乗りはしませんね」

「意地悪!」

「どうせ惚気話でしょう?」


うっ、よくわかってるじゃないメイシー。

三日間もアレスと過ごしてアレスのかっこいいところや可愛いところをたくさん見ることが出来て…とにかく今は彼の魅力を誰かに話したいのだ。

話して、スッキリして、気持ちを落ち着かせないと。


ずっとそわそわしてドキドキしたまんまなんて耐えられない。



「メイシー、どうしてもダメ…?」

「うっ」

上目遣いで彼女を見つめると、ぐしゃりと表情を歪めるメイシー。

これは、押したら行けるかもしれない。


「私メイシーに話聞いて欲しいなぁ」

「お嬢様は結構ちゃっかりしてますよね。自分の武器をしっかり理解していらっしゃるようで」


自慢ではないが我がオスフェル侯爵家は美形一家として社交界でも名高い。

父は甘いルックスで結婚して子どもを二人もうけた今でも貴婦人達をメロメロにしているし、母は父とは対照的な凛とした雰囲気だが、社交界の華と言われた美貌の持ち主だ。

兄のゼノだって凛々しさと甘さを併せ持つアンバランスな美しい姿はいつだって貴族令嬢達の噂の的だった。


そして私も、自分で言うのもなんだが、父親似の甘さ100%の容姿は、守ってあげたくなると定評がある。


そんな小動物系愛くるしさをこれまた父親似の打算的な性格をした私が利用しない訳もなく…


「はぁ、仕方ありませんね…」

もうかれこれ十数年程の付き合いである侍女をいつも振り回してしまっているのだ。



「なんだ、またメイシーを困らせているのか?」

ふとそんな声が聞こえて背後を振り返ると、呆れ顔をした兄様が立っていた。


「ゼノ兄様、お仕事は?」

「あんまり執務室に篭っていても体に悪い」

「飽きたんですか?」


私がそう訪ねると兄はしれっとした表情で視線を横に逸らすのだった。

図星みたいだ。



「悪いなメイシー。アレスと三日もいちゃついていたら今まで自分が一人でどう過ごしていたのか忘れてしまったみたいだ」

「そのようですね」


二人の随分な言い草に反論しようと口を開きかけたが、それよりも早く兄が言葉を続ける。


「この愚かな妹は私が連れていくから、メイシーはもう他の仕事に戻っていいぞ」

「ゼノ様こそが本当の神様だったのですね」

これは絶対に私が天使や女神だと持て囃されることに対する当てつけだ。


「兄様が私に構ってくれるのですか?」

「いいや、私は押し付けるだけだ。使用人から苦情が出ているからな、お前がいては仕事にならないと」

苦情、ですか?

私はそこまで使用人のみんなに迷惑をかけてしまっていたのか…


少しだけ落ち込んだ。



「訓練場、行ってみるか?」

「…訓練場?」


「騎士団の」


ゼノ兄様が神様だという意見には私も賛同することにしようかな。



「行きます!」




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