婚約者が同僚の女騎士に懐かれすぎて困ってます。

のんのこ

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おひさしぶりです

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王城にある騎士団の訓練場に足を運んだのは初めてのことだった。

なかなか入る機会もない上に、アレスは私が訓練を見学することをどうしてか嫌がるから。


「久しぶりだね、ルイーゼ」

「お久しぶりです、ロイド様」


ゼノ兄様とアレスのご友人のロイド様は、彼らの妹であり婚約者である私にまで親しくしてくれている優しい人。

彼はこの国の王太子だ。



歳は私の三つ上の二十二歳で、兄様やアレスとは学園時代のクラスメイトだったらしい。


「卒業のお祝い、ありがとうございました」

先日学園を卒業した私に、ロイド様は綺麗なアクアマリンの宝石を贈ってくださった。


「婚約者のいる君にアクセサリーを贈るのは憚られたから、宝石のまま贈ったのだけど気に入ってくれたかな?」

「ええ、すごく素敵でした」

「宝石店で見かけた時君の瞳の色によく似ていると思って、卒業祝いにさせてもらったんだ」


にっこり笑ってそう言うロイド様は、物腰柔らかで優しく、私がアレスや家族の次に信頼している男性だった。


「ありがとうございます、ロイド様」

「どういたしまして。じゃあ、早速アレスのところに行こうか」

「はい!」


わくわくとドキドキを胸に、私はロイド様とゼノ兄様の後ろをついていった。



少し歩くと騎士団の訓練場が見えてきて、檄を飛ばすような声と木剣をぶつけ合う音が耳に入る。



「アレス…」

「おっ、ちょうどやってるな」


訓練場の中心で、アレスは自分よりも幾分か体格の大きな男性と木剣を交えていた。


カンカンッと木がぶつかり合う聞きなれない音、アレスの額から滴る汗。

どれも私にとってはすごく新鮮で、新しいアレスの一面を発見したようでなんだか胸がくすぐったくなった。


アレス、かっこいい…


「相変わらずアレスは強いね」

「そうだな」

兄様達が感心したようにそう言う。


アレスは飄々として相手の剣をいなしているが、彼と対峙する大柄な男性は最早息も絶え絶えになってしまっていた。


「どうしてアレスは勝負を決めないの?」

「一応模擬戦でもあるけど、アレスがさっさと勝ってしまったら訓練にならないだろ」


なるほど。

アレスが少し気だるげなのにずっと剣を交え続けているのにはそんな理由があるのね。




「殿下!いらっしゃるのなら一言声をかけて頂ければ…!そんなところに立っていないで、どうぞこちらに!ゼノ様に、お連れの方もさあさあ!」

「やあ、フリート」


焦った様に私達に声をかけてきた男性にロイド様はにこやかに挨拶を返した。

確かフリート様というのは、以前アレスから聞いた騎士団長様の名前と同じだ。


ということはアレスの上司…!

失礼のないようにしなければいけない。



案内された椅子に腰を下ろすと騎士団長様が不思議そうに私を見つめているのに気づく。


「失礼ですが、この女性は?珍しいですね、殿下やゼノ様が女性をお連れになるなんて」


「アレスの婚約者だよ」

「アレスの!?」


これでもかって程目を見開く騎士団長様になんとなく居た堪れない気持ちになる。

そんなに驚くことなのだろうか。



「アレスは自分の婚約者の話など一度もしたことがなかったので…その、随分と可愛らしい方で驚きました」

「失礼だよフリート」

「はっ、失礼しました!実際にご令嬢を目にすると、アレスが隠したがっていた理由は我々の想像したものとは正反対だったようですね」


謝罪の言葉を述べた騎士団長様は、すぐ様穏やかな笑みをのせてそんなことを言った。

言ってることはよくわからなかったが、アレスが私のことを隠していたという事実だけは理解できた。


あまり良い気分ではない。

婚約者の存在を隠すなんて、とても何か良い理由があるとは思えなかった。


私はアレスにとって隠すべき存在なのだろうか。


ちらりとアレスに視線を戻すと、ちょうど相手の剣を弾き返してその喉元に自らの木剣を突きつけているところだった。

もちろん寸止めだ。



「うちの妹がどうしてかよくない誤解をしている気がするんだが、どう思うロイド」

「ははっ、楽しいね」

「お前も存外性格が悪いよな」


そんな兄様達の話が私の耳に届くことは無かった。





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