婚約者が同僚の女騎士に懐かれすぎて困ってます。

のんのこ

文字の大きさ
11 / 26

ひまなのよ

しおりを挟む



私がアレスの家にやってきて数日、彼は毎日ご機嫌でにこにこ笑って過ごしていた。

それはもうおはようからおやすみまで。


一部例外があるとするなら彼が騎士の仕事で家を開ける時のみ。

毎朝三十分は玄関先で粘っているのだから驚きだ。


「…あ~なんか今日は体調が悪い気がするな~俺」

「顔色もいいし、朝食までは元気いっぱいだったじゃない」

「朝食があたったのかも?」

「私も同じ物食べたんだけど」


こんな調子でいつもだらだらと出発しちゃうからアレスはちゃんと遅刻せずにお仕事に行けているのだろうか。

同僚に迷惑をかけてなければいいのだけど。



そんなことを思いながらぼんやりとお茶を嗜んでいた。

学園を卒業してしばらく、本当にやることがないのだ。


アレスが二年も戦争に行っていたから花嫁修業やその他の教育を行う時間が有り余っていたぶん、今になって手持ち無沙汰だ。



「ルーカス」

「なんでございましょう?」


「…アレスが訓練場には来るなって言ったんだけどね」

「はあ…」


次の私の言葉が予想できたのか、その執事は少しだけ顔をしかめた。

この人はあえてあからさまに表情に出している気がする。



「……どうしても、暇なのよ」

「そうですか」


「ストレスでどうにかなっちゃいそうだわ」

「では退屈しのぎに書庫にでも行ってみますか?アレス様が戦地から集めた珍しい本なんかも取り揃えてありますよ」



そういうことじゃないの。

わかっているのにわざと話をはぐらかすルーカス。


私は笑みを浮かべで口を開いた。



「訓練場に、行きたいの」

「………アレス様が許可されなかったのでは?」


「そうねえ、王宮で働くお兄様に用があってたまたま足を運んだら、道に迷って騎士団の訓練場にたどり着いてしまったとしたら、仕方ないんじゃないかしら?…ルーカスはどう思う?」

「ええ、まあ、無理があると思いますね」


あっさりとしたルーカスの言葉にぷっくりと頬を膨らませる。

私はもう一度アレスのかっこいい姿を見たいだけなのに。


「アレスは確か今日は午前中だけ城門の監視で、午後からは訓練だけだったわね」

「……はあ」


「そうよね、じゃあ…まずはキッチンに行きましょうルーカス!」


そう言うと彼は困ったような笑みを浮かべて私の後ろについて部屋を後にした。



「では、今から定番の蜂蜜レモンドリンクを作っていきたいと思います。助手のルーカスはレモンを洗ってくれる?」

「私はいつから執事ではなくルイーゼ様の助手になってしまったのでしょうか」

「ノリが悪いんじゃない?」


なんだか疲れた様子のルーカスだけど、任せたレモンは丁寧に水で洗って水分を拭き取ってくれている。


次々と洗われていくレモンを輪切りにしていくと何も言わずとも蜂蜜や容器を準備ししてくれるのだがさすが有能執事だ。


「あとはできた原液に水を加えて…うん、上出来ね!」


スプーンで一口救って味見してみると優しい甘酸っぱさが美味しくて頬が緩む。


「これでアレスのご機嫌とりもばっちり」

「…だったらいいですねぇ」


どこか投げやりにそんなことを言うルーカスを横目で睨むと小さくため息をつかれた。


「行くよ、ルーカス」

「かしこまりました…」


乗り気じゃないルーカスを連れて、私たちは騎士団の訓練場へと足を運ぶのだった。



訓練場に到着すると、騎士団の方々が訓練をしている光景の中にアレスの姿は発見できなかった。


…もしかして午前の仕事が終わって昼食でもとっているのだろうか。

タイミングが悪かったようだ。



きょろきょろと視線をさ迷わせていると、なんだか視線がこちらに集まってくるのを感じる。


…見られてる?


訓練をしていた人々がチラチラとこちらの様子を窺っているのだ。



「…私、完全に訓練の邪魔しちゃってる?」

「これくらいのことで集中を欠くような半端な方々ではないと思っていたのですが…」


ルーカスが慰めのような言葉を言ってくれるけど、やはり申し訳なくなってしまう。

私が浅はかだった。



どうしたものかと考えていると、一人の騎士とバッチリと視線が噛み合った。


…アレスと仲良くしていた女性の騎士だ。


マーナさんだったよね、確か。



なんとなく気まずくて眉が下がっていくのを自覚する。





しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

公爵夫人は愛されている事に気が付かない

山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」 「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」 「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」 「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」 社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。 貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。 夫の隣に私は相応しくないのだと…。

処理中です...