上 下
17 / 18
後日談

正体不明の感情

しおりを挟む
「奥様!よくお似合いですよ!!!」

今日は結婚式。国をあげてのお祭り騒ぎだった。それにしても身につけている衣装がすごい。大量の宝石に、たっぷりとした布地。すごく繊細な作り。美しい。他の人が着ていたらきっと素直にそう思えた。でも今私の頭にあるのは一つ。

「重い……!!!」

重い、ただひたすらに重い。ぶつくさ文句を言っていると、先に準備を終えたらしいザキが現れた。

「!」

……現れて、固まる。何事かと問いかければ、ばっと腕で顔を隠した。

「え、ザキ、どうしたの……ってまさか、照れてる?」

隙間から除く顔は明らかに赤い。そんな顔、初めて見た。答えない彼に私は気を良くしてそのままくるりと回ってみせる。

「ねえ、ほらほら、綺麗でしょ?んー?綺麗すぎて見られないって?いや~照れちゃうなあ」

あははと笑えば、グッと腰を引き寄せられた。

「綺麗だ。美しすぎて、思わず直視出来なかった。こんなにも美しいお前を妻に迎えられる私は世界一の幸せ者だ。一生をかけて愛すると誓おう」
「……っ!」

ずるい、ずるい。私がザキの顔に弱いって、ザキの声に弱いって、知ってるでしょ。
一気に形成逆転。私の顔が赤くなる。

「お?なんだ、照れたのか。可愛いヤツめ。ほら、こっちを向け」

うりうりと、ほっぺをいじられる。睨みつつ顔を合わせれば、今度はキスを落とされる。

「!!!」
「ふはっ、相変わらず口付けごときで赤くなるのは変わらんな」

ぽこぽこと、抱きしめられたまま胸板を叩くけど、ザキが気にした様子は全くない。
そんな風にじゃれあって、国民に顔見せをして、夜、宴の時。みんな酒が入っているのか、口が緩くなる。

「いやあ、それにしても王、よく笑われるようになりましたな!」
「ん、そうか?」
「そうですよ~!!!雰囲気も柔らかくなりました」

ハレムの女性たちはあの後、全員女給や下働きとなって、王宮のあちこちで見かけるようになった。そんな彼女らが、ワンチャンを狙わないはずがないわけで。ザキに、しなだれかかる女が数人。同性でも顔が赤らむような艶めかしい踊りを踊るのが数人……正体不明のもやっとした感情を持て余しつつ、夜はふけていった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:31,809pt お気に入り:35,206

異世界クリーニング師の記録

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:50

チートなタブレットを持って快適異世界生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:859pt お気に入り:14,313

婚約破棄の現場に遭遇した悪役公爵令嬢の父親は激怒する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:4,890

ヤンデレの重すぎる愛で窒息死する話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

桜の季節

恋愛 / 完結 24h.ポイント:347pt お気に入り:7

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21,876pt お気に入り:1,636

処理中です...