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後日談
3.その頃、件の落とし子は ※
しおりを挟む「……はあ、またかあ~。」
──同じ森の、別の場所。
育ちの良さそうな人間の子供の服に身を包んだラーシュが、つまらなさそうにため息をついた。
彼の背後から伸びるドロドロと粘液をまとった黒い触手の先には、一人の人間が捕らえられていたが──その人物はすでに苦悶の表情のまま事切れている。
「なんで人間の大人ってみーんな、僕みたいに幼気でかわいい子供を見ると、すぐ誘拐して売り捌こうとするのかなあ?」
ラーシュはまるで出来の悪い弟妹の話をするように、呆れた調子でぼやいてみせる。
「まあ油断してくれた方が狩るには楽でいいけど。……それにもうこいつらが面白くなくっても、巣に帰ればあの子が待ってるしね。
あーあ、今日もずっと巣に籠ってイチャイチャしてたかったのに、『食事』って本当めんどくさい。ねえ、お兄さんもそう思うでしょ?」
たった今自分の手で物言わぬ屍に変貌させた相手に話しかけるも、当然返事があるはずもない。
「もー、相づちひとつ打てないなんて、やっぱりつまんないの。まあいいや、もう用はないし早く帰ろっと。」
そう言いながら、新たな犠牲者の遺体をどうでも良さげにポイッ、と打ち捨てた。
ついでとばかりに、犠牲者の胸元で光を帯び始めるブローチ状のタリスマンを自らの触手で叩き割り、発動しかけていた蘇生効果を綺麗さっぱり霧散させてから、悠々とその場を後にしたのだった。
* * * *
生存上必要な「食事」を済ませていそいそと帰路に着くラーシュは、明らかに浮かれきっている。
「ふふっ、これで面倒な用事は終わったし、帰ったらまたシンシアと遊ぼっと♡今度はどんな反応をみせてくれるかなあ♡
あの凛とした表情が僕の手でふわふわになるの、何回見ても飽きないし、どんなにとろけても理性を保とうとする諦めの悪さもいじらしくって好きなんだよねえ♡」
自身が手籠めにし、伴侶にするつもりで縄張りに閉じ込めた彼女のことを思い浮かべて饒舌になるラーシュだったが、いくら熱っぽく語ろうと、その独り言を聞く者はいない。……にもかかわらず、彼は終始上機嫌であった。
「あー、可愛いなあ。これからもいーっぱい気持ち良くして僕に夢中にさせて、ほかのことなんて何も考えられないくらい幸せにしてあげなくちゃ♡それが雄としての義務……愛ってやつだよね♡」
そして口の端をニイ、と上げると、
「それにあと少し、あれを取り込ませれば……ふふっ♡」
恍惚とした表情で呟きを残し、森の奥深くへ消えていくのだった。
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