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第22話 取り戻した記憶②
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一週間の間に影郎が訪れなかったらどうしようと、ましろは気を揉んだが、翌々日に彼はやって来た。いつもここに来るのと同様、下駄をカランコロンと鳴らし、着流しを崩した状態で、ついでに来てみましたというような顔をしてふらっと現れる。いつ何時も飄々とした態度を崩さないのが影郎のモットーらしかった。
「おう、ましろ。しばらく見ない間に大きくなったなあ」
「ついこないだ会ったばかりでしょ。影郎はすぐ冗談を言うんだから。あなたのこと待ってたのよ」
「何と! ましろにまで好かれるとは、『せくしい』な男は辛いのう。おとはに聞かれたら大変じゃ」
「冗談言ってる場合じゃねーよ。お前に相談したいことがあるんだよ」
商工会館が火事になるという話は、バクさんから影郎に伝えられた。それまで軽口を叩いていた影郎だが、だんだんしかめ面へと変化していく。
「蘇芳と言ったな、それからそいつには会っていないのか?」
「うん。昨日も今日も神社に行ったけど会えなかった。どこかに隠れてるかもと思ってあちこち探したんだけどいなかった。どこに行ったんだろう?」
影郎は、ずっと眉間にしわを寄せたまま何やら考え事をしている。何がそんなに引っかかるのだろう? バクさんも影郎も、大人の考えることは分からない。
「問題はどうしてそれをましろに教えたかということじゃな。とりあえず、聞いてしまったからには、何かせんといかんじゃろ。知らなければそれで済んだんだが」
「それで済んだってどういうことよ? 商工会館が火事になったら大変じゃない? 隣の家に燃え移ることだってあるのよ?」
「だから対策すると言ってるじゃろ。商工会館へはお千代さんを通じて伝えてもらって、漏電がないか調べてもらおう。火事はそれで防げるかもしれん。問題はその後じゃが……」
ましろは、影郎の考えていることが分からず首をひねった。
「おい、ましろ。その蘇芳とか言う奴は何を望んでいる? 何かお前に要求してなかったか?」
「え? 何も言ってなかったよ? お礼に何かあげろって言うの?」
「わしが一緒に着いて行くか……いや、それだと逆効果になるかもしれんの。向こうが何を望んでいるか分かれば一番いいんじゃが……」
ぶつくさ呟く影郎に、ましろはとうとうしびれを切らした。
「ぶつぶつ言ってないではっきり教えてよ! 一体何が問題なのよ?」
「もし、今度会ったら蘇芳とやらが何を望んでいるか聞いて来い。分からないと言ったら、好きな食い物を尋ねるんじゃ。なんとか物で気持ちを収めてもらえるようにしろ。相手は、対価を要求するかもしれん」
「え? 対価? それどういう意味?」
まだ小学生のましろにとっては難しい言葉だ。バクさんが代わりに答えてくれた。
「お前は商工会館が火事になると教えてもらったんだろう? それならお前も、相手に何かお返しをしなきゃいけないんだ。それを対価と言う。向こうが望む対価が実現可能なものであれば問題ないが、到底受け入れられない要求をされる恐れもある。例えば、一緒にあやかしの世界へ行ってくれと言われたって無理だろう? そんな無茶を言われたら困ったことになると心配してるんだ」
「えっ! そんなの無理に決まってるじゃん! 人間とあやかしの関係ってそんな重いものだったの? あなたたち普段対価なんて言わないじゃん!」
「わしらとお千代さんだって同じだぞ。おいしいご飯をいただく代わりにこの店を守っている。お互い対価を支払っているんじゃ」
ましろは初耳だった。ただの友達だと思っていたのにそんな契約があったとは。
「何もそんなに驚くことじゃない。人間の間だって多くが対価を介した関係だろう? どちらか一方だけが無償の奉仕をするなんて、親子ですらそうないよ。本人の気付いてないところで、実は対価を交換し合っている」
「あやかしの場合は、もうちっと厳密だがな。人間の言葉で言うと『契約』に近い」
「私、蘇芳と『契約』なんてした覚えないよ?」
「だから困っておるのだ。向こうもそんな深い考えはあったのかもしれんしなかったのかもしれん。今の話だけでは読み取れんのじゃ。だからもう一度あって真意を確かめて来い。その辺がはっきりしないと、何だか据わりが悪い」
そんなことを言われても……とましろは途方に暮れてしまった。契約とか対価なんて今のましろには難しい。一応説明はされたがいまいちピンと来ない。親が子供にかける愛情は無償の愛ではないのか。まだまだ世の中には難しいことがたくさんある。
商工会館の火事の方は、千代の訴えを聞いて検査してみたら、本当に漏電している箇所が見つかって難を逃れることができた。かなり古い建物であちこち老朽化しており、建て替えの話が上がっていた矢先の出来事だった。千代は話の出どころをぼかしたので、何となく自分の手柄になってしまったことを罰悪く思っているらしい。
しかし、これで終わりではない。影郎が言うには、問題はこれからだそうだ。ましろは、前よりも必死に蘇芳のことを探した。一日に何度も公園に足を運んだがなかなか蘇芳は現れない。そのうち、ましろがここにいられる三週間の期限が来てしまうので一日たりとも無駄にはできないのに。影郎に言われたことが頭にこびりついているので、だんだん焦って来る。
そんな時だった。木の影から蘇芳がひょっこり顔を出したのは。
「もー! どこ行ってたのよ! 探したのよ!」
安心の余りつい大声になってしまう。蘇芳はびっくりしてなかなか木の影から出てこなかった。やっとのことでおずおずと姿を現わすと、まっすぐましろを見つめた。
「私が探してること知ってたんでしょう? なんで隠れていたのよ?」
「別に理由はないよ。また会うことになるとは思わなかったから。どうして俺のこと探していたんだい?」
「火事のこと教えてくれたお礼をしようと思ってたのよ。ねえ、何か欲しいものない?」
それを聞いた蘇芳は目を丸くして驚いた。相手の反応を見て、変なことを言ってしまったことにましろも気付く。
「ごめん。何のことだか分からないよね。ええと……蘇芳はどうして火事のこと教えてくれたの?」
「え? そんなの知ってたからとしか言いようない……何で知ってるかと言えば、俺はそう言うものだからというだけなんだけど」
そっかーとましろは困ったように答えた。これでは、影郎の言う「対価」が分からないじゃないか。
「そうだ! 何か食べたいものってない? うち定食屋やっているって言ったでしょ? おばあちゃん料理うまいから大抵のものは作れるんだけど?」
蘇芳は更に驚いた顔をした。食べ物なんてなくても生きていけるのに、どうしてましろがそんな提案をしたか分からないようだ。
「えええ……そんなこと急に言われても……そうだな、あれがあった。だんご、って知ってるか?」
「団子? 知ってるに決まってるじゃない! 団子が食べたいのね? みたらし? 醤油? あんこ? 粒あんとこしあんがあるけど?」
「いきなりそんなにたくさん言われても分からないよ。どろっとしてて甘じょっぱかったかな?」
「それならみたらしね! いいわ、うち和菓子屋じゃないけど作ってあげる! 明日持って来るから同じ時間にここで待ち合わせしようね!」
そう言ってこの日は蘇芳と別れた。和菓子屋に売っている上新粉のやつは作れないが、白玉団子なら自分でもできる。せっかくだから手作りしてあげよう。ましろはルンルン気分で家に戻った。
「おう、ましろ。しばらく見ない間に大きくなったなあ」
「ついこないだ会ったばかりでしょ。影郎はすぐ冗談を言うんだから。あなたのこと待ってたのよ」
「何と! ましろにまで好かれるとは、『せくしい』な男は辛いのう。おとはに聞かれたら大変じゃ」
「冗談言ってる場合じゃねーよ。お前に相談したいことがあるんだよ」
商工会館が火事になるという話は、バクさんから影郎に伝えられた。それまで軽口を叩いていた影郎だが、だんだんしかめ面へと変化していく。
「蘇芳と言ったな、それからそいつには会っていないのか?」
「うん。昨日も今日も神社に行ったけど会えなかった。どこかに隠れてるかもと思ってあちこち探したんだけどいなかった。どこに行ったんだろう?」
影郎は、ずっと眉間にしわを寄せたまま何やら考え事をしている。何がそんなに引っかかるのだろう? バクさんも影郎も、大人の考えることは分からない。
「問題はどうしてそれをましろに教えたかということじゃな。とりあえず、聞いてしまったからには、何かせんといかんじゃろ。知らなければそれで済んだんだが」
「それで済んだってどういうことよ? 商工会館が火事になったら大変じゃない? 隣の家に燃え移ることだってあるのよ?」
「だから対策すると言ってるじゃろ。商工会館へはお千代さんを通じて伝えてもらって、漏電がないか調べてもらおう。火事はそれで防げるかもしれん。問題はその後じゃが……」
ましろは、影郎の考えていることが分からず首をひねった。
「おい、ましろ。その蘇芳とか言う奴は何を望んでいる? 何かお前に要求してなかったか?」
「え? 何も言ってなかったよ? お礼に何かあげろって言うの?」
「わしが一緒に着いて行くか……いや、それだと逆効果になるかもしれんの。向こうが何を望んでいるか分かれば一番いいんじゃが……」
ぶつくさ呟く影郎に、ましろはとうとうしびれを切らした。
「ぶつぶつ言ってないではっきり教えてよ! 一体何が問題なのよ?」
「もし、今度会ったら蘇芳とやらが何を望んでいるか聞いて来い。分からないと言ったら、好きな食い物を尋ねるんじゃ。なんとか物で気持ちを収めてもらえるようにしろ。相手は、対価を要求するかもしれん」
「え? 対価? それどういう意味?」
まだ小学生のましろにとっては難しい言葉だ。バクさんが代わりに答えてくれた。
「お前は商工会館が火事になると教えてもらったんだろう? それならお前も、相手に何かお返しをしなきゃいけないんだ。それを対価と言う。向こうが望む対価が実現可能なものであれば問題ないが、到底受け入れられない要求をされる恐れもある。例えば、一緒にあやかしの世界へ行ってくれと言われたって無理だろう? そんな無茶を言われたら困ったことになると心配してるんだ」
「えっ! そんなの無理に決まってるじゃん! 人間とあやかしの関係ってそんな重いものだったの? あなたたち普段対価なんて言わないじゃん!」
「わしらとお千代さんだって同じだぞ。おいしいご飯をいただく代わりにこの店を守っている。お互い対価を支払っているんじゃ」
ましろは初耳だった。ただの友達だと思っていたのにそんな契約があったとは。
「何もそんなに驚くことじゃない。人間の間だって多くが対価を介した関係だろう? どちらか一方だけが無償の奉仕をするなんて、親子ですらそうないよ。本人の気付いてないところで、実は対価を交換し合っている」
「あやかしの場合は、もうちっと厳密だがな。人間の言葉で言うと『契約』に近い」
「私、蘇芳と『契約』なんてした覚えないよ?」
「だから困っておるのだ。向こうもそんな深い考えはあったのかもしれんしなかったのかもしれん。今の話だけでは読み取れんのじゃ。だからもう一度あって真意を確かめて来い。その辺がはっきりしないと、何だか据わりが悪い」
そんなことを言われても……とましろは途方に暮れてしまった。契約とか対価なんて今のましろには難しい。一応説明はされたがいまいちピンと来ない。親が子供にかける愛情は無償の愛ではないのか。まだまだ世の中には難しいことがたくさんある。
商工会館の火事の方は、千代の訴えを聞いて検査してみたら、本当に漏電している箇所が見つかって難を逃れることができた。かなり古い建物であちこち老朽化しており、建て替えの話が上がっていた矢先の出来事だった。千代は話の出どころをぼかしたので、何となく自分の手柄になってしまったことを罰悪く思っているらしい。
しかし、これで終わりではない。影郎が言うには、問題はこれからだそうだ。ましろは、前よりも必死に蘇芳のことを探した。一日に何度も公園に足を運んだがなかなか蘇芳は現れない。そのうち、ましろがここにいられる三週間の期限が来てしまうので一日たりとも無駄にはできないのに。影郎に言われたことが頭にこびりついているので、だんだん焦って来る。
そんな時だった。木の影から蘇芳がひょっこり顔を出したのは。
「もー! どこ行ってたのよ! 探したのよ!」
安心の余りつい大声になってしまう。蘇芳はびっくりしてなかなか木の影から出てこなかった。やっとのことでおずおずと姿を現わすと、まっすぐましろを見つめた。
「私が探してること知ってたんでしょう? なんで隠れていたのよ?」
「別に理由はないよ。また会うことになるとは思わなかったから。どうして俺のこと探していたんだい?」
「火事のこと教えてくれたお礼をしようと思ってたのよ。ねえ、何か欲しいものない?」
それを聞いた蘇芳は目を丸くして驚いた。相手の反応を見て、変なことを言ってしまったことにましろも気付く。
「ごめん。何のことだか分からないよね。ええと……蘇芳はどうして火事のこと教えてくれたの?」
「え? そんなの知ってたからとしか言いようない……何で知ってるかと言えば、俺はそう言うものだからというだけなんだけど」
そっかーとましろは困ったように答えた。これでは、影郎の言う「対価」が分からないじゃないか。
「そうだ! 何か食べたいものってない? うち定食屋やっているって言ったでしょ? おばあちゃん料理うまいから大抵のものは作れるんだけど?」
蘇芳は更に驚いた顔をした。食べ物なんてなくても生きていけるのに、どうしてましろがそんな提案をしたか分からないようだ。
「えええ……そんなこと急に言われても……そうだな、あれがあった。だんご、って知ってるか?」
「団子? 知ってるに決まってるじゃない! 団子が食べたいのね? みたらし? 醤油? あんこ? 粒あんとこしあんがあるけど?」
「いきなりそんなにたくさん言われても分からないよ。どろっとしてて甘じょっぱかったかな?」
「それならみたらしね! いいわ、うち和菓子屋じゃないけど作ってあげる! 明日持って来るから同じ時間にここで待ち合わせしようね!」
そう言ってこの日は蘇芳と別れた。和菓子屋に売っている上新粉のやつは作れないが、白玉団子なら自分でもできる。せっかくだから手作りしてあげよう。ましろはルンルン気分で家に戻った。
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