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姉物語・墓参り
しおりを挟むもう会えない私の大好きな愛しい、愛しい、愛しい×∞……、弟たち。
二人とは年がだいぶ離れちゃったけど、お姉ちゃんは今も昔と変わらずとても元気だよ。
あなた達二人は喧嘩をしたとしてもちゃんと仲良くしてますか──。
目の前の積まれただけの石に向かって思いを告げるが返事はなにもない。
まぁ、あたりまえか。
逆に返事があったらホラーもしくはギャグだ。でも心の整理というか安寧のためのこの行為をしてもう何年になるのだろうか……。
こんな事は無駄だと──意味はないのだと、自己満足の部類だと言うことはちゃんとわかってるのだ。
二人のお墓の前でいくら泣いたって、どんなに質問したって、そこに二人が居ないことくらいちゃんとわかっている。
あぁ、そう言えばそんな歌がかなり前にヒットしたっけね……。
20年前に我が家の天使のように愛らしく、モデルの女の子よりも可愛い末の弟はわき見運転と言う過失による交通事故で命を落とした。
私達家族は親族も含めて深い悲しみに覆われ、すすり泣く日々だった。
加害者は少し離れているが同じ市内の人で、弟の荷物から財布を抜き取ると言う少しゲス……と言うかクズな行動をした為に悪質と判断されて交通事故にしてはちょっと長めの刑期が下された。
本当に末の弟は美少女と言われるほどに可愛らしくて近所でも学校でも人気者だった。
まぁ、家族が過剰とも言える過保護になる程可愛いのに本人はナノミクロンも可愛いとは思っていない。
強いて言えば自分は両親の劣性遺伝でかなり平凡なのだと思っていたみたいだけど──。
弟のルーちゃんが亡くなって、うちは喪中と言うこともあり静かに暮らしていたのだけど、虚無感からなのかは不明だが近所の人や弟の小中高の同級生等が主体となって街中やネット上でも署名活動したらしくてそれによって刑期が延びたのだとか、意味はなかったのだとか……。
真実は私にはわからない。
でも変に冷静な我が家の見解は加害者の刑期が延びたのは運転の過失+目撃情報があるのにも関わらず被害者の信号無視、過失だと嘘をついて認めないこと+買い物袋に入っていた財布だけを盗んだという窃盗等々の積み重ねだと思うんだよね……。
署名とかしてくれたみんなのその行動は嬉しいけど、家族としては加害者がちゃんとルーちゃんの墓の前で謝ってくれればそれでいいと私含めて全員が心のなかで無理矢理そう思ってたのよ。
例え加害者の供述が自分を擁護するために嘘ばかり吐いたとしても、最後は謝ってくれればそれでよかったんだ。
時間の経過と共に私たち家族はきっと前へ進めるからね……。
でも加害者は心で何かを燻らせたまま刑期を全うし、出所したその日の内に彼は私のもう一人の弟を逆恨みなのか闇夜に紛れて背後から刺し殺した。
そもそも安全を怠らなければ、ルーちゃんの財布を盗んだのを拾ったと嘘つかなければ、過失を認めれば!
少しは情状酌量の余地はあったかもしれないのに──。
いや、彼の家族も周囲から白い目で見られないで済んだかもしれないのに……。
しかし今度は完全なる殺意を持って弟の夜都を刺した。
それも取り憑かれたように何度も何度も……。
犯行現場に居合わせた一般人が慌てて電話をして呼んだ警察が現行犯逮捕したらしいが聞いた話だと警察が来ても刺すのを止めなかったのだとか──。
二人とも、凄く痛かったよね……。
被害にあった当事者以外の誰も想像なんて出来ないほどに苦しくて痛かったよね……。
なんでアイツ、愛しい弟たちを私から奪ったくせに無期懲役なんだろ──。
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