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3話
しおりを挟む「大丈夫ですか?」
「はい!」
「なら良かった。僕が親しくしていることで貴女が傷つくようなことがあっては、僕としても辛いですから」
「ご迷惑をお掛けしました」
「あっ、いえ! そういう意味ではないですよ! 貴女が悪いとか、そういう話では!」
急に水をかけられたり。
廊下で足を引っ掛け転ばせようとされたり。
荷物を捨てられかけたり。
突然駆け寄り暴言を吐くといった行為を繰り返されたり。
とにかく酷い日々だった。
だが、ある時そのことをウォルクに話すと「対処するよ」と言ってくれて、その後彼が動いてくれたためいじめはあっという間になくなっていった。
さすがに仲良くはできていないけれど……。
でも虐められるよりかはずっとましだ。
「……お気遣いありがとうございます、ウォルクさん」
◆
学園卒業後、私たちは結婚した。
学園のプリンス。
そうまで呼ばれ皆から深く愛されていた人が夫だなんていまだに信じがたい。
でもこれは現実だ。
妄想ではない。
幻覚を見ているのでもない。
彼は確かに私の隣に存在している。
そうそうそういえば。
かつて婚約者だったルルルはというと、私を切り捨てた後本気で愛していた女性と結婚しようとするも過剰に追い掛け回し過ぎたために逃げられてしまったようだ。
彼の恋は成就せず。
いや、結婚という意味では、か。
いずれにせよ、彼は、一番愛していた人と結ばれることはできなかったのである。
そしてまた、女性に逃げられたちょうどその頃に数回連続で事故に遭い、家から出ることを極端に恐れるような精神状態になってしまったそうで。それゆえ今は家から出ることも難しく、出会いなど一切ない状態だそう。親からは「早く結婚しないと」と急かされているようだが、本人は「絶対無理だ、こんなことになるならあの時あのままあいつと結婚しておけば良かった」と言うばかりで一向に進展はないのだそうだ。
そんな雑な理由で結婚されなくて良かった……。
心の底からそう思う。
◆終わり◆
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