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18話「決めました」(2)
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「そうやって他人にどう思われるかばっかり考えて何になるんだい!?」
「すみません……」
「アタシは帰るよ! マコトは好きにしな!」
「……分かりました」
アカリと険悪になる気なんてなかった。それなのに、私は彼女を怒らせてしまった。原因は明らか。私の、他人の顔色を窺い続けるような態度と言葉が、彼女を苛立たせたのだろう。
寝ているトウロウは含めないとして、室内には私一人になってしまった。
でも、対処するにはもう遅い。
アカリはとっくに部屋から出ていってしまったのだ。
私は狭い和室の中で一人溜め息をつく。それも、はぁー、と長めの溜め息。場の空気を重苦しくしてしまうようなことをするべきではないと分かっていても、自然に口から漏れてしまうものは止められなかった。
だが、その直後。
「……随分大きな溜め息でしたね」
聞き慣れた声を耳にし、驚いて声がした方向ーートウロウの方を見る。
そして気づいた。
目を離した隙に彼が目覚めていたことに。
「トウロウさん!」
「あぁ、もう、騒がないで下さいよ……」
「ご、ごめんなさい!」
慌てて叫んでしまったことを後から悔やむ。
急に大きな声を発するなんて、トウロウが一番嫌がりそうなことではないか。それは、少しでも考えれば簡単に分かったことのはず。それすら考えられなかった自分があまりに情けない。
「刺された傷はどうですか? 大丈夫そうですか?」
「……あれが大丈夫に見えましたか」
「そ、そうですよね! ごめんなさい! 取り敢えず……死なずに済んだようで、安心しました」
あそこで刺されて、そのまま落命することになったら……。
考えたくもないことだ。
少し想像するだけでも胃痛がしてくる。
「……マコトさんは……大袈裟ですね」
「本気で心配したんですよ!?」
「あぁ、はい。それは分かりましたから……ほら、もう……騒がないで下さい。頭痛が悪化します」
なぜこのタイミングで頭痛が出てくるのか?という点だけは謎だが、そこは深く考えるべきではないのだろう。
私は横たわっている彼のすぐ近くまで行き、正座する。姿勢と共に心を正して、彼と向き合う。
「トウロウさん、その……迷惑をかけてしまってすみませんでした」
アカリがこの場にいなかったのは、ある意味幸運だったのかもしれない。
ふとそんなことを思った。
ここには、トウロウと私、二人しかいない。でも、だからこそ、こうして彼と向き合うことができる。トウロウ以外誰にも気を遣わなくていい、というのは、かなり大きい。
「べつにマコトさんのせいではないです」
「でも、私が人の子だから、あんな危ない方に絡まれてしまったんです」
「はぁ……何だか色々、面倒です……。そういうのはもういいですよ、面倒なので……」
面倒、か。
確かにそうかもしれない。
自身の言動を面倒臭がられるというのは、傷ついてしまう出来事ではある。けれど、相手がトウロウであれば、その辛さは多少緩和される。彼が本心を述べるタイプの人間だと理解したうえで接しているからだ。
「トウロウさん。私、決めました。貴方を人間にします」
「すみません……」
「アタシは帰るよ! マコトは好きにしな!」
「……分かりました」
アカリと険悪になる気なんてなかった。それなのに、私は彼女を怒らせてしまった。原因は明らか。私の、他人の顔色を窺い続けるような態度と言葉が、彼女を苛立たせたのだろう。
寝ているトウロウは含めないとして、室内には私一人になってしまった。
でも、対処するにはもう遅い。
アカリはとっくに部屋から出ていってしまったのだ。
私は狭い和室の中で一人溜め息をつく。それも、はぁー、と長めの溜め息。場の空気を重苦しくしてしまうようなことをするべきではないと分かっていても、自然に口から漏れてしまうものは止められなかった。
だが、その直後。
「……随分大きな溜め息でしたね」
聞き慣れた声を耳にし、驚いて声がした方向ーートウロウの方を見る。
そして気づいた。
目を離した隙に彼が目覚めていたことに。
「トウロウさん!」
「あぁ、もう、騒がないで下さいよ……」
「ご、ごめんなさい!」
慌てて叫んでしまったことを後から悔やむ。
急に大きな声を発するなんて、トウロウが一番嫌がりそうなことではないか。それは、少しでも考えれば簡単に分かったことのはず。それすら考えられなかった自分があまりに情けない。
「刺された傷はどうですか? 大丈夫そうですか?」
「……あれが大丈夫に見えましたか」
「そ、そうですよね! ごめんなさい! 取り敢えず……死なずに済んだようで、安心しました」
あそこで刺されて、そのまま落命することになったら……。
考えたくもないことだ。
少し想像するだけでも胃痛がしてくる。
「……マコトさんは……大袈裟ですね」
「本気で心配したんですよ!?」
「あぁ、はい。それは分かりましたから……ほら、もう……騒がないで下さい。頭痛が悪化します」
なぜこのタイミングで頭痛が出てくるのか?という点だけは謎だが、そこは深く考えるべきではないのだろう。
私は横たわっている彼のすぐ近くまで行き、正座する。姿勢と共に心を正して、彼と向き合う。
「トウロウさん、その……迷惑をかけてしまってすみませんでした」
アカリがこの場にいなかったのは、ある意味幸運だったのかもしれない。
ふとそんなことを思った。
ここには、トウロウと私、二人しかいない。でも、だからこそ、こうして彼と向き合うことができる。トウロウ以外誰にも気を遣わなくていい、というのは、かなり大きい。
「べつにマコトさんのせいではないです」
「でも、私が人の子だから、あんな危ない方に絡まれてしまったんです」
「はぁ……何だか色々、面倒です……。そういうのはもういいですよ、面倒なので……」
面倒、か。
確かにそうかもしれない。
自身の言動を面倒臭がられるというのは、傷ついてしまう出来事ではある。けれど、相手がトウロウであれば、その辛さは多少緩和される。彼が本心を述べるタイプの人間だと理解したうえで接しているからだ。
「トウロウさん。私、決めました。貴方を人間にします」
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