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前編
しおりを挟む美しい貴族の令嬢ドゥミーネと王子ヴァルフォラントは婚約者同士であった。
しかしヴァルフォラントはドゥミーネをそれほど気に入っておらず、婚約しているにもかかわらずほとんど放置していた。
「こんなに呑んでいいんですかぁ? ヴァルフォラント様ぁ」
「いいんだよ!」
しかもヴァルフォラントはいつも宴をしていて。
「でもぉ、婚約者さんはぁ?」
「放置だ放置! それでいいんだ! 婚約なんぞ形だけだからな!」
「あらぁ、うふふ、可哀想に。でもそうですかぁ。意外とそれほど仲良しでないのですねぇ」
「仲良し? 言うな! そんなわけがないだろう!」
その場において彼はドゥミーネを馬鹿にするような言葉をやたらと並べていた――酒が入っているということもあったのだろうが、酒だけのせいというわけでもないだろう――本心あってこその発する言葉である。
それから少しして呑み相手の女性の中からお気に入りを見つけたヴァルフォラントはドゥミーネとの婚約を一方的に破棄した。
これで幸せになれる。
自由を掴める。
ヴァルフォラントはそう思っていたことだろう。
しかしそう都合よく話は進まず。
婚約破棄の数時間後、ヴァルフォラントは急に倒れて気を失い、それから目を覚ませなくなった。
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「聞こえているわ!
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