美しい貴族の令嬢である婚約者を捨てた愚かな王子の末路は……。

四季

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後編

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 ◆


 ヴァルフォラントはただただ走っていた。
 床、壁、天井、極端に彩度の高い色で構成されているチェック柄の通路を彼は走り続けていた。

「何なんだ、ここは……」

 徐々に息が上がってくる。

 しかし出口は見えてこない。

 まるで迷宮。
 そんな中で彼はただひたすらに足を動かしている。

 やがて虹色の光が彼を包んだ。

 そして次に視界が開けた時、彼は廃墟と化した王都に佇んでいた。

「なっ……こ、これは一体……」

 確かに生まれ育った国だ。

 しかし人は誰もいない。
 建物ももうずっと使われていないというほどに朽ちている。

 ――と、そこへ、背後から怪物が襲いかかってきた。

「えっ……」

 それは完全に化け物であった。
 ヴァルフォラントはその生き物を見たことがないし情報として知ってもいない。

 巨大な猪のような姿をしているのだが、背中に大量の眼球があり、前面には人間の腕に似たものが百本以上生えている。

 まさに怪物。

 まさに悪魔。

 そして、絶望の化身。

「うわあああああ!!」

 ヴァルフォラントはその化け物に何時間も追い掛け回された。

 ……もっとも、この世界においては、時間など誰も数えてはいないのだが。

 その後もヴァルフォラントは怪物に追い掛け回され続けた。
 怪物一匹が消えてもまた次の怪物が現れてまた追い掛けられるということを永遠に繰り返していた。

 ――ちょうどその頃、現実世界のヴァルフォラントは死亡していた。

 彼は結局あの日から一度も目覚めなかった。

 ヴァルフォラントは悪夢の中で生涯を終えたのであった。


 ◆


 ドゥミーネは隣国の王子と結婚した。
 そして多くの人から愛されて幸せに暮らせている。

 彼女はもうヴァルフォラントのことを思い出しはしない。

 なぜって?

 簡単なこと。

 彼女にとって彼はもう遠い過去の中の欠片でしかないから。

 ただそれだけである。


◆終わり◆
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