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前編
しおりを挟む長きにわたり広い領土を治めてきた家に一人娘として生まれた私には、気がついた時から決まっていた婚約者がいた。
その人の名はプルトク。
新興領地持ちの家の子息で、さらりとした赤茶の髪が見る者に綺麗な雰囲気を感じさせてくれる青年だ。
彼は爽やかな雰囲気をまとっている。
それゆえ女性からの人気も高い――それによって私はたびたび迷惑を被ってきた。
ある時は「家柄がいいだけなのにプルトク様と婚約するなんて生意気」「あり得ない女」などと言われ虐められ、またある時は「プルトク様を簡単に捕まえた貴女と一緒にいたら悲しくなるからもう無理。縁切る」と親しかった友人からも告げられて。
資産の多い家に生まれてもすべてが思い通りになるわけではなかった。
ただ、それでも、私は生きてきた。
この家に生まれた私の使命はこの家のために生きること――そう信じて。
けれどもある日、朝早くに近所の公園へ呼び出されたと思ったら。
「悪いけど、ルリーナさん、貴女との婚約は破棄します」
プルトクからそんなことを告げられてしまった。
まだ肌寒い時間帯だったこともあって、一瞬何が何だか分からず硬直してしまう。
「婚約破棄……ですか」
「はいそうです。もう貴女とは生きません」
「えっ、あの、それって……本気なのですか!?」
「はい本気です」
それからプルトクは、本当に愛した女性ができたということを明かしてくれた。
彼は何も隠さなかった。
多分、今日は、はじめからすべて明かす気で話をしに来ていたのだろう。
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