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後編

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「そういうことなので、貴女とはお別れします」
「そんな……」
「すみません。でももう決めたこと、それを変えることはできないのです。僕は僕の道を歩みたい、だから、ルリーナさんはルリーナさんの道を歩んでください」

 プルトクは淡々とそう言って、一礼し、去っていってしまった。

 その後私は家に帰って親にその件について報告した。

「……そうか。分かった。そんなやつに可愛い娘をやるのは嫌だからな、婚約破棄は受け入れることとしよう」
「そうね、その方が良さそうだわ。今聞いた感じじゃ、彼はルリーナを幸せにしてくれそうにないもの」

 はじめは二人ともかなり驚いたような顔をしていたけれど、すぐに冷静な表情になった。

「だが、金はしっかりと取る」
「償いのお金ね」
「ああそうだ。よし、ルリーナ、あとは我々に任せておくがいい。ルリーナは……悲しいだろうが、彼との縁は諦めてくれ。その代わり、うちで気ままにゆったり過ごしていて良いぞ」

 こうして私とプルトクの縁は切れた。

 これで良かったのかな? 私、まずいことしたんじゃないだろうか。切り捨てられてしまって、そんなので大丈夫なのかな?

 不安はたくさんあった。

 でも私は前を向いて――取り敢えずゆったりと今を楽しむことにした。

 それからはよくティータイムを楽しんだ。一人で茶を飲むのもよし、複数人で喋りながらお茶するのもよし。楽しみ方は無限にある。茶さえあればティータイムはできる、後はどんな方向性で楽しむかという部分だけだ。方向性は一つでなくていい。いろんな方法で楽しめば、それがその時最も素敵なティータイムとなるのだ。もちろん、お菓子も用意すればもっと幸せ。

 そんな風にして私はのんびり暮らしていたのだが――プルトクはというと、あの後父から酷いお叱りを受けたうえかなりの額の償いの金を支払わされることとなり、自分では払いきれず家の金まで使わざるを得なくなって、急激に貧しくなってしまったそうだ。

 彼は今、夢なんて抱けない日々の中で生きているらしい。

 ま、自業自得だろう。


◆終わり◆
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