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8話「高圧的な女性は厄介です」

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「カサブランカ、皆が通るところにティーセットを出さないで」

 廊下にテーブルとチェアを出し、優雅な高級な茶葉をふんだんに使ったティータイムを楽しむカサブランカ――しかし、元先輩後輩であったベテラン侍女から注意を受ける。

「あら、侍女のくせに偉そうね」

 だが今やカサブランカは侍女を越えた存在。そう、王子ルミッセルの婚約者となっているのだ。それゆえ、彼女は、何を言われようとも怯まない。それどころか、手にした権力を身勝手にふるっている。

「貴女だって元侍女じゃないの」
「無礼者!! あたしは王子の婚約者よ、あんたらとは階級が違うの。生意気な口をきかないで」

 カサブランカは腕組みをして注意してきた侍女を睨んだ。

「でも困るのよ、そこを勝手に使われたら……」
「うっさいわね! 黙りなさいよ!」
「ティータイムなら自室でされてはどうです?」
「はぁ? 口ごたえしてんじゃないわよ! ああそれとも罰を受けたいのかしら。王子の婚約者に逆らった罰を」

 侍女は顔をしかめる。

「そんなことを言っているのではありません」

 しかしその時には既にカサブランカは怒ってしまっていた。

「生意気な侍女、ほんとむかつく! いいわ、罰を与えるから。彼に全部話してやる!」
「権力の使い方には気をつけるべきです」
「あたしに逆らうやつはみんなくび、いいえ……打ち首よ!!」

 吐き捨てて、カサブランカはその場から去っていった。

 彼女はずっとぷんすかしていた。

 そんなカサブランカの様子を遠くから見ていた若めの侍女らはひそひそ話をする。

「嫌ねぇ彼女、勘違いしちゃって。あんな偉そうに」
「酷すぎるわぁ」
「リーダーにあんな言い方するなんて酷いわね」

 そう、既に彼女は侍女らから嫌われているのである。

「でも……打ち首、とか……怖いわ。それに、少し意見を言われたからって脅すなんて……どうかしていると思うわ……」
「そうよねぇ」
「何なんだろあれ。ほんと意味不明だわ」
「感じ悪すぎ!」
「このままここにいて、大丈夫……なのかな……。もしかして、辞めた方がいいんじゃ……」

 その後カサブランカは本当にこの件についてルミッセルへ告げ口した。また、単なる報告だけではなく、自分に口ごたえしたリーダー侍女について処刑するよう訴えた。ルミッセルもさすがに乗り気ではなかった、が、カサブランカからの圧は凄まじいもので。ルミッセルは従うしかなく、カサブランカの希望を通すべく動いた。

 そして、ついに、リーダー侍女が処刑されてしまう。

 ――だが、その翌日、城で働いていた侍女らは一斉に退職した。

 もうついてゆけない。
 そういう理由での退職だった。
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