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前編
しおりを挟む私には姉がいる。
だが普通の姉ではない。
これは表向きは一切明かされていないことだが――彼女は裏で暗殺稼業を営んでいるのだ。
とはいえ、私にとってはとても優しい姉である。
そんな姉のことが私は大好き。たとえ黒い行いを生業としているとしても、だ。それに、それでも姉であることに変わりはないし。だから私は彼女を愛し尊敬している。
◆
「アンタみたいな地味な女、三日で飽きたわ。てことで、婚約は破棄な!」
婚約者レッドフィルはいきなり告げてきた。
昨日まではそんなことは言っていなかった。
様子の変化さえなかった。
まるで今さっき思いついたかのような婚約破棄だ。
「待ってください、それはあまりに……」
「婚約は破棄って言ってるだろ!!」
「っ……」
「いいから消えろよ! しつけーんだよ!」
こうして私は彼の家から出る。
するとそこには姉がいて。
「姉さん……?」
「婚約破棄を告げられたようね」
「あ……う、うん」
「出てきて本当に良かったの? 粘らなくて良かったの?」
「仕方ないよ」
彼女が言うには、物陰に潜んで会話を聞いていたらしい。
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