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中編

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「そういうことみたいですけど、ガイエル、どう言い訳するつもりなのですか?」
「はぁ!? 婚約者の言うことより見知らぬ女の言うことを信じるのかよ!?」
「では、その女性の言っていることは嘘なのですね? なら、彼女に、完全な遊びだと認めさせてはどうでしょう」
「……うっせえな、ほっとけよ」

 ガイエルはいつもこんな感じ。
 反抗期の子どものようだ。

「分かりました。では、一旦解散としましょう」

 ここで三人で話を続けてもきっと何も生まれない。話が進むこともないし、こちらが不快な思いをするだけだろう。そう判断したので、私はこの場から去ることにした。念のため、二人が汚していたシーツだけ回収して。

「お、おい! 待てよっ。何でシーツ持ってくんだよっ!?」
「証拠品回収です」
「おい! 何だよそれ! 待て、待てって!」

 何やら慌てているが、もはや私には関係のないことだ。


 シーツを持ったまま部屋を出て廊下を歩いていると、正面から使用人の女性がやって来た。ガイエルの家で働いている女性で、数回話したため彼女のことはそれなりに知っている。当然、向こうも私のことを知っている。

「こんにちは、ローズ様。シーツをお持ちだなんて、珍しいですねぇ」
「そうなんです」
「洗濯物に入れて参りましょうか?」
「いえ、これは洗わないものなのです」

 私は笑顔で言葉を返す。

「ガイエルさんの浮気の証拠品なので」
「えっ……」
「知らない女性と生まれたままの姿で抱き合っていちゃついていたのです。驚きですよね」

 使用人の女性は引いたような顔をした。

 無理もない。いきなりそんなことを聞かされたら、誰だって驚かずにはいられないだろう。しかも、そんな話を振ってきたのが日ごろ冗談なんて言わない人だったら、余計に驚くはずだ。
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