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後編
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「何を言ってもきっと無駄なのでしょうね。……分かりました、婚約破棄を受け入れます」
「あぁ。二度と俺の前に現れるな」
「はい、そうします。では、これにて失礼します」
私たちの関係は終わった。
その直後、実家へ帰って数日が経った頃だろうか。以前隣に住んでいてよく遊んでくれていた異性の幼馴染みが、私が暮らす街へ再び引っ越してきた。一度は親の仕事の都合でこの街から出ていったのだが、その仕事も落ち着き、ここへ帰ってくることができたようだ。
私は喜んだ。
別れる時は辛かった、だからこそ、また会えたことがこんなにも嬉しい。
彼もまた、私との再会を喜んでくれていた。
そして私と彼は結婚することになった。
確かにあの頃から時間は経っている。子どもだった私たちが大人になるくらい。途方にくれそうなほど時は過ぎた。それでもあの頃の記憶は確かに残っている。そして、幼い頃に築き上げた関係性は、今も揺らぐことなくしっかりと存在している。
「これからまたよろしくね」
「うん! りんごジュース作りなら僕に任せてよ!」
「りんごジュースて……」
「嫌いかい?」
「ううん、好き」
ちなみに。
後に聞いた噂によると、ウィドネスは独身のまま三十歳になった日に亡くなったそうだ。
彼は生涯『自分に相応しい美しい女性』を追い求め続けていたらしい。しかし彼の理想は高過ぎて。彼が相応しいと判断する女性はこの世には存在しないような存在で。彼はついに、その幻想を手に入れることはできず、望みは叶わないままこの世から去ることとなってしまったようだ。
もっとも、彼のことなんて今の私には何一つ関係ないのだけれど。
◆終わり◆
「あぁ。二度と俺の前に現れるな」
「はい、そうします。では、これにて失礼します」
私たちの関係は終わった。
その直後、実家へ帰って数日が経った頃だろうか。以前隣に住んでいてよく遊んでくれていた異性の幼馴染みが、私が暮らす街へ再び引っ越してきた。一度は親の仕事の都合でこの街から出ていったのだが、その仕事も落ち着き、ここへ帰ってくることができたようだ。
私は喜んだ。
別れる時は辛かった、だからこそ、また会えたことがこんなにも嬉しい。
彼もまた、私との再会を喜んでくれていた。
そして私と彼は結婚することになった。
確かにあの頃から時間は経っている。子どもだった私たちが大人になるくらい。途方にくれそうなほど時は過ぎた。それでもあの頃の記憶は確かに残っている。そして、幼い頃に築き上げた関係性は、今も揺らぐことなくしっかりと存在している。
「これからまたよろしくね」
「うん! りんごジュース作りなら僕に任せてよ!」
「りんごジュースて……」
「嫌いかい?」
「ううん、好き」
ちなみに。
後に聞いた噂によると、ウィドネスは独身のまま三十歳になった日に亡くなったそうだ。
彼は生涯『自分に相応しい美しい女性』を追い求め続けていたらしい。しかし彼の理想は高過ぎて。彼が相応しいと判断する女性はこの世には存在しないような存在で。彼はついに、その幻想を手に入れることはできず、望みは叶わないままこの世から去ることとなってしまったようだ。
もっとも、彼のことなんて今の私には何一つ関係ないのだけれど。
◆終わり◆
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