90 / 274
婚約破棄されましたが、その後わりとすぐに他の人から想いを告げられるという展開が待っていました。
しおりを挟む
私にはつい先ほどまでウィイーグルスという婚約者がいたのだが。
「ずっと昔、まだ十歳にも満たなかった頃、貴女に命を救われました。それからずっと貴女のことが頭から離れず今に至っています。どうか、どうか……僕と共に歩む道を選んではくださらないでしょうか? お願いします」
その彼に婚約破棄を告げられた、直後、偶然出会った一人の男性から想いを告げられた。
「え、と……すみません、まだ状況が理解できていません」
「この後お話だけでもどうでしょうか」
「それなら大丈夫です、喫茶店にでも入りましょうか」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「はい。……では」
こうして巡り会った彼は領主の息子であった。
その人の熱い想いに押され私は彼との道を選ぶことにした。
――そして数年。
「おはよう!」
「あら、もう起きていたのね」
「今日はちょっと……日頃のお礼に、と思って、勝手だけど紅茶を淹れてみたんだ」
「そうなの!?」
「驚かせてごめん。あと、迷惑だったら……それも、ごめん」
「いえ、そうじゃないの。嫌だとか迷惑だとかそういうわけじゃないのよ。ただ驚いただけで」
私は今も彼と幸せに暮らしている。
「じゃあ持ってきてもいい?」
「ええ、もちろん」
領主の息子である彼とは夫婦になった今も仲良し。
絆は永遠のもの。
自信を持ってそう言えるほど。
「お待たせ」
「ありがとう」
「日頃あまり淹れてないから……上手くなかったら、ごめん」
「気にしないで。あ、でも、何だかとっても良い香りね」
「口に合うといいな」
「飲んでみるわね」
ちなみにウィイーグルスは、もうこの世にはいない。
彼はあの後一人の女性にそそのかされ始めた事業で大失敗、かなり大きな額の借金だけが残る形となったそう。
で、借金返済に追われた挙句、最終的には自ら死を選ぶこととなってしまったのだとか。
私との婚約を破棄する時、彼は「お前といるから俺は社会的に成功できないんだ」などと失礼なことを言ってきていた。
しかし彼は私と離れても成功できなかった。
ということはつまり、彼が言っていたことは間違いだったということになる。
彼の人生が上手くいかなかったのは私のせいではなかったのだ。
結局彼は色々上手くいかない状況の原因を私に押し付けていただけだったということである。
◆終わり◆
「ずっと昔、まだ十歳にも満たなかった頃、貴女に命を救われました。それからずっと貴女のことが頭から離れず今に至っています。どうか、どうか……僕と共に歩む道を選んではくださらないでしょうか? お願いします」
その彼に婚約破棄を告げられた、直後、偶然出会った一人の男性から想いを告げられた。
「え、と……すみません、まだ状況が理解できていません」
「この後お話だけでもどうでしょうか」
「それなら大丈夫です、喫茶店にでも入りましょうか」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「はい。……では」
こうして巡り会った彼は領主の息子であった。
その人の熱い想いに押され私は彼との道を選ぶことにした。
――そして数年。
「おはよう!」
「あら、もう起きていたのね」
「今日はちょっと……日頃のお礼に、と思って、勝手だけど紅茶を淹れてみたんだ」
「そうなの!?」
「驚かせてごめん。あと、迷惑だったら……それも、ごめん」
「いえ、そうじゃないの。嫌だとか迷惑だとかそういうわけじゃないのよ。ただ驚いただけで」
私は今も彼と幸せに暮らしている。
「じゃあ持ってきてもいい?」
「ええ、もちろん」
領主の息子である彼とは夫婦になった今も仲良し。
絆は永遠のもの。
自信を持ってそう言えるほど。
「お待たせ」
「ありがとう」
「日頃あまり淹れてないから……上手くなかったら、ごめん」
「気にしないで。あ、でも、何だかとっても良い香りね」
「口に合うといいな」
「飲んでみるわね」
ちなみにウィイーグルスは、もうこの世にはいない。
彼はあの後一人の女性にそそのかされ始めた事業で大失敗、かなり大きな額の借金だけが残る形となったそう。
で、借金返済に追われた挙句、最終的には自ら死を選ぶこととなってしまったのだとか。
私との婚約を破棄する時、彼は「お前といるから俺は社会的に成功できないんだ」などと失礼なことを言ってきていた。
しかし彼は私と離れても成功できなかった。
ということはつまり、彼が言っていたことは間違いだったということになる。
彼の人生が上手くいかなかったのは私のせいではなかったのだ。
結局彼は色々上手くいかない状況の原因を私に押し付けていただけだったということである。
◆終わり◆
1
あなたにおすすめの小説
婚約破棄? 国外追放?…ええ、全部知ってました。地球の記憶で。でも、元婚約者(あなた)との恋の結末だけは、私の知らない物語でした。
aozora
恋愛
クライフォルト公爵家の令嬢エリアーナは、なぜか「地球」と呼ばれる星の記憶を持っていた。そこでは「婚約破棄モノ」の物語が流行しており、自らの婚約者である第一王子アリステアに大勢の前で婚約破棄を告げられた時も、エリアーナは「ああ、これか」と奇妙な冷静さで受け止めていた。しかし、彼女に下された罰は予想を遥かに超え、この世界での記憶、そして心の支えであった「地球」の恋人の思い出までも根こそぎ奪う「忘却の罰」だった……
【完結】時戻り令嬢は復讐する
やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。
しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。
自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。
夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか?
迷いながらもユートリーは動き出す。
サスペンス要素ありの作品です。
設定は緩いです。
6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。
【完結】あなたが妹を選んだのです…後悔しても遅いですよ?
なか
恋愛
「ローザ!!お前との結婚は取り消しさせてもらう!!」
結婚式の前日に彼は大きな声でそう言った
「なぜでしょうか?ライアン様」
尋ねる私に彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべ
私の妹マリアの名前を呼んだ
「ごめんなさいお姉様~」
「俺は真実の愛を見つけたのだ!」
真実の愛?
妹の大きな胸を見ながら言うあなたに説得力の欠片も
理性も感じられません
怒りで拳を握る
明日に控える結婚式がキャンセルとなればどれだけの方々に迷惑がかかるか
けど息を吐いて冷静さを取り戻す
落ち着いて
これでいい……ようやく終わるのだ
「本当によろしいのですね?」
私の問いかけに彼は頷く
では離縁いたしまししょう
後悔しても遅いですよ?
これは全てあなたが選んだ選択なのですから
学園は悪役令嬢に乗っ取られた!
こもろう
恋愛
王立魔法学園。その学園祭の初日の開会式で、事件は起こった。
第一王子アレクシスとその側近たち、そして彼らにエスコートされた男爵令嬢が壇上に立ち、高々とアレクシス王子と侯爵令嬢ユーフェミアの婚約を破棄すると告げたのだ。ユーフェミアを断罪しはじめる彼ら。しかしユーフェミアの方が上手だった?
悪役にされた令嬢が、王子たちにひたすらざまあ返しをするイベントが、今始まる。
登場人物に真っ当な人間はなし。ご都合主義展開。
離婚します!~王妃の地位を捨てて、苦しむ人達を助けてたら……?!~
琴葉悠
恋愛
エイリーンは聖女にしてローグ王国王妃。
だったが、夫であるボーフォートが自分がいない間に女性といちゃついている事実に耐えきれず、また異世界からきた若い女ともいちゃついていると言うことを聞き、離婚を宣言、紙を書いて一人荒廃しているという国「真祖の国」へと向かう。
実際荒廃している「真祖の国」を目の当たりにして決意をする。
婚約破棄をしたら、推進している事業が破綻しませんか?
マルローネ
恋愛
フォルナ・アッバース侯爵令嬢は、リガイン・ブローフェルト公爵と婚約していた。
しかし、突然、リガインはフォルナに婚約破棄を言い渡す。別の女性が好きになったからという理由で。
フォルナは悲しんだが、幼馴染の第二王子と婚約することが出来た。
ところで……リガインは知らなかったのだ。自分達の領地で進めていた事業の大半に、アッバース侯爵家が絡んでいたことに。全てを知った時にはもう遅かった。
婚約者と王の座を捨てて、真実の愛を選んだ僕の結果
もふっとしたクリームパン
恋愛
タイトル通り、婚約者と王位を捨てた元第一王子様が過去と今を語る話です。ざまぁされる側のお話なので、明るい話ではありません。*書きたいとこだけ書いた小説なので、世界観などの設定はふんわりしてます。*文章の追加や修正を適時行います。*カクヨム様にも投稿しています。*本編十四話(幕間四話)+登場人物紹介+オマケ(四話:ざまぁする側の話)、で完結。
(完結)自分勝手すぎる彼から婚約破棄をされました
しまうま弁当
恋愛
舞踏会に出席していたティルスタール侯爵家の令嬢メリッサは突然婚約者である王太子のブリュードから婚約破棄を突きつけられたのでした。
ただメリッサは婚約破棄されるような理由に心当たりがなかったので、ブリュードにその理由を尋ねるのでした。するととんでもない答えが返ってきたのです。
その理由とはブリュードがメリッサに対して嫌がらせをした時にメリッサが大声で泣きわめかなかったからでした。
ブリュードは女子をイジメたり泣かしたりして大喜びするようなクズ男だったのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる