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後編
しおりを挟むエルリエは火炎魔法を使った。
それも最大威力のものを。
彼女がその力を他者に向けるのは生涯でこの一度だけだったと後に語られるほど――これは珍しいことだったのだ。
そしてオーズは家もろとも滅ぶこととなった。
彼女の炎は家を包む。
何日も燃え盛った。
それは彼女の心の奥にある一種の痛みを映し出しているかのようでもあった。
こうしてオーズ一家は逝った。
オーズとエルリエの婚約は、オーズの死をもって、自動的に破棄ということになった。
エルリエは罰を受けることも厭わないと言った。
しかし彼女に罰がくだることはなかった。
これまでオーズが繰り返してきた暴言のことを知りエルリエに同情した国王の命により、多少の罰金だけで許されたのであった。
それから、エルリエは、両親と共に一つの屋根の下で幸福に生きた。
◆
彼女は結婚はしなかった。しかし街で孤児院を開いた。そのため、彼女は、年を重ねても孤独ではない様子であった。赤い髪の持ち主である彼女は、子どもたちに囲まれ、いつも穏やかに微笑んでいた。
特に、晩年のエルリエは、子どもらとハーブを摘むのが楽しみとなっていたと言われており――珍しい形ではあるものの、彼女は彼女なりの幸福な人生を謳歌したようであった。
◆終わり◆
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