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後編
しおりを挟むどうしてあんなに嬉しそうな顔を……いや、まぁ、その答えは簡単なものか。私と離れられたから、愛していない婚約者を切り捨てることに成功したから、きっとそんなところだろう。婚約破棄を告げられたこと、それは、彼にとってはそれほどに嬉しいことだったのだろう……ああとても切ない。そして、悲しい。でもそれが真実なのだろう。走り去ってゆく時の彼の表情を見ればそう判断できた。あれは間違いなく、解放の歓喜といった表情だ。
◆
あれから数日、ミートルーボが両親と共に住んでいる家に宇宙から降ってきた謎物体が落ちたそうで、家は爆発して消滅――そしてミートルーボも両親もろとも吹き飛んで死亡した。
彼を含む一家は亡骸も遺さずあの世へ逝くこととなってしまったようである。
数日前まで婚約者であった人が死亡したとなれば普通は悲しかっただろう。
けれども私は何も思わなかった、何も感じなかった。
ああそうか――ある意味悲劇とも言えるその話を聞いても、ただそう思うだけで。
その時の私の心というのは、とにかく冷めていた。
◆
あれから数年、私は、予想を遥かに超えて植物学者として有名になった。
そしてその活動の中で知り合った男性と結婚。
仕事で成功。
そして女らしい幸せも手に入れることができた。
二つの幸福を抱え、前を向いて、私はこれからも生きてゆく。
◆終わり◆
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