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3話
しおりを挟む残念さもあるけれど、でも、どのみちいつかは壊れる関係だったのかもしれない。あのままウィロウと結婚して共に生きることになっていたとしても、きっとたびたび母親が介入してきてややこしいことになっていただろう。ならば本格的に家族になる前に離れる方が良かったかもしれない。
人間意外と、これはある意味では良いことだったのかもしれない、とも段々思えてくるものだ。
辛いことも、悲しいことも、徐々に呑み込んで未来へ。
それが人の心の自然な働きなのかもしれない。
◆
あれから数年が経ち、私は今、冒険者を引退して若き国王と結ばれている。
ウィロウとの婚約が破棄となった後、もやもやを晴らすかのように、私は必死に働いた。もちろん冒険者としてだ。冒険者、というのは、実質魔物やら何やらと戦う仕事。ある程度の年齢になると女性は一気に減る。そのため、同年代の女性が減ってしまって少し寂しさはあったのだけれど、それでもいい、と思いとにかく懸命に働いた。
そうして仕事に打ち込んでいると思わぬ成果が出た。
まさかの、魔物討伐最多賞を受賞。
国王から直接表彰してもらえることとなった。
――それが若き国王との出会いだ。
それから色々あって、今、国王の妻となっている。
驚くだろうか? いや、そうだろうと思う。国王から声をかけられたりしたら、普通は驚くものだろう? 実際私もかなり驚いた。最初に国王から接触があった時には、意味が分からなくて一晩眠れなくなったこともあったくらいだった。
けれども今この場所で生きていることを後悔はしていない。
国王は一緒にいてほっこりできる人だし、若いのに女遊びもほぼしない誠実な人。だから私にぴったりだと思う。いや、もちろん、自分が国王に相応しい女だと思っているわけではないけれど。
ちなみにウィロウ一家はというとあの後自然発生した魔物の群れに襲われて痛い目に遭ってしまったそうだ。
ウィロウと彼の父親は魔物に襲われ何もできず抵抗できないまま落命してしまったそう。
そして、ウィロウの母親は、負傷して近所の人に助けを求めるも無視され逃げられてしまって――泣きながら少しずつ魔物に切り刻まれてじわじわと死へ向かうこととなったそうだ。
ま、あの性格だから、自業自得という気もするが。
◆終わり◆
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