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2話
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夜間にもかかわらず、店内にはまだ数人の客がいた。会社帰りの男性がメインだ。そんな中で男女の二人組というのは、やや目立つ。
「この席で良い?」
瑞穂は言いながら、一番端の椅子に鞄を置く。
店の隅の二人席。そこが、宰次と瑞穂の定位置なのだ。
「そこの席が好きですな」
「好き。落ち着くの」
椅子にもたれかかるようにして立つ瑞穂。それを目にし苦笑する宰次。二人は、第三者が見ても分かるほど、幸せな空気を漂わせている。
「では僕は注文を。瑞穂はそこに座っていて構いませんよ」
すると瑞穂は、宰次の言葉に素直に従い、椅子に座る。
「分かった。ここで待っているわ」
「注文はいつも通りで?」
「えぇ。ミニ中華そばとドーナツ一つ」
哀愁漂うお一人様の男たちの視線が、瑞穂ら二人に集中していた。
しかし当の本人たちはまったく気づいていない。瑞穂は宰次の姿を眺めているし、宰次はドーナツ選びに必死だからである。
少しすると、お盆を持った宰次が瑞穂の元へ帰ってきた。お盆には、ミニ中華そばのお椀と箸、そしてカラフルなドーナツ五つが乗っている。
ドーナツを手に入れすっかりご機嫌な宰次は、鼻歌を歌いながら、テーブルにお盆を置く。好物を目の前にして、彼は少々浮かれているようだ。
待っていた瑞穂は嬉しそうに、「中華そば美味しそう!」と笑う。彼女の狙いは、あくまで「中華そば」なのである。
「まったく、瑞穂は。女性なのに食い意地が張っていますな」
宰次は呆れたように溜め息をつく。
それから、セルフサービスのコーナーへ、お手拭きと飲み水を取りに向かう。いつも通っているだけあり、慣れた様子だ。
セルフサービスコーナーで作業する宰次の背中に向けて、瑞穂は冗談混じりの声色で言い放つ。
「宰次さん、酷いっ」
夜のドーナツ屋内とは思えぬ、実に微笑ましい光景である。
宰次がセルフサービスコーナーから帰ってくるのを待つ間に、瑞穂は鞄から携帯電話を取り出した。折り畳み式の白い携帯電話には、薄い桃色をしたクマのストラップがぶら下がっていて女性らしい。
「この席で良い?」
瑞穂は言いながら、一番端の椅子に鞄を置く。
店の隅の二人席。そこが、宰次と瑞穂の定位置なのだ。
「そこの席が好きですな」
「好き。落ち着くの」
椅子にもたれかかるようにして立つ瑞穂。それを目にし苦笑する宰次。二人は、第三者が見ても分かるほど、幸せな空気を漂わせている。
「では僕は注文を。瑞穂はそこに座っていて構いませんよ」
すると瑞穂は、宰次の言葉に素直に従い、椅子に座る。
「分かった。ここで待っているわ」
「注文はいつも通りで?」
「えぇ。ミニ中華そばとドーナツ一つ」
哀愁漂うお一人様の男たちの視線が、瑞穂ら二人に集中していた。
しかし当の本人たちはまったく気づいていない。瑞穂は宰次の姿を眺めているし、宰次はドーナツ選びに必死だからである。
少しすると、お盆を持った宰次が瑞穂の元へ帰ってきた。お盆には、ミニ中華そばのお椀と箸、そしてカラフルなドーナツ五つが乗っている。
ドーナツを手に入れすっかりご機嫌な宰次は、鼻歌を歌いながら、テーブルにお盆を置く。好物を目の前にして、彼は少々浮かれているようだ。
待っていた瑞穂は嬉しそうに、「中華そば美味しそう!」と笑う。彼女の狙いは、あくまで「中華そば」なのである。
「まったく、瑞穂は。女性なのに食い意地が張っていますな」
宰次は呆れたように溜め息をつく。
それから、セルフサービスのコーナーへ、お手拭きと飲み水を取りに向かう。いつも通っているだけあり、慣れた様子だ。
セルフサービスコーナーで作業する宰次の背中に向けて、瑞穂は冗談混じりの声色で言い放つ。
「宰次さん、酷いっ」
夜のドーナツ屋内とは思えぬ、実に微笑ましい光景である。
宰次がセルフサービスコーナーから帰ってくるのを待つ間に、瑞穂は鞄から携帯電話を取り出した。折り畳み式の白い携帯電話には、薄い桃色をしたクマのストラップがぶら下がっていて女性らしい。
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